輝き
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「誰かいるのか!」
誰が来てもいいように刀の柄を握りしめながら一歩ずつ拠点の中心へと近づく。
足元に転がる天人は皆息絶えていて、生きている人を探す方が苦労した。
天人の死体なんてこれまで何度も見てきたはずなのに何故か今日に限って恐怖と吐き気がせりあがってくる。それほど足元のものはおぞましいものだった。
最初に見た死体はまだ良かった方だったらしい。中心の方へ行くに連れて死体の数は増え、そして損壊状態が酷くなった。
首だけだった刀傷は腕や足、そして腹を引き裂かれて居るのもいる。それは多数の天人に襲われたせいで一撃死が出来なくなったから。
これだけの数を相手にした者は只者では無い。柄を掴んでいる手にじわりと嫌な汗が滲む。
「や、やめろ……!」
静かな拠点で唯一聞こえた声。掠れて聞こえづらいそれは誰かに許しを乞う哀れな悲鳴。
『やめろ?何を今更。お前らは俺らの話なんて聞きやしなかっただろうが』
天人の声に混じって聞こえたその声は紛れもなく海の声。だが、いつも聞いている声色とは全く違う。冷たく、天人を嘲笑しているかのようだ。
そっと物陰から彼らを伺うと、倒れている天人に刀の切っ先を突きつけている海の後ろ姿が見えた。
「俺らはただの……見張りだッ!俺をやったっててめぇらが死ぬことには変わりねぇ!」
『だからなんだ?』
「俺が死ねばすぐにお前らは潰されるぞ!お前の仲間も、他の人間も全員な!」
『そうか。それは厄介なことをしたな』
口では反省しているように聞こえるが、海の顔はそんなことを思っているようには見えない。むしろ目の前の天人をいつ殺そうかと悩んで……笑っていた。
「き、貴様ァ!!」
『今日は疲れたからこれぐらいにしといてやるよ。なんだか雨も降ってきそうだし』
天人の肩に刀を突き刺す。途端にあがった悲鳴を聞きながら海は空を見上げる。
『ああ……降ってきた。これじゃ戻ったら桂に怒られるな』
パラパラと降り出した雨は晋助と海を濡らしていく。それでも晋助はその場から動けなかった。海に声をかけてここから離れることもせず、ただ海の後ろ姿を見つめて。
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