ハチマキの危険度大
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ハチマキの危険度大。
戦場からの帰り道。ずらずらと歩いていく男たちは皆疲れ果てた顔をし、どんよりと辺りの空気を重くさせていた。
疲労困憊で話す余裕もない彼らはただ無言でひたすら歩き続ける。
今日も多くの仲間が目の前で散っていった。何度も何度もそんな思いを味わえば、自ずと心が壊れていくというもの。列をなして歩く男たちの瞳は酷く澱んでいた。
明日は誰が死ぬのか。もしかしたら明日は自分があの戦場で屍として転がっているのかもしれない。誰にも知られずに天人たちに嬲り殺されて。
そんなことを考えてしまうと足が竦んで動けなくなる。ここから逃げ出したい。でも、ここで逃げたら地球は天人たちの手に落ちる。今までの苦労が、散っていった仲間たちの想いを無駄にする訳にはいかない。
そう思って彼らはひたすら前を向いた。
そんな彼らの遥か後方から聞こえてくる騒ぎ声。声に気づいた彼らはゆっくりと振り返る。あぁ、またやってると苦笑を浮かべて。
「おい、銀時。てめェのせいで天人どもに後ろを取られただろうが!」
「そんなの俺は知ったこっちゃねぇよ!お前がちゃんと周りをみてないせいじゃねぇの?!」
「銀時ィ……てめぇは斬らねぇとだなァ」
「あ?やんのか?このチビ!」
「この腐れ天パがァ」
後ろを振り向けば、銀髪と紫髪が罵りながら蹴りあっていた。
坂田 銀時と高杉 晋助。
戦場では"白夜叉"そして"鬼兵隊総督"と呼ばれて、天人から恐れられ、仲間からは絶大な支持を受けている。
この戦争が膠着状態になっているのも彼らのおかげといっても過言ではない。
ただし、そんな彼らにも少しばかり問題があって──
『てめぇら……いい加減にしろよ?』
「あぁ……保護者さまがお怒りだ」
銀時と晋助をそっと見守っていた仲間たちの誰かがぼそりと呟く。
"保護者さま"と呼ばれた彼は、口喧嘩をし始めた銀時と晋助に向けて刀を向けていた。
刀を向けられた二人は慌てて身を寄せ合い、いかにも仲が良さげですという雰囲気を醸しだす。
「わ、悪かったな!高杉!今度はちゃんと声かけっからよ!」
「あ、ああ、そうしてくれ」
「ほら!仲直りしたから!高杉と仲直りしたから!!」
だからその刀をしまってくれ。銀時は必死に頼み込むが、保護者の目はまだ鋭い。
彼は数秒ほど銀時と晋助を睨んだ後、深いため息を零した。白夜叉、鬼兵隊総督と恐れられている二人が怯えるようにビクリと肩を揺らす。その姿は親に叱られている様。
『はぁ……次やったら今度こそ、その首を落とすからな』
そう言って彼は刀を鞘へと戻した。
彼の名前は桜樹 海。坂田 銀時、高杉 晋助ならびに桂 小太郎と幼なじみ。
戦場で青き衣を纏いて戦う戦鬼。いつから誰が呼んだのかわからないが、坂田 銀時を白夜叉と呼ぶように彼もまた"蒼き閃光"と呼ばれていた。
そんな彼の立ち位置は決まって銀時と晋助の喧嘩の仲裁役。彼が間に入ればどんな喧嘩もすぐに止まるという。
手が出る喧嘩にまで発展した場合、海が二人をボコして終わる。
以前、銀時と晋助が互いの顔を殴りつけるほどの喧嘩をした事があった。誰もがその喧嘩を止められず、ただ黙って見ているしかなかった時、海が黙って間に入ったことがある。
いつもの様に声をかけて止めようとしたが、二人は喧嘩に夢中で海がそばに居たことに気づかず殴り続けていた。銀時の振り上げた手が海の顔にぶつかるまでは。
その後は悲惨だった。
二人での喧嘩は三人での喧嘩になり、桂と辰馬が止めに入るまで続いた。海の一方的な暴力という名の喧嘩。
主にボロボロになったのは銀時と晋助だった。
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