【魔法】その穴熊寮生は魔法使い(物理)
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お天とさまが顔を出す時間に目が覚めた。
朝食までにはまだまだ時があるが、朝っぱらから老人のようにふらふらと街中を散歩する気にもならない。
この間買った豆を使ってコーヒーでも飲むか。
そう思い、ベットから立ち上がる際に目に入ったカレンダーには、たくさん書かれたバツと一つ大きく赤丸がついていた。
「明日は入学式か。」
今日から約一年前、俺は魔法学校に入学した。
入学通知書が届くまで、全く魔法というものを認識していなかった。
もちろんファンタジー小説のような魔法は知っているが、現実にあるとは想像もしていなかった。
初等科の児童がバスケでダンクをきめたとか、近くの公園で真冬に花が咲いたとか、魔法のような噂は聞いたことはある。
どんなキセキの世代だよ、なんて思いながら、そんな奴もいるだろう程度にしか当時は感じていなかった。
ピーッ
やかんの音にふと我に返り、一文字も進んでいなかった本を閉じ、台所へ向かう。
魔法を使えば一瞬でお湯が沸くが、生憎マグル(魔法を使えない人)界では学生の魔法の使用は禁止されている。
どちらにせよ、魔法で沸かすのはなんだか風情がないと個人的に思っているので、帰省している間は専ら手作りがメインである。
昔、いとこも「調理は魔法ではなく化学だ」と言っていた記憶がある。
俺は、ゆっくり抽出したコーヒーの香りをかぎながら、ホグワーツへの入学通知書が来たのもこんな穏やかな日だったことを思い出していた。
約一年前のその日、俺が家に帰るとフクロウがいた。
ドアを閉める。
ドアを開ける。
フクロウが母さんの腕にとまっていた。
「母さん、俺、目医者に行ってくる。」
「あら、その鋭い目を小動物のおめめに取り替えてきても、フクロウはいなくならないわよ。」
街へUターンしようとする俺に、母さんはフクロウへ餌を与えながら穏やかに言った。
母さんにコンプレックスを指摘され、若干ショックを受けつつ家の中に入る。
「母さん、鷹匠だったのか。」
「昔、あなたのおじいちゃんにハワイで習ったのよー。なんてね。」
母さんはフクロウを慣れた手つきで外に逃がすと、振り返りながら俺に椅子に座るよう言った。
促されるままに座ると、目の前に紅茶と菓子が置かれた。
母さんは紅茶を一口飲んでから、話を切り出した。
「父さんと母さんはね、魔法使いなのよ。」
「…へぇ。」
「あら、信じてないわね?あなたのオムツを魔法で取り替えたこともあるのに。」
「信じる信じないの前に、話が読めない。」
不思議そうな顔をする母さんに、初めから説明してもらうと、
この世界には実は魔法使いがいて。
だけど、母さんはじいちゃんがマグル出身の魔法使い、父さんは一族初の魔法使いと、二人とも魔法使いの血筋ではない通称マグルから生まれた魔法使いで。
魔法使いたちは皆魔法学校とやらに行かないといけないらしく。
そしてどうやら、俺も魔法使いらしい、ということだった。
「そんなまさか…。」
「嘘じゃないですー、本当ですー。」
「母さん。もういい年なんだからそのぶりっ子ポーズはやめてくれないか。」
「えぇー、ひどい。」
ショックを受けた様なモーションをする母さんを尻目に、俺は自身の手を見つめていた。
母さんと父さんが魔法使いで、俺も魔法使い…?
