掴めなかった手と救い上げた手
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「お、おい……海?どうした?」
『誰も……返事しねぇから……皆……』
「ったく、死んでねぇよ。こんなんで死ぬわけねぇだろ。大体、海一人置いて死ねねぇよ」
銀時は呆れた顔を浮かべながら震えている海の背中へと腕を回す。安心させるように何度も背中を撫でてやれば、海は我に返ってすぐさま銀時のそばを離れた。
「なんだ?もういいのか?」
『わ、悪い……ちょっと気が動転して……』
「ふぅん?いいぞー?海ならいくらでも抱きしめてやるから」
にやにや笑いながら近づいてくる銀時。海はそんな銀時の股間を蹴りあげて黙らせた。
『晋助と桂はどこにいるんだ?』
「た、かすぎはぜん……せんでたたかって……ヅラは……いま……怪我人のひなん……を……」
股を押さえながら話す銀時は痛みに顔を歪めながら現状を報告する。
『そっか……みんな生きてるのか』
ほっと胸を撫で下ろす海。そんな海を見つめる銀時は思わず微笑む。海の顔に表情が戻ったのだ。
先程、天人に斬りかかられそうになっていたときの海は絶望に打ちひしがれていて、見るのも辛かった。
そんな海に多少なりとも笑顔が戻ったことがとても嬉しく、銀時はつい度を越した対応をしてしまった。
それ故に自分の息子が痛いよーと叫んでいるのだが。
『とりあえず晋助のところに加勢しにいくか。銀時、動けるか?』
「海に蹴られたところ以外はピンピンしてますね、はい」
『あっそう。じゃあ大丈夫だな』
「ちょ、待って!待ってって!」
すたすたと歩いていってしまう海を慌てて追いかける。
「そんな焦らなくてもあいつは大丈夫だって」
『わかんねぇだろ……絶対に死なないなんてありえねぇんだから』
「……それはそうだかもしれねぇけどよ」
『もう嫌なんだよ……誰かが目の前で死ぬのは。お前らが目の前で死んでいくなんて耐えられねぇんだよ!』
勢いよく振り返る海の目には涙が溜まっていて、銀時はハッと息を飲む。
今にも零れ落ちそうな涙を海は袖で無理矢理拭い、また前を向いて歩き始めた。
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