事件ファイル(1)前編
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「で?海はともかくなんでアンタらまでいんの?」
「人が待っててやったっつうのになんだその言い草は!」
「待っててくれなんて言ってないけど」
手術が無事終わり、個室へと運ばれた銀時はすぐに目が覚めた。
足の方は骨が見えている状態だった。薬を使われて眠らされていたため銀時は怪我をした時のことは覚えていないとのこと。病院に運ばれたのも不思議がっていて、今の状況を上手く理解出来ていない。
「旦那、誰に頼まれてあの廃病院へ?」
「あ?誰って……知らねぇ女」
「女?男じゃなくてですかい?」
「ああ。なんか荷物をそこに届けてくれって言われたんだよ」
電話を受けたあと、銀時は依頼主と会った。若い女に箱を渡されて伊敷山病院に運んでくれと頼まれる。その日のうちに銀時は荷物を廃病院へと持っていったのだが、そこからの記憶がハッキリしない。
「箱持ってあそこまで行ったところまでは覚えてんだけどよ」
『銀時、廃病院に行った時間は覚えてるか?』
「時間?時間……夕方くらいだったな。夕方って言ってもすぐに暗くなっちまったけど」
『仕掛けが作動する時間帯に伊敷山に入ってたのか』
「仕掛け?何の話だよ」
『あの廃病院は色々とあるんだよ』
「色々ってなんだよ」
「海さん、旦那のこの怪我はその仕掛けによるものだと?」
『さあ……銀時の記憶が曖昧すぎてよく分からない。でも、仕掛けによるものだったら覚えてるはずだろ』
屋上まで銀時は自力で上がっているのだ。その道中で怪我をしたのなら覚えているはず。でもその記憶がないということは仕掛けによるものではないということだ。
屋上で誰かと会い荷物を渡した。その後、その相手と交戦して怪我をしたのか、それとも薬を盛られて意識を失っている間に逃げられないようにと足をやられたのか。
「あのさあ、もうちょっと分かるように説明してくんない?俺はただ仕事してただけよ?それがなんでこんな大事になってるわけ?」
『こっちも全部を把握してるわけじゃないから説明のしようがない。今言えんのはお前はまためんどくさい事に巻き込まれてるってことだけ』
「なにそれ。端折られすぎて意味わかんないんだけど」
『あの病院は四年前、攘夷浪士の根城だったんだ。今となっては忘れ去られた廃病院となっているが』
「そんなところに旦那がいたんでさぁ」
「ふーん。それで?俺とどういう関係が?」
『あわよくばお前を助けに来たやつが死んでくれたら、と相手は思ったんだろうな』
「……は?」
『さっき仕掛けがうんたらって言っただろ』
「ああ……なんか色々あるって……」
『銀時が何処にいるか分からないから地下以外の全室確認してまわった。その途中、階段と、とある一室で引っ掛かった』
海の言葉に銀時は首を傾げるが、土方と総悟は青ざめた顔で固まる。
「海さん、怪我は?」
『無い』
二人はホッと胸をなで下ろす。そんな雰囲気に銀時も察したらしく、眉間に皺を寄せて海をじっと見る。
「ほんとにねぇんだな?」
『ない。してないから』
「海」
『……なんだよ』
「正直に言え」
銀時の目が鋭くなる。ゾクッとした寒気を感じ、渋々右手を出した。
『攘夷浪士が溜まり場にしてた部屋の扉を開けたら少し……掛かった』
「怪我してんのかてめぇ!」
騒ぐ土方を無視して銀時は海の右手を掴み、ボロボロになっていた袖を捲られた。
「お前……これ……」
『救急車を呼ぶのに頭いっぱいで忘れてたんだよ』
右手首の皮膚はあの液体のせいで火傷のように爛れている。痛みはあったが、それ以上に銀時を早く病院に運ばなければという気持ちが上回って忘れてしまっていた。
「ちょっと待ってろ」
『いや、別にこれは……!』
「黙ってろバカ」
枕元にあったナースコールを銀時は躊躇いなく押す。数分後に看護師が駆けつけてきて、話を聞いたあと腕を引っ張られた。
「駄目じゃないですか!ちゃんと言ってくださらないと!」
『あ、いや、俺は別に大丈夫なので……』
「ちゃんと処置しないと跡が残りますよ!」
『跡くらいそんな……』
助けを求めるように土方を見たが、銀時と同じように怒っているようで助けにはならなかった。
「海さん、ちゃんと手当て受けてきてください」
総悟に病室から追い出され無情にも扉を閉められた。
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