掴めなかった手と救い上げた手
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天人と人間の戦争がそろそろ終わりを告げる頃。そんな時期に海は刀を持って戦っていた。
海の足元に転がる無数の死体。天人と人間が折り重なるように倒れている。
海が身に纏う青い服も天人の血をこれでもかというくらい浴びた為、どす黒くなっていた。
『……あいつらは……どこだ?』
周りを見渡してもあるのは死体だけ。
立っているのが自分しか居ない戦場で仲間を探す。
遠くからでもわかりやすい銀、背は自分よりも多少低いが威圧感と俺様感が強い紫、艶があり綺麗に風に靡くように揺れる黒。
どれだけ探してもその3人は見つけることが出来なかった。
『どこにいんだよ……お前らがこんな所で死ぬようなやつらじゃねぇだろが』
死体の中を歩きながら名を呼ぶ。
返事が返ってくることはない。それでも名を呼び続ける海。一人でここまで天人を倒し、それなりに傷を負った体は疲労困憊。
足を動かすのも一苦労である。
そんな中でもあの3人を見つけてからでないと休めない。限界を訴える身体に鞭を打って動かす。
『銀時!晋助!桂!!頼むから返事してくれ!!!』
斬りあっている時でも出さないくらいの大きな声で叫ぶ。
暫く待ってみたが自分以外の声を拾いあげることは出来なかった。
『銀時……晋助……桂…………どこに……いるんだよ』
持っていた刀が手から滑り落ちて地面に突き刺さる。全身から力が抜けてがくりと膝から落ちるように座り込んだ。
もう見つけられないかもしれないという絶望的な状況。もう3人はこの世にいないのでは?という考えが頭をよぎる。
『疲れたよ……』
まだ天人と人間がこの先で戦っているのが見えた。でも、もうどうでもいい。あいつらが居ないのであれば俺には関係ない。
がさりと背後で何かが動く音がする。感じるのは鋭い殺気。
「ひゃはははは!地球人め……俺が成敗してくれるわぁぁ!」
『勝手にしろ……もうどうでもいい』
走りよってくる天人に背を向けたまま海は目を閉じる。3人がいない世界になどいる意味は無いのだから。
「海ィィィィ!!!!」
『ぎ……ん?』
突然名前を呼ばれて振り向く。背後には天人が口から血を吹き出しながら痙攣していた。
その胸には深々と突き刺さるっている刀。それが引き抜かれると、天人は力をなくして地面に倒れた。
「おい、海!お前は死にたいのか!てめぇ、またハチマキを頭に巻いてたとかっていうんじゃ……ってうお!?」
『銀時……銀時!』
刀についた血を振り払いながら海に悪態つく銀時。海は銀時の姿を見るやいなや、走り出して飛びつき返り血だらけの体を強く抱き締めた。
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