【探偵】その絵本作家は純朴である
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「あれ?二人とも?どうしてここに?」
舌先三寸で言い合いをしていた二人は、その聞き覚えのある声にギクリと肩を揺らした。
おそるおそる振り返えると、お土産を大きく抱えた大人が立っていた。
なんで、ここ、シンガポールに、幸一さんがいるんだよォ!!
探偵と怪盗、その時二人の心の声は正しく揃ったのであった。
「うん?あれ?コナ」
「違う!僕、コナンじゃないから!!」
遠く日本の地から離れ、飛行機でざっくり盛って約8時間。
時差たったの一時間のこの国で、まさか見知った顔に会うとは思わなかったなぁ。
いつから観光してたのか日に焼けた様子のコナン君に声をかけると、食い気味で否定された。
え?何?そういう設定?
快斗くんの方を見ると、余計なことを言うなよ、と言いたげな顔をしていた。失礼な、そんなに失言する…タイプかもしれないなぁ。
そもそも快斗くん、変装中だから、名前を言わないように気を付けないと…。
「そうなの?じゃあ、コナン君じゃない子、と、えっと、あと、新一くんはどうしてここに?」
「ぼ、僕は地元の子どもなんだ!!」
あ、そういう設定ね。分かった。
うんうん、と頷いていると二人が後ろを向いて何かを話している様子。
おい、名探偵。なんでここに幸一さんがいるんだよ。
バーロ、俺の方が知るわけねーだろ。調べとけよ、大怪盗。
まさか会うとは思わねぇだろうが。割と家に隠ってるタイプじゃねーか。
確かにな。
新一くん?と声をかけると、1000%な爽やかスマイルで振り向いた。
俺、今までそんな新一くん見たことないけど、大丈夫?既にバレてない?
今回、園子ちゃんの彼氏である京極真さんの試合を観に来たのだと、新一くんは町の街灯に貼られているポスターを指さして教えてくれた。
なるほどねぇ!園子ちゃんの彼氏さん、空手の選手なんだぁ。
独り言のようなつぶやきに後ろから声がかかった。
「そうよ!400戦無敗でとっても強いんだから!」
「おわ、園子ちゃん?!蘭ちゃん!?」
「って、幸一おじさまじゃない!奇遇ね!ね、蘭!」
「本当!びっくりしちゃった!って、あれ?コ、コナン君まで!?」
「更にびっくりだろー?コイツ、現地の子どもなんだけどさ。そっくりだよなぁ。」
「ほんと、そっくりじゃない!」
「僕、お名前は?日本語分かるかな?」
僕はアーサー・平井だ!!!!と、アーサーくんのある意味緊張ぎみな挨拶に、蘭ちゃんも園子ちゃんも違和感を感じることはなかったようだ。
よろしくー、と挨拶を交わしていると、園子がところでと話し掛けてきた。
そういえばどうして幸一おじさまがここにいるの?
おれは、スマホの写真を見せた。
「おれ、ユニバーサルワールド行ってたんだー。」
「一人で?」
「いや?昨日、友達の寺井さんと行ってさー。今は仕事らしくて、別れて一人で自由行動中!」
「じ!!????」
じ???
大きい声を出したかと思うと、あ、電話だーと若干棒読みで新一くんがおれたちから離れていった。
(なんでいわねーんだよ!!!じいちゃん!!)
(野暮用で先に向かうとお伝えしておいたはずですぞ?)
(普通に準備のためかと思ってたわ!)
(お土産買ってありますから、安心して下さい。)
(ありがとう。って、ちげーー!!!)
何やら揉めている新一くんを横目に、蘭ちゃんたちへ話し掛ける。
新一くんたち、試合見るんだよね?俺も行ってもいい?
おれの発言に食い気味で、是非真さんの試合見ていって!!!ちょーー格好いいところ!!と張り切る園子ちゃん。
しかし、何かを見つけたのかおれたちに一声かけた後、マーライオンの方へ向かっていった。
元気だなぁと、しばし見送った後、話を戻す。
「ところで幸一さん、予定は大丈夫なのか?」
「うん。メインはユニワで、あとはメイン観光地ぶらぶらする予定だったから。」
「じゃあ、私たちと一緒に試合の合間に観光したら良いんじゃない?お父さんもお酒飲む相手いなくて寂しそうだったし!」
「え、あ、そっか。先輩いるのか。」
そっかそっかと辺りを見回すと、木陰でぐったりしている先輩を見つけた。
あっ!!せんぱーーーーい!!!!奇遇ですね!!!!!と駆け寄りながら叫ぶ。
先輩は俺を視界に入れて、大声の主に睨もうとしていた目を落っことしそうなぐらい開いて仰け反った。
「うるせぇ!!って、幸一!?てめぇ、何でここに!?」
「旅行に決まってるじゃないですか!」
へへ、聞きましたよ?飲む相手いないなら、良い店探しておきますから、晩に一緒に行きましょうよ!
