【探偵】その絵本作家は純朴である
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カタリ、と筆を置いたおれは、身体の全てに力を込め、拳を突き上げる。
「おわったぁ!!!溜まってた仕事が全部終わっただなも!!」
おいでよ自由の森!!ハッピーホームライフ!!
ここ数日、缶詰状態で集中したお陰で、今月締め切り分の仕事が完了した。
担当さんにデータを送りながら、買っておいたゲームへ思いを馳せる。
ぐぅぅ
腹が減ってはゲームは出来ぬ。と冷蔵庫を開けたが、いくつか飲み物が入っているだけだった。
わはは、何にも入ってない。
流石に買いに行くか、とついでにゴミ袋を抱え扉を開ける。
太陽の光に目が眩んだかと思うと、言うことの聞かない身体。
おっと、これはマズいね。
次の瞬間には鈍い音を立てて、マンションの通路に寄りかかる様に崩れ落ちていた。
は、恥ずかしー!だ、誰にも見られてないよね?
「大丈夫ですか?!」
見られてたー!!
駆け寄ってきたイケメンを振り払う余裕も無く、おれは首を縦にふった。
イケメンはキリリと目を鋭くし、おれの脈や体温などを的確に測っている。
この青年……一般の方ではない!!!おれの勘は当たるんだ!!嘘です!!
「す、すみません。ちょっとふらついただけなので…。」
「それにしては少し脈が速いですね、意識ははっきりしているようですが。」
おれの持っているゴミを見て、疑い深げな表情になった青年。
あ、それ、よくコナン君がおれを叱る前にする表情…。
貴方、ここ数日間、ろくな食事取ってないですね?あと、いつ寝ました?
青年の問いかけに、何故か取り調べを受けているような感覚を受けつつ、おれは元気良く答えた。
「最後の食事は昨日の朝の蒟蒻ゼリー!その前の晩から寝てませんです!」
「ええ、寝不足と低血糖ですね。」
蒟蒻ゼリーは代替食品ではありません、と叱られながらおれは部屋のソファーに連行された。
ぼーっと手渡された水を飲んでいると、うちの冷蔵庫を開けて、嘘だろといった表情で何度も確認している青年が見える。
何度見ても、醤油一本すらないぜ。どうだ、驚いたか!
何故か得意げな顔をしているおれを、青年はさらに胡散臭そうに一瞥した後、少し強めに冷蔵庫の戸を閉めた。
「アレルギーはありますか?」
「いいえ。」
「好きな国は?」
「うーーん、やっぱり日本?良い国だよねぇ。」
「…今から100秒数えてください。はい、スタート。」
え?と思っている間に、青年の姿は消えていた。
さっきの質問は何だったんだろう…心理テストだったのかな?
きちんと100秒数えてるか、も心理テストかもしれない。
チラシで折り鶴を作りながら数えること80秒、青年は息を切らすこと無く食材と調味料を抱えて戻ってきた。早くね?
「あの、それは」
「今度は600秒。はい、スタート。」
「あっ、えっ、いーち!?にー?!」
有無を言わさぬこの青年。
恐れおののきながら様子を窺うと、おれの母さんでも見たことのないような動きで調理をしていた。
鶴を折る手を止め、思わず感心してしまう。
青年はシェフさんなのかもしれない。だから、不甲斐ない食生活のおれを見て見ぬふりができなかったのかもしれない。
「美味しそうな匂いがしてきたなぁ。」
「食器が置けないので、片しますよ。」
「あぁー。」
数えながら量産していた折り紙動物たちが、無慈悲にも青年によって撤収されてしまった。
森のくまさんたちが匂いにつられて出てきた的設定だったのにー。
ぶー垂れるおれを無視して、青年は箸を差し出した。
いくら荒んだ食生活のおれでも、よそ様が作った食事に簡単に手を出すわけないだろう!
「さぁ、温かいうちに召し上がれ。」
「やった!!ありがとう!いただきます!!!」
うちに残っていたおかずを再加熱しただけのもありますが…と青年が言っているが、おれはそれどころじゃあなかった。
え、まって、めっっちゃ美味い…。
噛みしめるように食べていると、まだおかわりもありますよ、と悪魔の囁きが聞こえた。決して悪には屈しないので、三杯おかわりした。
「ご馳走様でした!見ず知らずのおれにこんな美味いものをどうもありがとう。」
「お粗末さまです。初めてじゃないですよ、僕たち。」
やっぱり覚えてないんですね、と少し寂しげな表情を浮かべる青年。
食事中の自己紹介で名前を聞いたら、彼は安室透くん、と言うらしい。覚えがない…。
こんな恩義のある青年と、以前どこであった…?
