【探偵】その絵本作家は純朴である
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「…『果樹園農家は推理がお好き』、ねぇ…?」
なーんか、聞いたことあるようなタイトルなんだよなぁ。
今回の仕事はライトノベルの挿絵。
人気作家さんとのことで、どうしてもおれに頼みたいと作者が出版に押しきったらしい。
仕事の報酬や条件も悪くないし、もしかしたらアニメ化などの映像化になれば更に仕事にも繋がるので受けることにした。
資料の為、渡された小説を読み切ったおれはタイトルを再度確認する。
思ったより果樹園の描写が多かったな…。
自然描写がリアルにそして豊かに表現されているのが凄く魅力的な文章だった、是非ここをアピールしたい。
取材、しに行くか…!
おれは農家に関係する人がいるか、自身の電話帳から探し、一人の男に電話をかけた。
「作家先生!こげな遠いところまでよぉ来なすった!」
駅前で待っていた女性は俺たちを見て、大声で話し掛けながら駆け寄ってきた。
手ぬぐいで汗を拭う様子に、待たせてしまったかと隣を見たが、
早く来てただけだろう、昔から心配性なんだと恥ずかしげに言った。
「こちらこそ、突然の依頼に対応戴きありがとうございます。」
こちら、お土産です。紙袋を手渡すと、顔を輝かせておれの両手を掴んでぶんぶん振りながらお礼を言ってきた。
隣を見ると、昔からオーバーで、とさっきと同じ様な対応。
勢いに押され途切れ途切れに挨拶をした後、早速果樹園へ向かうことになった。
「にしても、うちの果樹園は作家先生のお眼鏡にかなうかやー?」
「写真で既に見させてもらいましたよ。素敵です。」
やんだ、素敵だなんて。こんなおばちゃんに言うもんでねぇや!
お袋のことじゃねぇで!前!前見ろ!
ぎゅぎゅっとタイヤ音を鳴らしながら、車はセンターラインから定位置へ戻った。
対向車がいないといっても、用水路に落ちたら大変だもんね。
ところで。隣でうっかりいつも使わない方言と「お袋」呼びを、成人してからの友人に見られて、えも言われぬ恥ずかしさで車の窓ガラスに頭を打ち付けている友人に何と声をかけたらよいものか…。
居たたまれない雰囲気のまま、おれたちは地元のFMのナンバーを聞いていた。
「お父さん!二人が来たよて!」
「…おう。帰ぇってきたか、公平。」
「だで。お帰り、公平。」
「ただいま、親父。お袋。」
照れくさそうに頬をかきながら、おれの友人沢木公平は久しぶりに実家の敷居を跨いだのであった。
その後。果樹園を見学したり、周りの山道を地元の人に案内して貰ったり、そのまま皆で宴会するなど、
大変賑やかに一日を過ごしたおれたちは、沢木家に戻り、居間で飲み直していた。
テレビではモデルが事故で入院したとニュースが流れていた。
地酒をあおり、揃ってぷはーと息を吐く。
「いいところだね。」
「騒がしいだけですよ。」
「でも、今日は楽しそう。」
最近、何か疲れてるみたいだったから。
カタリとコップを置いて、沢ちゃんは息を吐いた。
仕事、辞めようと思って。
そう切り出した沢ちゃんの話によると、好きで始めたソムリエの仕事だったが、ストレスも多く、近頃ワインの知識がなく高圧的な依頼人の元で仕事をするよう打診されているとのこと。
「いつかは自身の店を持ちたいと思っていたけど、本当にこのままでいいのかな、と。」
「沢ちゃん…。」
手を弄りながら、目を伏せている沢ちゃんに声をかけられないでいると、
隣からガシャンと強めにグラスが叩きつけられる音が響いた。
「やりたくねぇなら、辞めちまえ!」
「そんな、親父。簡単に言うなよ!」
「…元々俺は反対だったんだ!うちの果樹園を継がねぇで、ソムリエなんつーやわっこい商売始めやがって。」
「親父さん、それは…。」
止める間もなく、二人はヒートアップしていく。
「いいか!?てめーなんざ一人辞めようが、都会のレストランなんざ屁でもねぇんだ!!」
「なんだと!?」
「だが、てめーがいなくなったら、俺たちはどうする!?」
「継ぐ奴なんか、」
「馬鹿野郎!一人息子を亡くして親が無事で済むと思うな!」
しん、と静まりかえる。
カチカチと柱時計が響く中、隣の台所からおれたちのお茶を用意してくれたお袋さんがクスクスと笑いながら入ってきた。
「お父さん、公平が心配だってはっきり言ってやんなさいな。」
「母さん!?」
「あと、公平がうちを継ぐときにワインのこともやれるようにワイン用のブドウを育ててるのもね。」
「な!?親父…そうなのか?」
るせぇ、日本のブドウは食っても飲んでも世界一なんだよ。と親父さんは今朝の沢ちゃんの様に顔を赤くしそっぽを向いていた。