先輩へ悪代官に話し掛けるように言うと、目の色が変わり、
しょうがねぇなぁ、そうしたら、こう、地元のがグイッといきたいねぇ!と乗ってくれた。
だーはっはっは、とご機嫌になった先輩に太鼓持ちの如く扇で風を送っていると、ザワザワと周辺の色んな声が大きくなっていたのに気が付いた。
何かあったかと皆の視線の方向を見ると、園子ちゃんが大人に絡まれていた。
大変!と慌てて駆け寄ろうとしたが、先輩に腕を捕まれて阻まれた。
隣では同じように蘭ちゃんが新一くんに止められている。
「待て待て、大丈夫だ。今行くと、こっえー馬に蹴られるぞ。」
「へ?」
先輩の言葉に首をかしげると同時に悲鳴が聞こえた。
想像とは違う、大人の男性の悲鳴が。
「園子!!大丈夫??」
「怪我してないかい??」
「大丈夫!真さんが助けてくれたから!!」
騒ぎが収まり、蘭ちゃんと一緒に園子ちゃんの元へ駆け寄る。
幸い怪我がないようで良かった。
園子ちゃんの隣には新ちゃんや先輩とはまた違った、体格の良い青年が園子ちゃんを護るように立っていた。
「皆さん、シンガポールまでありがとうございます。
あれ?あなた方は?」
「俺は工藤新一です。二人とは同じクラスで。」
「そうでしたか、俺は京極真です。はるばる、ありがとうございま…ん?」
「どうしたの真さん?」
「いや、彼とは初めて会った気がしなくて。」
ぎっくーーーー!!!という効果音が隣から聞こえた気がした。
いやぁ、気のせいなんじゃないですか???気のせい気のせい。と繰り返し言う新一くんに、
?そうですか?と未だに違和感を感じているのか、京極さんは不思議そうに首をかしげていた。
そんな彼に声をかけながら、手を差し出す。
「俺は藤峰幸一です。毛利小五郎さんの後輩で、工藤新一くんの親戚です。偶然にも旅行のタイミングが合ったみたいで。」
「それは偶然ですね。」
「ええ本当に。京極真選手、ですよね。お話はこの子たちから聞きました。とっても強くて格好いいと。」
「いやいや、そんな選手だなんて。好きなように呼んで下さい。」
「そうですか?あぁ、あと、この子は地元の子でアーサー・平井くんです。今、ご両親が日本にいるそうで、良かったら一緒に京極くんの試合を観に行かないかと、俺もアーサーくんも誘われていたところですよ!」
実は、試合の件でちょっと…。
申し訳なさそうに京極くんは、京極くんに出場を依頼しスポンサーしていた方が亡くなってしまった為、出場できない事態になっていることをおれたちに告げた。
が。
園子ちゃんの機転で、鈴木財閥が京極くんのパトロンになることで無事出場が決まった!
なんとかなったねと、皆でホテル(おれも偶然にも同じホテルだった!すごい!)に向かおうとすると、一人の青年に声をかけられた。
なんだかんだあって、先輩たちは実業家さんに会いに行くことになったのだが…。
「あの、そのお家って私も行って大丈夫なのかな?殆ど関係者じゃないのですが…。」
「ええ、先程確認をとったら、是非天下の作家先生にも来ていただきたいと!見てほしいものがあるそうです!」
「そんな天下だなんて、恐れ多い…!」
でも付いていって良いなら行こうかな。
…僕、藤峰先生の絵本読んでまして…あとでサインをいただいても?
