第六幕
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「よう。お苦しみのところ失礼するぜ。お前のお客さんだ」
暗い部屋の奥で蹲る男。腕を斬られた痛みか、それとも紅桜がじわじわと身体を侵食していく痛みと恐怖に恐れ戦いた似蔵はたった一人隠れるようにしてこの場にいた。
「色々派手にやってくれたらしいな。おかげで幕府とやり合う前に面倒な連中とやり合わなきゃならねぇようだ」
「う……」
「桂、殺ったらしいな。おまけに銀時と海ともやり合ったとか。わざわざ村田まで使って……」
そしてこのザマ。呆れを通り越してもう何も言えない。似蔵が桂達を襲った理由の見当はついている。まさか手を出すとは思っていなかった、といえば嘘になるが。
「で、立派なデータは取れたのかい?村田もさぞお喜びだろう。ヤツは自分の剣を強くすることしか考えてねえからな」
「ふっ……あんたはどうなんだい?昔の同志が簡単にやられちまって悲しんでいるのか?それとも……」
無駄口を叩く駒になったものだ。
刀を抜いて背後から斬りこもうとした高杉に対し、似蔵は紅桜を素早く取り出し盾に使う。その速さは高杉が見知っているもの。
以前の似蔵では出せない速さ。それは紅桜が海の技術を学んだということを示す。
「ほう。随分と立派な腕が生えたじゃねぇか。仲良くやってるようで安心したよ。文字通り一心同体ってやつか」
紅桜の成長具合は確認できた。もうこれ以上、似蔵と話すことは無い。刀を鞘へと戻して高杉は似蔵に背を向けた。
「さっさと片付けてこい。あれ全部潰してきたら今回の件は不問にしてやらぁ。どのみち連中とはいずれこうなっていただろうしな。それから……二度と俺たちを同志なんて呼び方するんじゃねぇ。そんな甘っちょろいもんじゃねぇんだよ。俺たちは。次言ったらそいつごとぶった斬るぜ」
それだけ残して高杉は廊下へと足を向けた。
部下たちは船内を慌ただしく走り回っており、その中で飛び交っている言葉に"桂の仲間が"という言葉が聞こえた。
「仇討ちか」
大層な仲間思いだ。誰を相手にしているのか分かっているはずなのに無謀にも突っ込んでくる無能。たかが寄せ集めの攘夷浪士で何が出来るというのか。
「お前も来るのか?海。幕府の犬と成り下がったお前が」
紅桜とやり合ったのであればこの事態は知っているはず。どうせまた銀時に手を貸すはずだ。
仲間に、銀時に甘い海ならば。
「銀時の前でてめぇを連れ去るのも一興か」
銀時にまた喪失感を味わわせるのもいいだろう。
海はお前のだけではないと思わせるために。
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