掴めなかった手と救い上げた手
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少しの休息を経てまた天人を切り倒す3人。逃げながらの攻防のせいで地理を把握していなかった海達は崖っぷちへと立たされていた。
「おいおい、どうするよ……」
「ここで全員殺すしかあるめぇよ」
『これ全員か……骨が折れるなぁ』
後ろは崖、前には数十人の天人。疲労が溜まっている体でどこまで動けるかである。
特に動きの速い海は3人の中で1番消耗している。
銀時と晋助に悟られないようにしてはいるが、もう立っているのも辛い状態。
それでも懸命に刀を振って天人を斬り倒すのは銀時と晋助がいるから。
「じゃあ、一丁やるとしますかねぇ」
「死ぬんじゃねぇぞ」
『2人もな』
「無理すんなよ、海」
『わかってる』
「(ほんとかよ)」
銀時は海をじっと見つめる。何事もなく立っているように見えるが、足が僅かに震えている。もうこの時点で無理して立っているのがよくわかる。
「海……」
『銀時、いいから。ここを切り抜ければ終わるから。だから』
心配すんな。そう言われて銀時は口を噤む。こういうときの頑固さはかなりのもの。テコでも動かないことをよく知っている銀時はそれ以上、止めることはせず、代わりにと海の背中をぽんと叩く。
「終わったら休ませるからな」
『はいはい』
天人達が海立ちに向けて武器を振り上げる。それを避けて動き回る3人。疲れを見せないその動きは天人達を困惑させた。
「ぐっ……!」
「銀時!てめぇ!」
銀時が天人に斬られて呻く。それをみた晋助が銀時のフォローをすべく、銀時と天人の間に入り刀を振るう。だが、押し寄せる天人を一人で倒せるはずもなく、晋助と銀時は崖ギリギリへと追い込まれていた。
「これやばくねぇか?さすがに……」
「確かにな……」
冷や汗を垂らす2人を見て笑う天人。
その直後、2人は天人に突き飛ばされて地を失う。
「やっべ!!」
体が空を飛ぶ感覚。何かに捕まろうともがく手。伸ばした手はどこにも届かず空を切る。
もう終わりかと諦めた時、2人は再び地面へと戻っていた。
「海!!!!!」
銀時が叫ぶ声が聞こえて後ろを振り返る。
自分たちがいたであろう場所に海が居て、笑っていた。
銀時が必死に海に手を伸ばすが、それは海に届かず空を掴む。
『良かった』
そう言って海は崖を落ちていった。
「海ィィィィィィィ!!!!」
最後に残ったのは海が投げ捨てたであろう愛刀と晋助の悲痛な叫びだけだった。
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