動物園
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縁側で待つこと数分。障子の開く音が聞こえて晴太と共に後ろを振り返ると、月詠が恥ずかしそうにモジモジしながら姿を現した。
「すまぬ」
『そんな待ってないから謝ることはねぇよ。むしろ早くないか?』
「わざわざ来てもらったのに待たせるのは悪いだろう」
『別に構わないけど』
今日は話をしに来ただけだからそんなに急いでもいない。屯所の方の仕事もあらかた片付けてあるから時間の余裕もある。だから気にしなくていいと月詠に言ったのだが、彼女は安心するどころか益々顔を俯かせていく。
「……話をしたらすぐ帰るのか」
『何か他に用があるのか?』
「いや……用がある訳では無いが」
いつもの覇気は何処へやら。小さく呟く月詠は元気なさげに見える。また何か起きたのかと思ったが、晴太が間に入ったことで聞きそびれてしまった。
「そ、そういえばさ!月詠姐!動物園行きたいって言ってたよね!?」
「なっ!晴太!」
『今日はその約束果たすために来たんだけど……まさかなんも聞いてないのか?』
「何も聞かされておらん!ただ、お前が吉原に来るとしかわっちは……!」
『晴太……お前、勝手に決めて手紙出したのかよ』
「だ、だって月詠姐がいつも動物園に行きたいって言ってたから」
「わっちはそんなこと言っておらん!!」
「言ってたじゃんか!約束はしたけどいつになるんだろうって!だからおいら兄ちゃんに手紙出したんだい!」
違う、違わないの言い合いを眺めながら海は呆れた顔を浮かべる。
まさか晴太が月詠のために手紙を出していたとは。てっきり、約束を反故にするつもりかと月詠に言われているのかと思っていたから拍子抜けしてしまった。
月詠の雰囲気からして何かおかしいなとは思っていたのだが。
『(まぁ、約束は約束だからな)』
次はどこに行こうかと声をかけたのは自分だ。月詠が行く気がないというならまだしも、本人はどうやら行きたがっているようだから連れて行ってやらなければ。
目の前でわーわー騒いでいる二人を微笑ましく思いながら海は晴太の頭へと拳を振り上げた。
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