事件ファイル(1)前編
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『ここであってるのか?』
「定春、ここに銀ちゃんいるアルか?」
神楽の問いに定春は元気に吠える。
新八と話をしていた途中で神楽は定春に乗って帰ってきた。銀時の居場所が分かったからついてきて欲しい言われ、海たちは定春のあとを追った。
たどり着いたのは町外れの廃病院。ここは随分と前に潰れた場所。
『ここは……』
「知ってるんですか?」
『ああ。四年前にここの院長を捕縛した』
「え……」
四年前、この病院を経営していた院長を捕まえた。
この病院は昼間は一般の患者を受け入れていたのだが、夜間は攘夷浪士などの面倒を診ていた。怪我人であれば仕方ないとはいえ、院長は悪意を持って彼らを治していたのだ。いつか倒幕を狙えるようにと。
病院内には攘夷浪士らの武器が保管されており、アジトと化していた。
そのため海たち真選組はこの病院を閉院させ、院長並びに攘夷浪士らに関わった数名の看護師と医師を捕まえた。
『その後、何度かここには立ち入ったんだが、攘夷浪士が使っている形跡が無いと判断されて放置された』
「そんないわく付きの場所だったんなんて……」
『この病院は解体予定だったんだが……問題があってな』
「問題ですか?」
『ああ。本来は捕まった院長の持ち物とされていたんだが、捕まる直前に息子に讓渡されていた。院長のものであれば差し押さえとして国が管理し、事件を未然に防ぐという名目で解体が出来たんだが……名義人が息子に変わったせいで簡単に手出しが出来なくなった』
事件現場としては変わらないから病院自体を押さえることはできていた。でも、名義人である息子が何度も頭を下げて病院の取り壊しをやめて欲しいと願い出たため、それ以上の手出しが出来なくなった。無理矢理やろうものなら補償対象になるんじゃないかと近藤が危惧したからだ。
『息子はその後行方知れず、病院もこの有様だ。あの時、解体しておけばよかったな』
人知れず林の中にぽつんとそびえ立つ廃病院。今となっては若い者たちの肝試しの場所となっているだろう。
あれだけ懇願していたのに彼はこの場を見捨てた。近藤が頭を悩ませたのは無駄に終わったということだ。
『それで?この中に銀時がいるかもしれないんだな?』
「ええ……でも、本当にここにいるのかな」
『行ってみないことにはわからないか』
「私見てくるアル」
『いや、新八と神楽はここで待ってろ』
「海さん一人で行くのは危険ですよ!」
「そうヨ!一人じゃ危ないネ」
『中は把握してる。調査資料を書いたのは俺だからな。あの病院の中は普通じゃない』
胸ポケットから携帯を取り出して時刻を見るともう十九時を過ぎている。その時刻に子供らを病院の中に連れていくのは危険だ。
「普通じゃないってどういうことですか?」
『病院の中には仕掛けが施されてる。ある一定の時刻を過ぎるとその仕掛けが作動し、表からの侵入が困難になる』
その仕掛けには随分と困らされた。子供のイタズラのようなものもあれば、命に関わる罠も設置されている。ある程度の物は処理したが、病院内全ての仕掛けを外したとは言いきれない。
もし本当に銀時が病院内に居るとしたら、全ての部屋を見回らなければならないのだ。
『二時間』
「え?」
『二時間経っても俺が戻らなかったら土方に連絡してくれ』
携帯を新八に渡して病院の方へと歩き出す。後ろから神楽がついてこようとしていたが、その足はすぐに止まった。
「海さん!!」
「海!!大丈夫アルか!?」
『こういうこと。だからお前らは敷地内には絶対に入るな』
突然、ピピピッという電子音が鳴ったかと思えば、海の足元が爆発した。咄嗟に飛び退いて爆発から逃れたが、砂埃で隊服が汚れてうんざりとため息をつく。
『今日綺麗にしたばっかりだってのに』
砂まみれになった上着を払って病院の扉へと手をかける。
ここからは四年前の記憶だよりだ。一歩間違えれば銀時を見つける前に死ぬ恐れもある。
『ガキ共が肝試しに来れてんだから大丈夫だとは思うが……』
彼らが生きて帰ってきていれば、の話だが。
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