第三幕
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「お疲れ様です!」
『お疲れ様。どうだ?辻斬りは出てきそうか?』
「それがうんともすんとも」
『見回りが強化されたことに気づいたか』
これだけ街を巡回しているのだ。こうなることは予想していたのだが、どこか期待していた部分もあったので、少し拍子抜けした気分だった。
「捕まりますかね」
『ますかね、じゃなくて捕まえるんだよ。それが俺らの仕事だろ』
「そうですけど……。桜樹さん聞きましたか?辻斬りが持ってる刀の話」
『今日聞いた。生き物みたいだったってやつだろ?』
「そうです!そんな気持ち悪い刀あるんですかね」
どうやら刀の話は広がっているらしく、話を聞いた岡っ引きは怯えでカタカタと身を震わせていた。
『見てないからわからないけど……そんな刀が実在してるなら見てみたいもんだな』
「怖くないんですか!?」
『あんた怪談とか信じるタイプだろ』
「はい!もうバッチリ!」
はぁ、とため息を漏らす。よくそんなんで夜中の巡回に行こうと思えたなこの岡っ引き。
『だったら尚更その辻斬りと会わないとな』
「なんでですか!?桜樹さん俺の話聞いてましたか!?やばいんですよ!!」
『噂の真実を見てみたいと思うだろ?』
「噂は噂のままが楽しいんですよ!真実なんて知りたくもありません!!」
『おい。辻斬り捕まえるって言ってんのに真実を知りたくねぇはないだろ』
お前は何のために警備しているんだと聞けば、岡っ引きはハッとした顔して俯いた。
「すみません……」
『幽霊追っかけてるわけじゃねぇんだからな?』
「はい、気をつけます」
先程の勢いは消え去り、岡っ引きは借りてきた猫のように大人しくなった。
『巡回の交代はどうなってるんだ?』
「俺はあと一時間で交代です」
『そうか。無理させて悪いな』
「い、いえ!大丈夫です!!真選組の皆さんも毎日お勤めご苦労様です」
『お前らに比べたら楽させてもらってるよ』
実際、海たちの仕事は彼らからあげられている報告書の上で成り立っている。辻斬りの被害も岡っ引きからの書類を通して見ているだけであって、死んだ人間を一々確認しているわけではない。
彼がいち早く事件に気づいてくれるおかげで海たちが動けるのだ。
『感謝してる。でも、あまり無理はしないで欲しい。しんどかったら言ってくれ。俺たちが動くから』
「その言葉だけで十分ですよ」
忙しいのはお互い様だと笑う岡っ引きに海は少しだけ微笑む。
彼らが安心して仕事をできるように尽力しなければ。緩んでいた気を引き締めるように深く深呼吸をした。
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