輝き
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あれから晋助は海の動向を気にするようになった。声をかけることはしないが、一人でいる時には気をつけるようにしている。
また天人の拠点へと一人で乗り込んで全滅するかもしれない。勝手な真似をされて自分たちが危険な目にならないように……というのは建前で、もう一度あの目が見たくなったからというのが本音だ。
何度かあの日のことを考えた。ずっと弱いと思っていた人間がいつの間にか強くなり、それどころか天人を殺すことに快感を得ている猟奇的なやつ。
きっと海を探しに行かなければずっと気づかなかった真実。
またあの顔が、あの目が見られるのであれば。迷子を探しに行くのも悪くない。
そしてその日の晩、海はまた一人で居なくなった。
まだ銀時も桂も気づいていない。海の所へ行くなら今がチャンスだ。
他のやつらにバレないように海の後を追った。今日は気づいたのが早かったからすぐに追いつき、こうしてコソコソと木に身を隠しながら海をつけている。
度々足を止めては辺りをキョロキョロと見渡して首を傾げる。そんな海の姿に晋助は小さくため息を漏らす。
「まさかどこに拠点があるのか分かってないのか?」
天人の拠点は仲間内で共有されている。桂が律儀に紙に残しているので忘れるはずがない。あのズボラな銀時でさえも何処に天人が拠点を張っているか、補給地点はどの辺かを頭に入れてあるのに。
今日は天人の拠点を潰しに行くわけじゃないのか。そう落胆した晋助の耳に紙をめくる音が聞こえた。
うーんと唸りながら海は紙を見つめ、時折顔を上げてはまた唸る。
地図があっても正確に読み取ることが出来なければ意味が無い。海の手にある地図は最早ただの紙切れになってしまっている。
本人も諦めたのか、地図を懐へとしまってまた歩き始めた。適当に進めばいつかはたどり着く。そう考えたのだろう。
そうして暫く歩いたのち、漸く拠点を見つけることが出来た。
そこからは一瞬だった。見張りをしていた天人の首を一閃。ゴロリと落ちる首と勢いよく噴き出す赤。何があったんだと喚く天人の中へと海は駆け出していった。
襲いかかってくる天人たちを次々に殺していく様子はまるで舞を踊っているかのように軽やかで、それが殺戮だとは思えない。
ものの数分で拠点は血の海と化す。倒れて積み上がった天人らの死体の上で笑う海。
その顔に晋助は見蕩れていた。やはりあの表情は美しい。
「おい」
「っ……!」
「見てないで止めろよ」
がさりと音を立てて出てきたのは不機嫌そうな顔をした銀時。
「お前は知ってたのか。海が拠点を潰していることを」
「さぁな」
曖昧な返事を残して銀時は海の元へと向かう。転がる死体を冷たい眼差しで見つめ、笑っている海に声を掛ける。銀時に声をかけられた海は怯えた顔をして後ずさった。
「帰るぞ。またヅラに怒られるだろうが」
『怒られるのは俺であって銀時じゃないだろ。大体なんでいつも……』
「お前が何してんのかはお見通しなんだよ。コソコソやってるつもりかもしんねぇけどバレバレだから」
『なんだよそれ』
銀時と笑う海に違和感を感じてしまう。本来であればあれが普通なのに。天人を相手にしていたときの顔が異常であるはず。
それなのに。
「なんだ……これは」
さっきから胸の高鳴りが治まらない。心臓がうるさいほど早鐘を打っている。もう一度、もう一度あの顔が見たい。出来ることならあの表情の海と共に戦ってみたいと。
「おいおい、冗談じゃねぇよ。あんな気狂いとなんか」
口ではそう言ってみても本心は隠しきれない。
あれが欲しい。初めて海に対しそんな感情が芽生えた瞬間だった。
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