事件ファイル(1)前編
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二階へと上がると雰囲気がガラリと変わる。空気もひんやりとし鳥肌が立つ。
一階は受付と各診察部屋、二階から上は入院用の部屋が並んでいる。
その一室が攘夷浪士たちの溜まり場となっていたのだ。その場所を守るように仕掛けが施されている。
ここは一般の入院患者もいるため、大きな音が出るような仕掛けは無い。その代わりに静かに侵入者を殺せるように手間が掛けられている。
病院ともなれば色んな薬剤が保管されているので、それを混合した毒物などが使われていた。
『まったく。あいつは何処にいるんだ』
二階も一階と同様人の気配がしない。これでは銀時が居るのかが怪しくなってくる。
一つ一つ病室を確認していくも銀時はいなかった。最後に攘夷浪士を匿っていた部屋の扉を開ける。
『は……!』
扉を開けた瞬間、目の前を何かが落ちていく。それがビーカーだと気づいて瞬時に身を引いた。
『冗談じゃねぇよ……』
床に落ちたビーカーには液体が入っており、それはじゅくじゅくと周りを溶かし始める。
隊服の袖に少し掛かってしまったのか布が溶けているのが見えて冷や汗が垂れた。
『ここだけこんな仕掛けがあるってことは、当時のことを知っているやつへの牽制か』
この部屋は攘夷浪士たちが使っていた場所。何か問題があれば、ここに人が来ると踏んでこの装置を作ったのだろう。そうすれば先程の液体で撃退出来ると思って。
廊下から部屋の中を覗き込んだが、やはり銀時はいない。
『あとは三階と四階、屋上もあったか』
新しい仕掛けが掛けられているのであれば四年前の記憶は使い物にならない。
銀時を見つけるまでにあとどれだけの仕掛けに遭遇するのか。そんなことを考えたら気が滅入るだけだ。
『時間もあまりないから早く済まさねぇと』
二時間経ったら新八は土方に連絡を入れるだろう。そうなればもっと厄介なことになる。攘夷浪士の残党だけでも忙しいのに銀時の捜索までしていたなんてバレたら怒られるの騒ぎでは無い。
『目の敵にしてるからな……ここは土方にバレないように終わらせねぇと』
土方を呼ぶことなく銀時を見つける。そしてこの病院のことはあとで近藤に相談しておこう。たまたま見廻りで立ち寄ったら仕掛けが新しく作りていたとでも言っておけば問題ないだろう。しつこく追求してきたときは正直に話せばいい。
二階を全て見回り、三階へと上がる。今度は普通に階段を上がれてホッとした。病室を確認しても銀時はおらず、四階の方も異常はなかった。
残るは屋上のみ。
錆び付いたドアノブをガチャガチャ回して外へと出る。冷たい風が吹く中、そこに銀時はいた。
ぐったりと床に倒れ込んでいる姿を見つけ、恐る恐る近づく。銀時の周りには何も仕掛けられていない。
『銀時』
肩を揺すって起こそうにもピクリともしない。手首を掴んで脈拍を測ると正常。
『眠ってるだけか?』
何度も声をかけてみても反応は無い。横向きに寝ていたのを仰向けにしてみると、銀時の着物に所々血が付着しているのに気づいた。
『怪我してるのか』
よく見てみれば、頬には殴られた痕もある。依頼人に騙されて暴行されたのか、それとも荷運びの途中で襲われたのか。どちらにせよこの場で寝かせておくのは危険だ。
『一先ずここを出るか』
銀時の背中と膝裏に手を差し入れて抱き上げる。その時、膝裏に回した右腕がじっとりと濡れた。
『これは……』
右手が真っ赤に染まっている。その原因は銀時の左足にあるらしい。着物もその部分だけ真っ赤になっていた。
『はあ……よくこんな怪我で寝てられんなこいつは』
急いで病院に連れていかねば。銀時を横抱きにして海は来た道を急ぎ足で戻る。廃病院の前で新八と神楽が待っているのが見え、海は二人に声をかけた。
『新八!今すぐ救急車を呼んでくれ!』
「海さん!!銀さんは見つかりましたか!?」
『見つかったが怪我をしてる!出血が酷いから病院に連れていくぞ』
「は、はい!」
新八に救急車を呼んでもらい、銀時を近くの病院へと運んでもらう。その間に海は土方へと電話をかけた。
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