輝き
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「晋助様!聞きたいことがあるんですけど……」
部屋で煙管を吹かしていたところにまた子が顔を覗かせる。
いつもなら質問に答える暇は無いので無視するとこなのだが、今日は何となく気分がいい。たまには部下の話に付き合うのも悪くないかとまた子の方へと顔を向けた。
「何が聞きたい」
「えっ、えっと……」
聞きたいと言うからそれに応えたというのに、また子は視線さ迷わせて戸惑う。
「聞きたいことがあったんじゃねぇのか?」
「あるっス!あの……晋助様はなんで海様に惚れたんスか?」
「海に?」
「はいっス。海様が強くて綺麗なのは分かるんですけど……」
性別の垣根を越えて晋助が海を好む理由。友としてではなく、それ以上の感情を持っている原因が知りたいとまた子は怯えながら晋助に聞いた。
「惚れた理由ねぇ」
そんなこと自分でもよく分かっていない。
また子の言う通り、海は強く、その上美人ときた。道行く人が誰しも一度は振り返って見てしまうほどの美貌。そして男であればあの身のこなしに憧れを抱くものも数多。
だが、それだけでは男に恋愛感情を持つことはないだろう。
「晋助様は海様と幼なじみなんです……よね?」
「一応な」
海と共に一番長く居たのは銀時だ。晋助と桂はその後に海と知り合っている。
海のことをよく知っているのもあの男。幼かった自分は海のことをよく知らなかった。ただ、彼は松陽のところに捨てられたのだと言ったことは覚えている。今ならその意味は分かっているのだが、当時全てを知っていたのは銀時と松陽だけ。
それだけが晋助にとって悔しい事実。
「子供の頃の海様ってどんな感じだったんッスか!?」
そこまで答えてやる義理はない。これ以上の会話は必要ないと口を閉ざそうとしたが、不意に海の言葉を思い出して晋助は仕方なく昔の記憶に思いを馳せた。
「(お前みたいに四六時中ヘラヘラするわけねぇだろ)」
部下と話をする時は少しでも穏やかに。そしてなるべくコミニュケーションを取るように。
海はそう言って笑った。簡単に言ってのけるが、晋助にとって最も無理な話だ。何が楽しくて笑えというのか。
──なら俺が晋助を笑わせればいい?
「そういった割には……」
側に居ないじゃないか。
近くにいないのにどうやって己を笑わせられるというのか。次会ったらできない約束はするなと注意してやろう。
「晋助様?」
「ガキの頃の記憶なんざ残ってねぇよ」
あるとしたら戦争の頃の記憶。頭の中から離れることの無い強烈な思い出。
師と慕っていた人物が銀時によって殺される記憶と、いくつもの天人の死体を積み上げた山の上で笑う海の姿。
その情景だけはいつになっても晋助を苛んでいた。
.