第一幕
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『銀!起きなよ!』
「んー……」
春の温かな陽気は昼寝をするのに適した温度だった。隣に座っている友人が授業中だというのにうたた寝をしてしまうほどに。
『銀!!』
「なんだようっせーな」
『なんだよじゃないよ!今勉強してるんだよ?わかってる?』
「大丈夫だって、少しくらい」
『大丈夫なわけないだろ!?さっきから先生こっち見てるのに!』
先生である松陽は先程からこちらを見ていた。居眠りをしている銀時を怒るわけでもなく、ただ微笑みを浮かべているだけ。
周りの子供らはいつもの優しい笑みだと思うだろう。
『(やばいやばい!怒ってる!!)』
顔は笑っていても目は笑っていない。言葉に表情に出さないだけで、内心では居眠りしている銀時を怒っているのだ。
『お願いだから起きてよ、銀!』
「ったく、人が気持ちよく寝てるのになんだよ」
『怒られるのは僕なんだからやめてよ!』
あの笑みは銀時だけでなく海にも向けられている。その意味は深く考えなくてもわかること。
『もう寝ちゃダメだからね!?』
「へーへー」
眠そうな顔をしながら銀時は机に置いてあった教本へと手を伸ばす。真面目に勉強してくれるかと海が安堵したのもつかの間、銀時はパラパラと数枚めくっただけだった。
そして今度は机に突っ伏して寝た。
『銀時!!!』
また眠ってしまった銀時に海はカチンときて大きい声で叫ぶ。
「ばっか!!声がデケェよ!!」
『だって銀時が寝てるのが悪いんじゃん!!』
「だからって叫ぶことないだろ!?」
『ならちゃんと起きてよ!!』
授業中だということも忘れて海と銀時は大きな声で喧嘩し始める。周りの子供らが驚いた顔でこちらを見ていることにも気づかずに。
「海、銀時」
『バカ銀時!先生に怒られちゃえばいいんだ!!』
「ちょっと寝てただけだろ!大体、お前が昨日の夜眠れないって言うから付き合ってやったのに!」
『そ、そんなの……!』
「二人とも喧嘩はやめなさい」
『「あっ」』
気づいた時にはすぐ側に松陽が立っていた。
先程よりも深い笑みを浮かべながら。
「喧嘩はダメですよ」
『「は、はい……」』
ぶるぶると震えながら海と銀時は強く頷く。松陽の笑顔がとても恐ろしく、喧嘩していたことなど忘れて海は銀時の背に隠れた。
「仲直りしましょうね?」
「も、もう仲直りしたから!な!?海!」
『う、うん!したよ!!』
銀時の背中にしがみつきながら海は松陽に信じてもらうべく何度も頭を縦に振り続ける。
「それなら良かったです。でも、二人には罰を与えなきゃいけませんね」
へ?と銀時と海は固まった。
勉強の邪魔をした。という理由で海たちの頭に拳骨が落とされる。松陽は満足した顔で授業を再開したが、海と銀時はそれどころではなかった。
『(バカ銀!!)』
「(バカ海!!)」
春の陽射しを浴びながら互いの事を心の中で罵り合う二人。
そんな二人を松陽は微笑みながら見ていた。
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