事件ファイル(1)前編
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「てめぇ、見廻りに行ったんじゃなかったのか」
『見廻りの途中で声をかけられたんだよ』
「今どういう状況か分かってんだろうが。こいつらに構ってる暇はウチにはねぇ」
『それも分かってる。だが、今回は見逃せない事態にもなってる』
「あ??」
銀時が処置を受けている間に土方は病院へと来た。電話で帰りが遅くなると連絡したせいでこれだ。
でも来てくれて良かったかもしれない。
『四年前、俺たちが関わった病院のことを覚えてるか?』
「病院?」
『ああ、伊敷山病院。攘夷浪士たちの根城になっていた病院』
「それがどうした。あそこはもう使われてないだろ」
『そう思ってた。さっき銀時をそこで見つけた。屋上で怪我した状態で寝てたんだよ』
「なんであのクソ野郎はいつもいつもッ!」
キレそうになる土方を宥めて海は続ける。
『あそこが厄介な場所だったのは覚えてるよな?』
「確か院長が元カラクリ技師で、院内に様々な仕掛けが施されてたってやつだろ」
『それ、新しく作り直されてたって言ったら……どうする?』
「は……?」
土方に電話をかけたあと、海は山崎にも電話掛けていた。四年前の調査資料を倉庫から引っ張り出してきてもらうために。
埃まみれになっていたファイルを開き、病院内に張り巡らされていた仕掛けの情報を一つ一つ確認した結果、今日海が掛かったものは全て新しく設置されたものだと判明した。
誰かが伊敷山病院に入り込んでいるのは確かだ。
「あの病院に攘夷浪士が入り込んでるって言いたいのか」
『まだ断定は出来ない。今日は銀時を探しに行っただけだからな。一応、一階から屋上までは確認できたが人の気配はしなかった。あの時たまたま居なかったというのもある』
「あそこは確か院長の息子が所有してるはずだったよな」
『でもその息子は行方不明』
山崎に息子の所在を調べるようにと指示したが見つかる可能性は低いだろう。
『詳しいことは銀時の処置が終わってからだ』
銀時が自ら廃病院に訪れるとは思えない。心霊系を苦手としている彼ならば、怖がって中に入ろうとしないから。となれば誰かに呼び出されたに決まっている。
その誰かさえ分かれば、あの廃病院に新たに作られた仕掛けの意味が分かるはずだ。
「懲りねぇ野郎だな。毎回厄介事に巻き込まれんじゃねぇか」
『吸引体質なんだろ。万事屋を営んでる時点で厄介事からは逃げられないだろうし』
「吸引してんのはお前の方だろ」
『は?』
「これなら見廻りに行かせなきゃ良かったな」
手術中のランプを見ながら土方は頭を抱える。
『仕方ないだろ。むしろ良かったと思うべきだ。伊敷山病院がまた攘夷浪士たちに使われているのであれば、そいつらを捕まえることも出来る。この間の残党が紛れ込んでいれば一石二鳥だ』
探し回る手間が省けると言った海に土方は重たいため息。
「俺は言ったはずだよな。無茶をするなと」
『してない』
「してるだろうが。一人で病院に行ってる時点で!」
『銀時を探しに行くだけでなんで隊士を呼ぶんだよ。あの廃病院に居るってなった時は迷ったが、ちゃんと呼ぶつもりではいた』
二時間経過しても海が戻ってこなかった場合だが。
「つべこべ言ってんじゃねぇ!次から単独での見廻りは禁止だ!」
『うるせぇな。グチグチ文句言ってんじゃねぇよ』
院内で煙草が吸えないせいか、土方はいつにも増して小言が増えている。やはり禁煙させるべきだったか。
「海さん……銀さんは……大丈夫ですかね」
『心配することはねぇよ。きっと大丈夫だ』
俯いている新八と神楽の頭を撫でる。
子供らの気持ちを察した土方は歯噛みして押し黙った。
それから手術中のランプが消えるまでの間、海と土方は黙って待ち続けた。
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