生まれてこの方、そんな超常現象は起こったことがないぞ。
「俺が魔法使いなはずがない。魔法が使えた記憶もないからな。」
「行事や遠出する時にあなた、傘使った事ある?」
「…ないな。」
「嵐の日の博物館見学は?」
「…俺たちのところに来る前に熱帯低気圧になった。」
「雨続きまっただ中の鉄道旅行は?」
「…俺たちが追い立てるかのように雨雲が逃げて行った。」
「5年前のピクニックは?」
「…近くで大雨と雷が鳴っていたが、俺たちのところはちょうど何にもなかった。」
「…ね!」
「ね、と言われても、たまたまだろ。」
ほらみたことか。と言わんばかりのドヤ顔をする母さんに突っ込みをいれる。
それが魔法だというにはあまりにも庶民的ではないだろうか。
「実は、母さんも半信半疑だったんだけれどね?えへへ。」
「おい。」
「でも、ほら。あなたに手紙よ。」
差し出された手紙には、俺の名前と『ホグワーツ魔法学校』という印が記されていた。
中を見るとどうやら入学が決定した旨と入学してからのことが簡潔に書かれていた。
「さぁ、そうと分かれば、今日から猛特訓よ!」
「…何の。」
「もちろん格闘技よ!」
「……え???何だって????」
今度こそ、俺は耳が悪くなったのかもしれない。
母さんは俺の両肩に手を置いて、神妙な顔つきで言った。
「いい?ヴァン。マグル出身はね、魔法族からはかなーり厳しい風当たりを受けるの。
特に最近はその風潮が強いと聞くわ。ハーフでもそうよ。
もしかしたら貴方の凛々しい顔に、難癖つける上級生に呼び出されることだってあるかも。だからね。
魔法が当たる前に顎を砕けばいいのよ。」
「発想がサイコパスに近いな。」
「何よ。ほとんどの学生は無言呪文なんて唱えられないんだから、その前に喋れなくすれば問題ないわ。」
「問題しかないけどな。」
母さんの暴走は父さんが帰ってくるまで続いたのであった…。
「思い出すんじゃなかった…。」
俺が考え込んでいる間に、すっかりコーヒーは淹れ終わってしまった。
苦い思い出を思い出しながら、コーヒーを啜る。
あの後、「魔法使いが軟弱なのはカッコワルイ!体力が資本よ!」と説得され、格闘技は習うことになった。
使うタイミングなんてこないと思いたかったが、確かに上級生には呼び出されたんだよなぁ…。
もちろん顎は砕いていない。
朝食までにはまだまだ時があるが、朝っぱらから老人のようにふらふらと街中を散歩する気にもならない。
この間買った豆を使ってコーヒーでも飲むか。
そう思い、ベットから立ち上がる際に目に入ったカレンダーには、たくさん書かれたバツと一つ大きく赤丸がついていた。
「明日は入学式か。」
今日から約一年前、俺は魔法学校に入学した。
入学通知書が届くまで、全く魔法というものを認識していなかった。
もちろんファンタジー小説のような魔法は知っているが、現実にあるとは想像もしていなかった。
初等科の児童がバスケでダンクをきめたとか、近くの公園で真冬に花が咲いたとか、魔法のような噂は聞いたことはある。
どんなキセキの世代だよ、なんて思いながら、そんな奴もいるだろう程度にしか当時は感じていなかった。
ピーッ
やかんの音にふと我に返り、一文字も進んでいなかった本を閉じ、台所へ向かう。
魔法を使えば一瞬でお湯が沸くが、生憎マグル(魔法を使えない人)界では学生の魔法の使用は禁止されている。
どちらにせよ、魔法で沸かすのはなんだか風情がないと個人的に思っているので、帰省している間は専ら手作りがメインである。
昔、いとこも「調理は魔法ではなく化学だ」と言っていた記憶がある。
俺は、ゆっくり抽出したコーヒーの香りをかぎながら、ホグワーツへの入学通知書が来たのもこんな穏やかな日だったことを思い出していた。
約一年前のその日、俺が家に帰るとフクロウがいた。
ドアを閉める。
ドアを開ける。
フクロウが母さんの腕にとまっていた。
「母さん、俺、目医者に行ってくる。」