親子、そっくり。
親父、なぁ親父と詰め寄る沢ちゃんと、それから逃げ回る親父さん。
俺とお袋さんの笑い声は満天の星空に吸い込まれていった。
「沢ちゃん、良かったの?」
おれと一緒に帰ってきちゃって。
最寄り駅で確実に行きより荷物が増えている鞄を抱え、沢ちゃんにそう問いた。
沢ちゃんは振り返り、その際カバンから飛び出た極太の自然薯を落とさないように抑えながら頷いた。
「あぁ、一先ず職場にも時期を相談しないと。」
「そっか。」
「農業については不勉強だから、また一から勉強し直しですよ。」
やれやれといった風に呟いた沢ちゃんだが、その顔は明らかに行きより晴れやかだった。
よかった。元気になって。
俺は鞄から飛び出たジュースの瓶を手で包むように支え、沢ちゃんと別れを告げた。
将来は親父さんのブドウで国産のワインを作るのだそうだ。
飲むのが楽しみだなぁ。
余りにもお土産を持たされた俺は、日頃の感謝も込めて先輩たちへ差し入れしようと、その足で毛利探偵事務所を訪ねた。
すると、階段から一人の男性が降りてくるのが見えた。
「あれ?毛利探偵へご用ですか?」
「え、ええ。貴方も?」
「はい、挨拶をしようと思ったのですが、留守みたいで…。」
もしかしたら、下のカフェにいるかもしれませんよ。と男性を連れてポアロへ入る。
お昼時を過ぎたカフェはちょうど人が捌けたところらしく、梓ちゃんがコップを磨いているところだった。
「梓ちゃん、こんにちは。今日、毛利先輩見なかった?」
「あ!藤峰先生!こんにちは!毛利さんですか?今日は来てませんね。」
あ、でも今朝ご機嫌でラフな格好で出て行かれるの見ましたよ!
梓ちゃんはおれたちにお冷やを出しながら、そう答えた。
アイスコーヒーを二つ頼み、お冷やを飲む。
恐る恐る声がかかる。
「あの…。」
「あっ、ごめんなさい。もしやお急ぎでしたか?」
「急ぎではありませんが…。」
「毛利先輩のことだから、競馬か麻雀かもしれません。」
その場合、連絡しても繋がらないので、大人しく待つしかないんです。
お冷やのお代わりを注ぎながら、おれはしみじみ呟いた。
「おれ、藤峰幸一といいます。貴方は?」
「む、村上丈です…。」
村上!?
…知らないなぁ。
へー、とアイスコーヒーに入れたミルクを勢いよくかき回していると、伺うような視線を感じた。
「藤峰さんはあの、毛利さんとは…?」
「あぁ、学校の先輩後輩ですね。中高同じで。あ、中学だけ同じ柔道部だったんですよ。」
「そうだったんですね!俺も少し習ってました。」
「へぇ、奇遇ですね!」
話に花を咲かせていたが、気が付くと夕飯時になってしまっていた。
すみません、お忙しいところ、と話を切り上げようとすると、いえ、忙しく、ないんです。と返された。
「仕事を探しているところでして…。」
「前、ディーラーさんでしたっけ?」
「えぇ…。」
あ。と手を打つ。
おれの友人にプールバーを経営している人がいまして、最近人手が欲しいと言っていたので紹介しましょうか…?
おれの提案にえ…と村上さんは声をもらした。
「でも、おれは過去に…。」
「おれも一緒に説明しますから。いい職場だと思いますよ。」
おれの行きつけにしようとしてるので、その時はよろしくお願いしますね。
そう言ってウインクすると、村上さんが下を向いてありがとうございます…。と声を震わせて言った。
沢ちゃんから届いたワインを持って、村ちゃんが働くプールバーへ遊びに行くとはそう遠くない未来。
おまけ/if原作通りなら
「1の数字が入っている、俺の知り合いと言やぁ…」
「「幸一(さん)!?」」
マンションの番号を打つが、応答がない。
携帯も電源が入っておらず、小五郎は思わず舌打ちをした。
大家に玄関を開けて貰い、突入すると、そこには。
力なく倒れる幸一。
全員が急いで駆け寄る。
救急車を呼ぼうとした、その時。
「ぐぅー」
心地よさそうな寝息と、充電器にさそうとしてそのまま握られている携帯がそこに存在していた。
寝落ちしました。叩き起こされた幸一は寝ぼけ眼でそう証言した。
そして海上レストランへ―
なーんか、聞いたことあるようなタイトルなんだよなぁ。
今回の仕事はライトノベルの挿絵。
人気作家さんとのことで、どうしてもおれに頼みたいと作者が出版に押しきったらしい。
仕事の報酬や条件も悪くないし、もしかしたらアニメ化などの映像化になれば更に仕事にも繋がるので受けることにした。
資料の為、渡された小説を読み切ったおれはタイトルを再度確認する。
思ったより果樹園の描写が多かったな…。
自然描写がリアルにそして豊かに表現されているのが凄く魅力的な文章だった、是非ここをアピールしたい。
取材、しに行くか…!
