動物園
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吉原での事件が落ち着き、また人の活気が戻った頃に海の元へと一通の手紙が届いた。
『手紙?どこから』
「差出人は……上手く読めないですね。なんて書いてあるんだろう」
手紙を海の元に届けに来た山崎は差出人の名前のところをじっと見つめて首を傾げる。
『誰が出したのか分からないような物を受け取って持ってきたのか?』
「え?だって飛脚が持ってきたから大丈夫かと」
『仲介人がいるからと言って安全とは限らないだろ。どうするんだ?その手紙に仕掛けられてたら』
例えば毒物が付着していたら。知らない間に屯所に劇物を持ち込んでしまい、それが他の隊士に副長や局長の元へと運ばれたときどうするのだと問いかけると、山崎はガタガタと震えだす。
「ど、ど、どうしよ……俺……!」
『まあ冗談だが。そんな手間のかかる事をするくらいなら屯所に毒物投げ込んだ方が早い。誰かを仲介して足をつけられないようにするってのもあるが』
どちらにせよ真選組に仇なす者は必ず捕らえる。そう呟くと山崎はほっとした顔で胸をなでおろした。
「海くんがそうやって屯所を守ってくれるから俺たちはやっていけるよ」
『俺一人に重責を背負わせるつもりか?』
「そういう意味じゃないけど……確かにそうなっちゃうね……」
『やれる事まではやるけど。でも、俺一人の力じゃどうしようもない。騒がしい犬共を抑えられるゴリラが居ないとな』
「うん。これなんの話だったっけ?それと真選組を動物園みたいに言わないでよ。なんか悲しくなってくる」
さして変わりはないだろうと言いたかったが、何故か落ち込んでいる山崎にそこまで言うのも可哀想かと口を閉じた。
『それで?結局差出人は分からないのか?』
「うん。何か書いてあるんだけど読めなくて。海くんこれ読める?」
封筒の裏面にはぐにゃぐにゃの字で何かが書かれている。一見しただけではなんて書いてあるのか読み取れないが、その字は海がよく見ていた字にそっくりだった。
『ああ……あの子か』
「心当たりあるの?」
『一応。その手紙は問題ない』
「そう?じゃあこのまま渡しておくね!」
手紙を渡されたあと、山崎はこの後任務があるからと屯所を出ていった。
受け取った手紙の表裏を交互に見て首を傾げる。向こうから手紙を送られてくることは初めてのことだ。もしかして何かあったのかもしれない。でも、それなら母親の方が手紙を書くだろう。子の方が書いて送ったということはそれほと重要なことでもないかもしれない。
机の上に溜まっている書類を一瞥してから海は手紙の封を開ける。中には一枚の便箋とこれまた下手くそな字で書かれた文。
『字の書き方を教えるのが先だな』
これでは読み取るのに時間が掛かってしまう。知識を増やすよりも先にまずは読み書きを先に上達指せるべきだ。今度、教えに行く時は気をつけよう。そう思いながら海は晴太からの手紙を解読し始めた。
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