そう、おそるおそる伺ってきた青年、リシ君に二つ返事で了承した。
海外でも読んでくれているなんて、嬉しいことだよね。
「どうですか、藤峰幸一先生。私の完璧な計画図案は。」
素晴らしいですね、と呟いた先にはレオンさんが想い描くシンガポールの都市計画図が貼られていた。
おれの言葉に満足げに頷くレオンさんだが、おれの目を見て「何か言いたいことがありそうですね」と問い詰めてきた。
おお、流石心理学者さん。
「素人目から言わせて貰うと、…ちょっと理想的すぎかなぁ、なんて。」
「どういう意味です?」
「もっと空白?自由なところがあってもよいと思うんです。今の東地区のような。」
「あそこは雑多な建物が多い。」
「それが、おれにとっては自由ですよ。おれからしたら、この国は複数の色が集まってできていますから、一色に塗り替えるのは大変でしょうね。」
そうですか、御忠告痛み入ります。とレオンさんは重々しく言ったものだから、
あ、いえ!そんな!忠告だなんて!唯の絵本作家の戯れ言ですよ。と慌てて否定するおれだったが、レオンさんはうっすらと笑うばかりであった。
「いやー!!やっぱりシンガポールといえばシンガポールスリングだよなぁ!」
「本当!美味しいですね、先輩!」
ご機嫌に酒をあおる先輩に、気を取り直してニコニコと笑いかける。
先輩はおれの赤い顔を指さして、でも、おめー酒強くねぇんだから、ほどほどで帰れよな。潰れても連れて帰ってやらねぇぞ。と怖がらせてきた。
分かってますって、自分の足で帰りますよ。なんて言っていると、後ろから声をかけられた。
「あの、毛利探偵…!ご一緒しても?」
「あれ?貴女は?確か…」
きゃっ!!
どわぁ!!!
…名前を思い出す前にびっちゃびっちゃになった先輩をどうにかする方が先だな。
店員さんにタオルを貰って戻ってくると、お嬢さんが出口へ駆けていくところだった。
どうしたんですか?と声をかけながら先輩にタオルを渡す。
先輩もよく状況が読めていないようだったが、どうやら先輩宛に電話が来たとのこと。
ちょっと行ってくるわ。と先輩がいなくなった足元に鍵が落ちているのが見えた。
どこかの言語で書かれた鍵は先輩のホテルの鍵じゃなさそうだ。
お嬢さんのお家のかも、まだ近くにいるはず。
おれは店から出て、辺りを見回す。
夜遅い街は人通りも少ない。
その時、女性の怒鳴るような声が聞こえ、そちらへ向かった。
角を曲がると誰もいない。
先程、ふと聞こえた英単語は確か
「Pirates?」
そう呟いたとき、後ろから強い衝撃を受け、前につんのめる。
目の前には下り階段。
受身をとろうにも間に合わず、ガラガラと近くにあったゴミ箱を盛大にひっくり返しながら転がり落ちた。
「いっ…」
擦り傷や打ち身で全身が刺さるように痛い。
かすむ目でなんとかスマホで連絡をとろうとしたが、途中でおれは意識を失った。
俺とキッドは何故か同じホテルの部屋へ戻り、共に睡眠をとるはめになっていた。
こんにゃろ、ご丁寧に変装したまま寝やがって。
毛根へのダメージの影響が早く出ちまえと、ホームズに願っていると、コール音が鳴り響いた。
軽くいびきをかいていたキッドは、寝ぼけながら電話に出る。
おい、地声(?)が出かかってるぞ。ちゃんと俺(新一)の声で話せと腹を軽くパンチしようとした。
「は?」
一瞬で目をさましたキッドは、はい…はい、と何度か神妙に頷いて電話を切った。
何かあったのか、と声をかける前にキッドは真剣な眼差しで俺の方へ向いた。
「幸一さんが階段から落とされた。」
「なっ!?」
落とされただって?!と詰め寄る俺に、キッドは話を続けた。
おっちゃんとBarに行っていたのは名探偵も知ってるな?
おっちゃんが電話で席を外している間に、店から出て少し離れたところの階段下で倒れていたそうだ。
「それで、幸一さんは無事なのか!?」
「あぁ、意識は戻ってはいないが、命に別状はないらしい。」
「そうか、よかった…。」
安堵の息を吐く俺に、キッドが苦々しげに告げる。
…ここまでがいい知らせだ。
その言葉に思わず眉間に力が入る。
さて、悪い知らせだ。そう言ってキッドは二本指を立てた。
「一つは、落とされた後、幸一さんがメモに「かい」と文字を残していたこと。
もう一つは、そのメモからリシさんたちはこれが事件と判断し、目星を付けた犯人が、俺【怪(かい)】盗キッドだということだ。」
「な!?」
完全に犯人の術中に嵌まっていることに気が付いたのは、翌日の昼、キッドが警備員を引き連れ飛び去った後であった。
「はーあ、新一もお父さんもいないし。折角のショーを一人で見なきゃなんないじゃない!」
「じゃあ、おれとご一緒しない?」
病院で目が覚めた後、おれは特に後遺症とかの問題も無く、怪我も大したことないと分かり、
傷口にしみる消毒と体中に絆創膏を貼られ、安静にするように、とホテルに戻ってきていた。
え?もっとシリアス続くと思った??ないよ???
