掴めなかった手と救い上げた手
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『ふわあぁあぁぁ……』
「でけぇあくびしてんじゃねぇよ。眠いんだったら寝てこい」
『今寝たら……しょ……るい……が』
「ったく、仕方ねぇやつだな」
土方はため息をついて机に突っ伏して寝てしまった海を横抱きにした。
海はここ数日の間、寝ずに土方の仕事を手伝っている。その疲れが出たのか、寝ない寝ないと言いつつも少し気を抜いた瞬間に寝落ちしてしまった海に苦笑いを浮かべた。
海を自分の布団の上へと寝かせると土方は再度、書類に向き合う。海が手伝ってくれたのだ。今日までにはこの溜まっている書類を終わらせなくては。
でなければ明日も海を付き合わせてしまうことになる。
「減らねぇ……」
タバコを吸いながら書類と向き合うこと4時間。後ろでは海がすやすやと眠っている。海の方へと振り返り、おもむろにその頬へと手を伸ばす。
擽ったそうに身をよじる海。未だに起きる気配のない彼は日々の疲れを癒すように気持ちよさそうな顔で眠っていた。
「気持ちよさそうに寝やがって」
思わず笑みが浮かぶ。いつも無理をさせているのは土方も知っている。だから今くらいは……この時くらいは彼が安心して眠れるように。
『ん……』
土方が頬から手を離すと海から声が漏れた。
「ゆっくり休め」
『ぎ……ん、し……すけ……』
「……誰だ?」
海から目を離して、書類へと向き直った時に聞こえた声。それは誰かの名前を呼んでいるものだった。
海へと顔を向けると、目元に溜まる雫。それは海の目から流れて布団へ染み込んでいった。
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