「あら、その鋭い目を小動物のおめめに取り替えてきても、フクロウはいなくならないわよ。」
街へUターンしようとする俺に、母さんはフクロウへ餌を与えながら穏やかに言った。
母さんにコンプレックスを指摘され、若干ショックを受けつつ家の中に入る。
「母さん、鷹匠だったのか。」
「昔、あなたのおじいちゃんにハワイで習ったのよー。なんてね。」
母さんはフクロウを慣れた手つきで外に逃がすと、振り返りながら俺に椅子に座るよう言った。
促されるままに座ると、目の前に紅茶と菓子が置かれた。
母さんは紅茶を一口飲んでから、話を切り出した。
「父さんと母さんはね、魔法使いなのよ。」
「…へぇ。」
「あら、信じてないわね?あなたのオムツを魔法で取り替えたこともあるのに。」
「信じる信じないの前に、話が読めない。」
不思議そうな顔をする母さんに、初めから説明してもらうと、
この世界には実は魔法使いがいて。
だけど、母さんはじいちゃんがマグル出身の魔法使い、父さんは一族初の魔法使いと、二人とも魔法使いの血筋ではない通称マグルから生まれた魔法使いで。
魔法使いたちは皆魔法学校とやらに行かないといけないらしく。
そしてどうやら、俺も魔法使いらしい、ということだった。
「そんなまさか…。」
「嘘じゃないですー、本当ですー。」
「母さん。もういい年なんだからそのぶりっ子ポーズはやめてくれないか。」
「えぇー、ひどい。」
ショックを受けた様なモーションをする母さんを尻目に、俺は自身の手を見つめていた。
母さんと父さんが魔法使いで、俺も魔法使い…?
生まれてこの方、そんな超常現象は起こったことがないぞ。
「俺が魔法使いなはずがない。魔法が使えた記憶もないからな。」
「行事や遠出する時にあなた、傘使った事ある?」
「…ないな。」
「嵐の日の博物館見学は?」
「…俺たちのところに来る前に熱帯低気圧になった。」
「雨続きまっただ中の鉄道旅行は?」
「…俺たちが追い立てるかのように雨雲が逃げて行った。」
「5年前のピクニックは?」
「…近くで大雨と雷が鳴っていたが、俺たちのところはちょうど何にもなかった。」
「…ね!」
「ね、と言われても、たまたまだろ。」
ほらみたことか。と言わんばかりのドヤ顔をする母さんに突っ込みをいれる。
それが魔法だというにはあまりにも庶民的ではないだろうか。
「実は、母さんも半信半疑だったんだけれどね?えへへ。」
「おい。」
「でも、ほら。あなたに手紙よ。」
差し出された手紙には、俺の名前と『ホグワーツ魔法学校』という印が記されていた。
中を見るとどうやら入学が決定した旨と入学してからのことが簡潔に書かれていた。
「さぁ、そうと分かれば、今日から猛特訓よ!」
「…何の。」
「もちろん格闘技よ!」
「……え???何だって????」
今度こそ、俺は耳が悪くなったのかもしれない。
母さんは俺の両肩に手を置いて、神妙な顔つきで言った。
「いい?ヴァン。マグル出身はね、魔法族からはかなーり厳しい風当たりを受けるの。
特に最近はその風潮が強いと聞くわ。ハーフでもそうよ。
もしかしたら貴方の凛々しい顔に、難癖つける上級生に呼び出されることだってあるかも。だからね。
魔法が当たる前に顎を砕けばいいのよ。」
「発想がサイコパスに近いな。」
「何よ。ほとんどの学生は無言呪文なんて唱えられないんだから、その前に喋れなくすれば問題ないわ。」
「問題しかないけどな。」
母さんの暴走は父さんが帰ってくるまで続いたのであった…。
「思い出すんじゃなかった…。」
俺が考え込んでいる間に、すっかりコーヒーは淹れ終わってしまった。
苦い思い出を思い出しながら、コーヒーを啜る。
あの後、「魔法使いが軟弱なのはカッコワルイ!体力が資本よ!」と説得され、格闘技は習うことになった。
使うタイミングなんてこないと思いたかったが、確かに上級生には呼び出されたんだよなぁ…。
もちろん顎は砕いていない。