夜のショーに間に合いそうだったので、上に上がってくると、ちょうど一人の蘭ちゃんがいたので声をかけたのだが…。
幸一おじさん!?と、蘭ちゃんはおれの怪我を見て目を見開いた。
あ、もしかして先輩、蘭ちゃんには言ってなかったのか。しまった。
あー、えー、とどう誤魔化したものかと唸っていると、蘭ちゃんがふぅと息を吐いた。
「お父さんから聞いたわよ!酔っ払って階段から落ちたって!」
大きな怪我がないようでなによりだけど、当分お酒は禁止ね!
目を吊り上げて蘭ちゃんはぷりぷりとそう言った。
あ、そういう。先輩の説明に全乗っかりすることにしたおれは、たはは面目ないと頬をかく。
「あ、始まったみたい!」
「おおー!」
ホテルだけではなく、その後ろにあるガーデンズ・バイ・ザ・ウェイも色とりどりの光に輝いた。
音楽に合わせ、光と水が織りなすショーに心打たれていたおれたちは、電話のマナーモード音に全く気付かなかった。
そして、事件は起きる。
ドオオオン
地響きがホテルの最上階まで響いた。
ショーを見ていた人々は、先程までなかった巨大な船舶がこちらに向かって突進してきていることに気がついた。
這う這うのていで蘭ちゃんと下に降りた時、やっと蘭ちゃんがずっとかけ続けていたコール音がきれた。
「んだぁ?蘭?」
「お父さん!!今どこにいるの?!」
「どこって…でけぇ船が見えるところだなぁ!」
ご機嫌な先輩の説明におれたちは血の気が引くのが分かった。
…もしかして屋上!?!?
蘭ちゃんとおれが屋上に戻ると、先輩がいた。
今回のテロの犯人もいた。
更に真の犯人もいた。
なんならおまけに海賊もいた。
「ぅそ…!おれの周り悪い人いすぎぃ!?」
「幸一おじさん!怪我してるんだから無理しないで!」
「人手は足りねぇから無理せず無茶しろ!」
「先輩どっちなんですか!?」
蘭ちゃんと先輩とともに海賊どもを蹴散らす。
まぁ殆ど二人がやってくれてるんですけどね!
昔取った杵柄といえども、プロの犯罪者と元警察官と空手有段者と、ただの絵本作家を比べないで下さい!!!!
ぼくは普通なんですよ!!!って、
「あーーーーーー!!!!階段で突き飛ばしてきた海賊!!!!」
「んだと???あー、あのどんくさッウボア!!」
「絶許!!!!」
おれはひじょーーーにどんくさいので、一気に間合いを詰めて、ひじょーーーにどんくさくぶん投げる。
リベンチマッチだ、このやろ!!!
あんだけ勢いよく頭からプールに突っ込んでおけば、暫くは動けねぇだろ。
ふふん!と満足げに眺めていると、ドカンと床が揺れ、視界が歪む。
いや、「傾いている」…?!
爆発によって、マリーナベイの屋上エリアがまるごと滑り落ちている。
死ぬ!死ぬ!これは死ぬ!!!!
皆、戦いどころではなく、周りの手すりなどに必死に捕まっている。
おれも何かに掴まらなければ、と辺りを見渡すとリシ君が爆発の衝撃で壁にもたれたまま座り込んでいた。このままじゃ…!!
「リシくん!早く!!!」
「藤峰先生!?」
リシ君を抱え、近くの階段へ運ぶ。
リシ君に手すりを握らせたところで、また大きく爆発が起こった。
急な突風にあおられ、おれは手すりを掴み損ねた。
あっ
大人も風で飛ばされるんですね!!!????