え??いつだ??何か印象的な出来事といえば…うーーーん。
前のマンションの下の階が爆弾事件であわや警察のお兄さんと心中しかけた時?
病院でカチカチうっさい忘れ物を警察に引き渡した時?
朝、釣りに行こうとしたらすぐ近くでトラックが事故って、警察の人たちと人命救助にあたってた時?
「はぁ!?」
「あれ?おれ、警察とのイベント多すぎ…??」
「…ひ、非常に色々と聞きたいことがありますが、…その時ではありませんよ。」
ブツブツ言いながら思い出そうとするおれに、若干詰め寄りながら否定する安室くん。
違うかー。まぁ、結構前だし、おれは青年みたいな少年見かけなかったしなぁ。
あの時のトラックのドライバーさんとは今では一緒に海釣り行く仲なんだよね。縁って不思議だよねぇ。
「僕、一週間前に引っ越しの挨拶に行きましたよ?」
「………そうだった、か……なぁ~?」
そういえば、その時も徹夜明けで寝たばっかりだったんだけど、
チャイムで目が覚めて、寝ぼけたまま何か対応した気がするような、しないような。
「机の上にあったふわふわ今治タオルセットは、妖精さんの忘れ物じゃなかったのか。」
「僕からの挨拶代わりのギフトですね。」
ジトりとした目線から逃れるように、あははと誤魔化すようにおれは頬をかいた。
これに懲りたら、もう少しましな生活を心掛けて下さい。また、様子を見に来ますから、しっかりした大人を務めるように!
スマホを見たかと思うと、安室くんはそう言い残して、おれの持って行くはずだったゴミ袋と共に去っていった。
何か急ぎの用があったのかなぁ。申し訳なかったなぁ。ところで、
「また、来るんだ…。」
とりあえず、ゲームをする前に、借りた食器を洗って、冷蔵庫の中に山ほどタッパーに入った作り置き総菜のお礼でも考えようかな。
「おわったぁ!!!溜まってた仕事が全部終わっただなも!!」
おいでよ自由の森!!ハッピーホームライフ!!
ここ数日、缶詰状態で集中したお陰で、今月締め切り分の仕事が完了した。
担当さんにデータを送りながら、買っておいたゲームへ思いを馳せる。
ぐぅぅ
腹が減ってはゲームは出来ぬ。と冷蔵庫を開けたが、いくつか飲み物が入っているだけだった。
わはは、何にも入ってない。
流石に買いに行くか、とついでにゴミ袋を抱え扉を開ける。
太陽の光に目が眩んだかと思うと、言うことの聞かない身体。
おっと、これはマズいね。
次の瞬間には鈍い音を立てて、マンションの通路に寄りかかる様に崩れ落ちていた。
は、恥ずかしー!だ、誰にも見られてないよね?
「大丈夫ですか?!」
見られてたー!!
駆け寄ってきたイケメンを振り払う余裕も無く、おれは首を縦にふった。
イケメンはキリリと目を鋭くし、おれの脈や体温などを的確に測っている。
この青年……一般の方ではない!!!おれの勘は当たるんだ!!嘘です!!
「す、すみません。ちょっとふらついただけなので…。」
「それにしては少し脈が速いですね、意識ははっきりしているようですが。」
おれの持っているゴミを見て、疑い深げな表情になった青年。
あ、それ、よくコナン君がおれを叱る前にする表情…。
貴方、ここ数日間、ろくな食事取ってないですね?あと、いつ寝ました?
青年の問いかけに、何故か取り調べを受けているような感覚を受けつつ、おれは元気良く答えた。
「最後の食事は昨日の朝の蒟蒻ゼリー!その前の晩から寝てませんです!」
「ええ、寝不足と低血糖ですね。」
蒟蒻ゼリーは代替食品ではありません、と叱られながらおれは部屋のソファーに連行された。
ぼーっと手渡された水を飲んでいると、うちの冷蔵庫を開けて、嘘だろといった表情で何度も確認している青年が見える。
何度見ても、醤油一本すらないぜ。どうだ、驚いたか!
