事件ファイル(1)前編
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中は当然の事ながら真っ暗。微かに光る非常灯だけが頼りになる。それも壊れかかっていて心もとない明かりとなっているけれど。
暗闇に目が慣れてきたのと、窓から入り込む月の光である程度の物は確認できそうだ。それでも細部までは見ることは出来ないから注意して進まなくては。
『入口付近のものは全部撤去したはず。山崎が泣きながら引っかかったから』
山崎の観察眼は大したものだ。気になればすぐに見に行く。そして仕掛けに引っかかってくれた。海や土方は警戒心が強くて勘で仕掛けを見逃してしまう。自分らは引っ掛からずに済んでいたが、他の隊士たちは仕掛けに掛かりまくっていた。
入口にあったのは侵入者を驚かして退散させるもの。不気味な警報が鳴るものや、床に物が派手に落ちるなどの子供騙しのものが多かった。
問題は地下と階上だ。一階は全て似たような物だから気にしなくていいが、地下には武器庫、上では攘夷浪士の集会所があった。そのため仕掛けの道具も殺傷力が高い。
『総悟が引っ掛かったやつはやばかったんだよな』
地下の武器庫を総悟と見に行ったときは流石に死ぬかと思った。
足元に張られていた糸を総悟が足で引っ掛けた。途端、目の前に降りてきたのは散弾銃。単発の銃であれば避けられる。でも海たちの前に出てきたのは散弾。しかも改造銃だったので連射式。慌てて部屋を飛び出たから良かったものの、あのまま立ち止まっていたら確実に海と総悟は死んでいた。
地下の仕掛けは銃とメスの雨しか確認していない。地下にあった武器は全て持ち運ばれてしまったあとだったので、それ以上の調査は無用だと近藤が判断したから。
『上から行くか下から行くかだな』
一階を隅々まで探索したが銀時の姿はなかった。
階段へと向かった海の視界に映った落書き。下へと行く階段の壁に"危険!"と赤文字で書かれている。
『足跡はあるにはあるが……最近のものはないな』
非常灯での視認レベルだから確実とまではいかない。でも、一段目を触った感じではホコリの積み方が同じだ。
どうやら肝試しの若者たちも地下には行っていないらしい。壁に書かれた文字を見て尻込みをしたのか、それとも何か嫌な空気を感じたのか。
『地下に行く裏ルートはなかったはず。それなら上か』
地下に行きたくなかったからこれはこれで安心だ。散弾の件がトラウマになっているのか、四年前も地下に行くのを渋っていた。近藤が必要ないと言ってくれなかったらどうなってたことか。
上階へ行くべく階段を上がる。数段上がったところで海は足を止めた。
『糸……か』
階段を上って四段目。足に何かが引っ掛かっているのを感じて立ち止まった。このまま段に足を置いたら糸を踏んでいたところだ。
『妙だな。もしかして新しく作られたものか?』
病院の階段はここと非常階段の二箇所。どちらも隊士たちが使っていたので、仕掛けは全て撤去されているはず。
それなのに糸が張られているなんておかしい。彼らが意図して四段目だけを飛ばすとも考えられない。
『早く銀時を見つけて出た方が良さそうだな』
この病院はまだ使われている。銀時がここに連れてこられているというのもそうだが、また仕掛けが張られているというのが何よりも証拠だ。
ここはまた攘夷浪士らの根城となっているかもしれない。
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