おれは農家に関係する人がいるか、自身の電話帳から探し、一人の男に電話をかけた。
「作家先生!こげな遠いところまでよぉ来なすった!」
駅前で待っていた女性は俺たちを見て、大声で話し掛けながら駆け寄ってきた。
手ぬぐいで汗を拭う様子に、待たせてしまったかと隣を見たが、
早く来てただけだろう、昔から心配性なんだと恥ずかしげに言った。
「こちらこそ、突然の依頼に対応戴きありがとうございます。」
こちら、お土産です。紙袋を手渡すと、顔を輝かせておれの両手を掴んでぶんぶん振りながらお礼を言ってきた。
隣を見ると、昔からオーバーで、とさっきと同じ様な対応。
勢いに押され途切れ途切れに挨拶をした後、早速果樹園へ向かうことになった。
「にしても、うちの果樹園は作家先生のお眼鏡にかなうかやー?」
「写真で既に見させてもらいましたよ。素敵です。」
やんだ、素敵だなんて。こんなおばちゃんに言うもんでねぇや!
お袋のことじゃねぇで!前!前見ろ!
ぎゅぎゅっとタイヤ音を鳴らしながら、車はセンターラインから定位置へ戻った。
対向車がいないといっても、用水路に落ちたら大変だもんね。
ところで。隣でうっかりいつも使わない方言と「お袋」呼びを、成人してからの友人に見られて、えも言われぬ恥ずかしさで車の窓ガラスに頭を打ち付けている友人に何と声をかけたらよいものか…。
居たたまれない雰囲気のまま、おれたちは地元のFMのナンバーを聞いていた。
「お父さん!二人が来たよて!」
「…おう。帰ぇってきたか、公平。」
「だで。お帰り、公平。」
「ただいま、親父。お袋。」
照れくさそうに頬をかきながら、おれの友人沢木公平は久しぶりに実家の敷居を跨いだのであった。
その後。果樹園を見学したり、周りの山道を地元の人に案内して貰ったり、そのまま皆で宴会するなど、
大変賑やかに一日を過ごしたおれたちは、沢木家に戻り、居間で飲み直していた。
テレビではモデルが事故で入院したとニュースが流れていた。
地酒をあおり、揃ってぷはーと息を吐く。
「いいところだね。」
「騒がしいだけですよ。」
「でも、今日は楽しそう。」
最近、何か疲れてるみたいだったから。
カタリとコップを置いて、沢ちゃんは息を吐いた。
仕事、辞めようと思って。
そう切り出した沢ちゃんの話によると、好きで始めたソムリエの仕事だったが、ストレスも多く、近頃ワインの知識がなく高圧的な依頼人の元で仕事をするよう打診されているとのこと。
「いつかは自身の店を持ちたいと思っていたけど、本当にこのままでいいのかな、と。」
「沢ちゃん…。」
手を弄りながら、目を伏せている沢ちゃんに声をかけられないでいると、
隣からガシャンと強めにグラスが叩きつけられる音が響いた。
「やりたくねぇなら、辞めちまえ!」
「そんな、親父。簡単に言うなよ!」
「…元々俺は反対だったんだ!うちの果樹園を継がねぇで、ソムリエなんつーやわっこい商売始めやがって。」
「親父さん、それは…。」
止める間もなく、二人はヒートアップしていく。
「いいか!?てめーなんざ一人辞めようが、都会のレストランなんざ屁でもねぇんだ!!」
「なんだと!?」
「だが、てめーがいなくなったら、俺たちはどうする!?」
「継ぐ奴なんか、」
「馬鹿野郎!一人息子を亡くして親が無事で済むと思うな!」
しん、と静まりかえる。
カチカチと柱時計が響く中、隣の台所からおれたちのお茶を用意してくれたお袋さんがクスクスと笑いながら入ってきた。
「お父さん、公平が心配だってはっきり言ってやんなさいな。」
「母さん!?」
「あと、公平がうちを継ぐときにワインのこともやれるようにワイン用のブドウを育ててるのもね。」
「な!?親父…そうなのか?」
るせぇ、日本のブドウは食っても飲んでも世界一なんだよ。と親父さんは今朝の沢ちゃんの様に顔を赤くしそっぽを向いていた。
親子、そっくり。
親父、なぁ親父と詰め寄る沢ちゃんと、それから逃げ回る親父さん。
