掴めなかった手と救い上げた手
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『…………夢か』
ぱちりと目を開けて目の前の天井を見つめる。目だけを動かして周りを見ると、そこには土方の背中。
その背中へと手を伸ばし触る。ぴくりと揺れる背中。そしてすぐに振り返る顔。
「おう、起きたか」
『悪い、寝てたか』
「疲れてんだろ。そのまま寝てて構わねぇよ」
『アホか。手伝うって言ったやつが寝てるなんておかしな話だろ』
「アホはてめぇだ……なんだ?怖い夢でも見たのか?」
海の顔を見た土方が海の目元へと手を伸ばす。それを黙って見つめる海。土方の指が目元に触れてから離れる。指先についた涙を見て海は驚愕の色を浮かべた。
『……ガキかよ……』
ゴシゴシと目を擦り涙を拭う。布団から這い出て、寝る前に座っていた場所へと戻った。
『今ここで見た事は誰にも言うなよ』
「言わねぇよ」
『絶対だからな。約束しろよ』
「あぁ」
それから互いに黙って書類へと目を映す。
土方の方は海に色々と聞きたいことがあったのだが、全て飲み込んで闇に葬った。
きっと聞いても教えてはくれないだろう。
これから先、海が自ら語るその日まで。今日あったことは全て記憶の奥底へと沈めた。
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