第五幕
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かたん、と襖が開く音が聞こえて顔を上げる。寝室から出てきたのはお妙だった。
『どうしたんだ?』
「怒られちゃった。ジャンプの種類が違うって」
『買い直して来いって?いくら怪我人とはいえわがままが過ぎるだろ』
「いいのよ。私が間違えちゃったんだから」
『俺が行ってこようか?外雨降ってるし』
「ううん。いいの」
優しげな笑みをしていたお妙は徐々に笑みを無くしていき、真剣な面持ちで海の元へと歩み寄る。
「海くん」
『ん?』
「お願いがあるの」
『俺で叶えられるものなら』
「お願いだからみんなで帰ってきて」
それは切実な願いだった。ギュッと着物を握りしめ、悲しげな瞳で海をまっすぐ見つめて。
「ここに、万事屋にちゃんと帰ってきて」
『……多少の怪我は見逃してもらうからな』
「うん。帰ってきてくれたなら私が面倒みるから。ちゃんと手当てするから」
だからお願い。と消え入りそうな声でお妙は海に頼み込む。
必ず帰るとも約束できない。子供らの命は全力で守るつもりだが、自分や銀時はどうなるかは分からないのだ。
出来ない約束はするものではない。だけど……。
『なぁ、お妙さん』
「なに?」
『帰ってきたらミルクティーが飲みたいな』
呑気な声で、へらへらっとした顔で海はポツリと呟く。この場に似合わない態度にお妙はふっと微笑んだ。
「わかったわ。用意しとく。あといちご牛乳もね」
『いちご牛乳のパックの中に唐辛子突っ込んでおきなよ』
腹いせに、と付け足してやれば彼女は楽しげに笑う。こんなんで不安が拭いきれるかは微妙だが、ずっとあのままでは可哀想だ。皆が帰ってくるまでここで一人で待ち続ける苦痛なんて感じなくていい。
「じゃあ、私買いに行ってくるから」
『ん、気をつけてな』
「海くんたちも」
そっとお妙は万事屋の戸を開けて出ていく。しんと静まり返る居間の中、寝室から銀時が出てくるのを待った。
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