輝き
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『……いつまで見てるつもりだ?』
全身がびっしょりになった頃、不意に海がこちらを振り返った。
「知ってたのか」
『足音には気をつけた方がいい。ここらへんは落ち葉が多いから』
息絶えた天人から刀を抜き鞘へと戻す。そして海は命乞いしていた天人を見下ろした。
『まだダメだな。これじゃまだ追いつかない』
死体を足蹴にしてブツブツ何かを呟く。雨音のせいで上手く聞き取れないが、海は悔しそうな表情で死体を眺めていた。
その目はとても平静とは思えなかった。
「お前……」
『なに?』
こちらへと向けられた目。その目から晋助は逃げられなくなった。
『どうか、したか?』
「く、来るな……!」
一歩、こちらへと踏み出された足にぞわりと寒気が立った。瞬時にこの場から逃げなくてはと思ったが、足は震えて動かせない。
『晋助?』
海の声で姿で晋助を呼ぶ。だが、その目だけは表情だけは海とは違っている。
まるで血を欲している化け物のような顔で海は晋助に向けて笑みを浮かべていた。
「お前本当に……海なのか?」
『何言ってんだよ。俺は俺だけど』
転がっている死体の間をゆっくりと歩いてくる。晋助の前に立った海は先程の狂った顔ではなく、いつもの穏やかな笑み。
『桂が心配するから帰ろう』
何事も無かったかのように振る舞う海に晋助はただ頷くことしか出来なかった。
拠点までの帰り道に何度も海が道を間違えたが、そんなことを気にしている余裕が無いくらい晋助はさっきのことで頭がいっぱいになっていた。
狂気を孕んだあの目が、最初こそは恐ろしいと感じたが今では美しいと思ってしまう。血にまみれた顔で天人の死体を見下ろす海が。
とても綺麗に見えた。
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