何故か得意げな顔をしているおれを、青年はさらに胡散臭そうに一瞥した後、少し強めに冷蔵庫の戸を閉めた。
「アレルギーはありますか?」
「いいえ。」
「好きな国は?」
「うーーん、やっぱり日本?良い国だよねぇ。」
「…今から100秒数えてください。はい、スタート。」
え?と思っている間に、青年の姿は消えていた。
さっきの質問は何だったんだろう…心理テストだったのかな?
きちんと100秒数えてるか、も心理テストかもしれない。
チラシで折り鶴を作りながら数えること80秒、青年は息を切らすこと無く食材と調味料を抱えて戻ってきた。早くね?
「あの、それは」
「今度は600秒。はい、スタート。」
「あっ、えっ、いーち!?にー?!」
有無を言わさぬこの青年。
恐れおののきながら様子を窺うと、おれの母さんでも見たことのないような動きで調理をしていた。
鶴を折る手を止め、思わず感心してしまう。
青年はシェフさんなのかもしれない。だから、不甲斐ない食生活のおれを見て見ぬふりができなかったのかもしれない。
「美味しそうな匂いがしてきたなぁ。」
「食器が置けないので、片しますよ。」
「あぁー。」
数えながら量産していた折り紙動物たちが、無慈悲にも青年によって撤収されてしまった。
森のくまさんたちが匂いにつられて出てきた的設定だったのにー。
ぶー垂れるおれを無視して、青年は箸を差し出した。
いくら荒んだ食生活のおれでも、よそ様が作った食事に簡単に手を出すわけないだろう!
「さぁ、温かいうちに召し上がれ。」
「やった!!ありがとう!いただきます!!!」
うちに残っていたおかずを再加熱しただけのもありますが…と青年が言っているが、おれはそれどころじゃあなかった。
え、まって、めっっちゃ美味い…。
噛みしめるように食べていると、まだおかわりもありますよ、と悪魔の囁きが聞こえた。決して悪には屈しないので、三杯おかわりした。
「ご馳走様でした!見ず知らずのおれにこんな美味いものをどうもありがとう。」
「お粗末さまです。初めてじゃないですよ、僕たち。」
やっぱり覚えてないんですね、と少し寂しげな表情を浮かべる青年。
食事中の自己紹介で名前を聞いたら、彼は安室透くん、と言うらしい。覚えがない…。
こんな恩義のある青年と、以前どこであった…?
え??いつだ??何か印象的な出来事といえば…うーーーん。
前のマンションの下の階が爆弾事件であわや警察のお兄さんと心中しかけた時?
病院でカチカチうっさい忘れ物を警察に引き渡した時?
朝、釣りに行こうとしたらすぐ近くでトラックが事故って、警察の人たちと人命救助にあたってた時?
「はぁ!?」
「あれ?おれ、警察とのイベント多すぎ…??」
「…ひ、非常に色々と聞きたいことがありますが、…その時ではありませんよ。」
ブツブツ言いながら思い出そうとするおれに、若干詰め寄りながら否定する安室くん。
違うかー。まぁ、結構前だし、おれは青年みたいな少年見かけなかったしなぁ。
あの時のトラックのドライバーさんとは今では一緒に海釣り行く仲なんだよね。縁って不思議だよねぇ。
「僕、一週間前に引っ越しの挨拶に行きましたよ?」
「………そうだった、か……なぁ~?」
そういえば、その時も徹夜明けで寝たばっかりだったんだけど、
チャイムで目が覚めて、寝ぼけたまま何か対応した気がするような、しないような。
「机の上にあったふわふわ今治タオルセットは、妖精さんの忘れ物じゃなかったのか。」
「僕からの挨拶代わりのギフトですね。」
ジトりとした目線から逃れるように、あははと誤魔化すようにおれは頬をかいた。
これに懲りたら、もう少しましな生活を心掛けて下さい。また、様子を見に来ますから、しっかりした大人を務めるように!
スマホを見たかと思うと、安室くんはそう言い残して、おれの持って行くはずだったゴミ袋と共に去っていった。
何か急ぎの用があったのかなぁ。申し訳なかったなぁ。ところで、
「また、来るんだ…。」
とりあえず、ゲームをする前に、借りた食器を洗って、冷蔵庫の中に山ほどタッパーに入った作り置き総菜のお礼でも考えようかな。