動物園
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「久しぶり!兄ちゃん!」
『久しぶりだな。あれから大丈夫だったか?』
「うん!なんとかやってるよ」
元気そうに笑う晴太に海もつられて笑みを浮かべる。
一月ほど前に吉原で得体の知れない薬物が流行っていた。その出処を調べるに連れて月詠の過去や彼女の師である男が出てきたりと忙しなかった。
地雷亜が仕掛けた罠のせいで一度は火の海と化した吉原だったが、万事屋と海、そしてたまたまそこに居合わせた服部の手によって事なきを得た。とはいえ、街が受けたダメージは酷く、そんな簡単に復興出来るようなものではなかったはずだ。
それが今では何も無かったかのように見える。家屋には所々に傷が残っているが、そこに住んでいる人達には曇りのない笑みがあった。
『そういえば、あの手紙は一体なんなんだ?』
街並みを眺めていた時に手紙のことを思い出して、海は晴太へと目を向ける。晴太は恥ずかしそうに頬を指先で掻きながら言いづらそうにモゴモゴと話し出した。
「その……兄ちゃん、月詠姐と動物園に行く約束してるだろ?」
『ああ、月詠が行きたいって言ったからな』
「それっていつになる?」
『……そういえば言うだけ言って日にちまでは決めてなかったな』
約束を交わしたことは覚えている。だが、いつ行くかまでの話は進めていない。吉原の復興で月詠が忙しくしていたというのもあるし、海自身も仕事に追われていて身動きが取れなかった。
手紙が来なければきっとこの約束は有耶無耶になっていたかもしれない。
「月詠姐が行きたがっててさ。だから兄ちゃんに手紙を出したんだ」
『そういうことか。手紙の半分くらいが読めなかったからなんて書いてあんのかわかんなくてな』
吉原に一度来て欲しいと書いてあるのは分かったが、それ以外のことは分からなかった。晴太に面と向かって字が下手くそすぎると言えば、晴太は恥ずかしそうに俯いた。
「うう……練習しても全然上手くならないんだよ」
『ちゃんと見本見て書いてるのか?』
「うん。でも良くならないんだ」
『今度見てやるよ。練習帳買ってきてやるから』
「ほんとっ!?」
『あれじゃ誰が見ても字だと判別できないからな』
現に山崎は晴太の字が読めなくて頭を捻っていた。なんとか海の名前が書いてあるのが分かったから持ってこれたものの、あれでは海の所に来る前に捨てられていたかもしれない。ぐにゃぐにゃの字は漢字や平仮名というより、ミミズが這った後に見えたから。
「おいら頑張って上手くなるよ!」
『そうしてくれると助かる』
張り切っている晴太の頭をわしゃっと撫で、海たちは日輪の店へと足を運んだ。
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