「どわぁああ!!!」
「幸一!!!!」
「幸一さん!!!」
皆の声が遠くに聞こえる。
グッバイ人生。
来世はほのぼのライフをお願いします。
どんっと何かに捕まれる衝撃
モーターと布がバタバタと風に靡く音が耳に入る。
「ふーっ!あっぶねぇ、ぎりぎりだぜ。」
「か、がぃどぐん!!!!!!」
「いでで!!幸一さん!早くグライダー掴んでくれ!大人は腕じゃあ支えきれねぇよ!」
「ご、ごめん!!」
モーター改造してるやつで良かったぜ。
そう呟く快斗君におれは今度好きなだけ好きなものを買ってあげようと強く決意した。
あと、寺井さんにはあとで温泉旅行をプレゼントした。
「じゃあ、降ろすぞ。」
「快斗君、助けてくれてありがとう。」
「黙っててくれたお礼ですよ。」
また、満月の夜にでもお目にかかりましょう。
なんて、キザなことを言って快斗…キッドは去っていった。
満月って、三日後だけど、夜遊びに来るのかな?
「みんな!無事!?」
急いで皆が落ちた現場に向かうと、警察が犯人たちを連行しているところだった。
その中にいるリシ君が、おれの顔を見てくしゃりと表情を歪ませた。
「藤峰先生、あなたは何故オレを…。」
「え、っと、あのままだと危ないと思ったから…。」
「オレは犯罪者だったんですよ?」
「でも、目の前で危ないのを見過ごせなくて…何度時が戻っても、同じ事をすると思う。」
なーんて、格好つけても、俺自身が毎度危ない目に遭ってたら目も当てられないか!
ははは、と空笑いしていると、リシ君は目を見開き憑きものが落ちたような表情になった。
「あなたはオレの大好きだった人によく似ています。
だけど、似ていません。
だから、ずっと、お元気で。」
そう言って、懐かしむようにこちらに微笑み、リシ君はパトカーで連行されていった。
おれはその背中を見送ることしか出来なかった。
「新一はねぇ、お父さんのことを「おっちゃん」なんて呼ばないのよ!!!!」
腕捕まれてさっきまでにやけ顔をしていた新一くんことキッドは、蘭ちゃんにキッドとバレて、あわや逮捕かといったところで、警察の包囲網をくぐり抜け、華麗に消え去った。
蘭ちゃんはもーーー!と、掴んでいた偽物の腕を放り投げてこちらを見上げた。
「幸一おじさんも何で分かってたんでしょ?!」
「ぎ、ぎく。何で????」
「だって、いつも新一のことは「新ちゃん」って呼ぶじゃない。」
「…はっ!確かに!蘭ちゃん、名推理!!」
ぽんと手を打つと、はぁーやれやれとコナン君と蘭ちゃんは揃って溜め息を吐いた。
快斗くんと言わないように気を付けてたら、呼び方も変えてたみたい。
マジで気付かなかった…。
「っていうことがあってさーいででで!!!!???」
背中の湿布を貼り直して貰いながら、この間のシンガポール旅行について話したら、肩のツボをゴリゴリッと押された。
いてー、と半泣きで振り返ると、眉間にしわを寄せた二人がいた。
「あってさ、じゃない!!!何でこういっつも危ない方に首をつっこむんだアンタは!!」
「本当ですよ!!テロがあったシンガポールからやっと帰国してきたと思ったら、包帯だらけの貴方を見て血の気がひきました!!」
交互に叱る二人に耳を軽く抑えながら、距離をとる。
せめて先に連絡しておけば良かったなぁ。と呟くと、馬鹿ですか!?僕たち簡単に海外に行けないのに、貴方が帰国するまで心労で殺す気ですか!?キィー!と嘆かれた。
火に油だった。
ええ、じゃあ連絡しない。と言うと、何かあったんじゃないかって、気が気じゃないんだよなぁ。と、それはそれで嘆かれるのであった。
どうすりゃええねん…教えてコナン君!!
【入れられなかった台詞】
「どうですか、この国は生まれ変わる!!!何色でもない、私によって、赤色に!!!!」
「こんなこと、許されない。許せない。」
「貴方が余計な事(ゴミ箱をひっくり返し落ちたことによる騒音)をしてくれたおかげで、あの女を仕留めそこなりましたが。」
「じゃあ…!」
「幸一さん、安心して良いぜ。レイチェルさんは生きてる。」
「…よかった。」
レイチェルさんは生存している世界線です。
恐らく犯罪幇助の罪?はある。