俺とお袋さんの笑い声は満天の星空に吸い込まれていった。
「沢ちゃん、良かったの?」
おれと一緒に帰ってきちゃって。
最寄り駅で確実に行きより荷物が増えている鞄を抱え、沢ちゃんにそう問いた。
沢ちゃんは振り返り、その際カバンから飛び出た極太の自然薯を落とさないように抑えながら頷いた。
「あぁ、一先ず職場にも時期を相談しないと。」
「そっか。」
「農業については不勉強だから、また一から勉強し直しですよ。」
やれやれといった風に呟いた沢ちゃんだが、その顔は明らかに行きより晴れやかだった。
よかった。元気になって。
俺は鞄から飛び出たジュースの瓶を手で包むように支え、沢ちゃんと別れを告げた。
将来は親父さんのブドウで国産のワインを作るのだそうだ。
飲むのが楽しみだなぁ。
余りにもお土産を持たされた俺は、日頃の感謝も込めて先輩たちへ差し入れしようと、その足で毛利探偵事務所を訪ねた。
すると、階段から一人の男性が降りてくるのが見えた。
「あれ?毛利探偵へご用ですか?」
「え、ええ。貴方も?」
「はい、挨拶をしようと思ったのですが、留守みたいで…。」
もしかしたら、下のカフェにいるかもしれませんよ。と男性を連れてポアロへ入る。
お昼時を過ぎたカフェはちょうど人が捌けたところらしく、梓ちゃんがコップを磨いているところだった。
「梓ちゃん、こんにちは。今日、毛利先輩見なかった?」
「あ!藤峰先生!こんにちは!毛利さんですか?今日は来てませんね。」
あ、でも今朝ご機嫌でラフな格好で出て行かれるの見ましたよ!
梓ちゃんはおれたちにお冷やを出しながら、そう答えた。
アイスコーヒーを二つ頼み、お冷やを飲む。
恐る恐る声がかかる。
「あの…。」
「あっ、ごめんなさい。もしやお急ぎでしたか?」
「急ぎではありませんが…。」
「毛利先輩のことだから、競馬か麻雀かもしれません。」
その場合、連絡しても繋がらないので、大人しく待つしかないんです。
お冷やのお代わりを注ぎながら、おれはしみじみ呟いた。
「おれ、藤峰幸一といいます。貴方は?」
「む、村上丈です…。」
村上!?
…知らないなぁ。
へー、とアイスコーヒーに入れたミルクを勢いよくかき回していると、伺うような視線を感じた。
「藤峰さんはあの、毛利さんとは…?」
「あぁ、学校の先輩後輩ですね。中高同じで。あ、中学だけ同じ柔道部だったんですよ。」
「そうだったんですね!俺も少し習ってました。」
「へぇ、奇遇ですね!」
話に花を咲かせていたが、気が付くと夕飯時になってしまっていた。
すみません、お忙しいところ、と話を切り上げようとすると、いえ、忙しく、ないんです。と返された。
「仕事を探しているところでして…。」
「前、ディーラーさんでしたっけ?」
「えぇ…。」
あ。と手を打つ。
おれの友人にプールバーを経営している人がいまして、最近人手が欲しいと言っていたので紹介しましょうか…?
おれの提案にえ…と村上さんは声をもらした。
「でも、おれは過去に…。」
「おれも一緒に説明しますから。いい職場だと思いますよ。」
おれの行きつけにしようとしてるので、その時はよろしくお願いしますね。
そう言ってウインクすると、村上さんが下を向いてありがとうございます…。と声を震わせて言った。
沢ちゃんから届いたワインを持って、村ちゃんが働くプールバーへ遊びに行くとはそう遠くない未来。
おまけ/if原作通りなら
「1の数字が入っている、俺の知り合いと言やぁ…」
「「幸一(さん)!?」」
マンションの番号を打つが、応答がない。
携帯も電源が入っておらず、小五郎は思わず舌打ちをした。
大家に玄関を開けて貰い、突入すると、そこには。
力なく倒れる幸一。
全員が急いで駆け寄る。
救急車を呼ぼうとした、その時。
「ぐぅー」
心地よさそうな寝息と、充電器にさそうとしてそのまま握られている携帯がそこに存在していた。
寝落ちしました。叩き起こされた幸一は寝ぼけ眼でそう証言した。
そして海上レストランへ―