【探偵】その絵本作家は純朴である
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ピーンポーン
おれは何度目かの軽いチャイムの音で覚醒した。
むくりと起き上がると、読んでいた筈の資料がバサバサと腹の上から落ちる。
ベッド代わりのソファーから起きると、快晴の青空が広がっているのが窓から見えた。
カーテン、また閉め忘れたなぁ。
めくれ上がったTシャツと、ボサボサの頭を直しながら、携帯を探すが見当たらない。
「んあ…今、何時だ?」
「日曜の午前10時だよ、幸一さん。」
「どぅわ!?こ、コナン君!?」
肩を竦めて振り返ると、コナン君が小学生らしからぬジト目でこちらを見つめていた。いや、実際は高校生なんだけどさ。
荷物を見るに、蘭ちゃんからおかずを預かり、わざわざ届けに来てくれたようだ。
現役高校生…しかも部活で忙しいだろうに、こちらにまで気を配ってもらってまじで申し訳ない…。
受け取ったタッパーを冷蔵庫に入れつつ、コナン君にお礼を頼む。
「別に蘭も好きでやってるんだから、いいんじゃねーか?」
「そうだとしても、労力を割いて貰っていることには変わりないよ。」
そういうもんか?
そういうものだよ。
アイスコーヒーを飲みながら、ふーんとコナン君が呟いているのを見て、苦笑する。
蘭ちゃんにはしっかり手綱を握って貰わないといけなさそうだな…。
「ところで、幸一さん。誰かと同居でもし始めた?」
「えっ?なんで?」
「幸一さんの好みと違う物が増えてる。」
そうかなぁ。見回すと、確かにポツリポツリと自分が買ってない物が置いてある。
凄いな、流石名探偵。
感心して、よしよしと頭を撫でようとしたら避けられた。かなしい。
「で?同居してるの?」
「残念ながら、そういう人はいないよ。物は友達が置いてったやつだね。」
「ふーーん?」
納得していないご様子。
うーん、本当なんだけどな。
ピリリと電子音が鳴る。
おれのじゃない。
「コナン君、鳴ってるよ。」
「わーってるよ、…蘭からだ。」
もしもし。どうした?蘭?
コナン君から見た目とは異なる青年の声が出る。
いや、正確には博士が発明した変声機から。
彼の名前は江戸川コナン。本当は高校生探偵、工藤新一。
そしておれは、そんな名探偵のおじ(正確には従叔父)です。
職業は絵本作家。平和でいいよね?
コナン君の電話の様子を遠くから眺めていると、おれの携帯にも着信が。
見るとメールが1件。カラフルな絵文字や顔文字も付いているメールに目を細める。
送信を押し、携帯を仕舞うとコナン君がじっとこちらを見ていた。
何か良いことあった?何か楽しそうだけど?
謎を解明したくてしかたがない顔をしているコナン君の頭を一撫で。
「なーいしょ。」
真実はすべて明らかにしなくても、意外となんとかなるもんさ。
コナン君、いや新一君には納得できないだろうなぁ。
ま、おれはコナン君の味方だからね。
▼▼▼
「俺の協力者になってくれないか。」
あの日、おれをビルから救ってくれた男が家に訪ねてきて、そう言った。
違うのは髭を剃ってさっぱりしているところと、若干隈があるところだろうか。
男はお茶に目もくれず、真っ直ぐにおれを見つめている。
おれは自分で煎れたお茶をすすり、頷いた。
「いいよ。」
ガタリと音を立て、おれを見上げた男は信じられないといった表情。
しかも、普通聞くことが何かあるだろ!?、と詰め寄ってきた。
「んー、でもさ、悪い人の敵なんだろう?」
「そうっ…だけど!」
じゃあ、決定な。両手をパンと叩いた音は綺麗に響いた。
名前を聞くと、どうやら本名はやんごとなき事情で名乗れないとのことで、偽名を決めることになった。
現地で呼ばれていたスコッチも偽名らしい。
てっきりハーフとかでスコッチという名前だと思っていたけど、コードネームというやつらしい。
ここで気が付いたのだが、もしかして新ちゃんがいずれコナン君になってしまう原因の組織にスパイしてたのだろうか?
おれが協力するのはおれに出来る範囲なので、詳しい話はお互い話さないし聞かないことにする。
でも一応、それとなく新ちゃんの事を話して、コナン君にならないようにしたいな。
でも、コナン君になったのっていつ、どこだったっけ…。
もう、ほとんど、思い出せないんだよなぁ。
「幸一?」
「ん?あ、ごめん。名前どうしよっか?」
「俺は何でもいいぞ。」
何でも良いって、それが一番困っちゃうよね。
スコッチからなんか、こう、良い感じの名前決めたいなぁ~。
スコッチ、すこっち、すこ、…好こ!…好きはライクで、そうだ!
「ライ君というのはどうだろうか?!」
「却下で。」
食い気味に却下されたので、思わず不満げな顔をしてしまった。
聞くと、そういう名前のお酒もあるらしい。そりゃダメだわ。
二人でうーん、うーんと頭を悩ませて、らちがあかないのでやけくそ気味に決まったのが、
「高尾大志(たかおたいし)」
おれが落ちたビルの名前が高尾銀座第四ビルで、高尾(たかお)と第四(だいよん→たいし)で高尾大志。
人に呼ぶこともないけど、一応名前まで決めとけばええやろ!!
やけくそなんかじゃないやい!仕事で徹夜続きの二人の頭はもう限界とかじゃないやい!
その後、細かい打ち合わせを時計がてっぺんを回るまでやった後、解散した。
▼▼▼
「作家先生は恋人できなさそう。」
「喧嘩なら言い値で買おう。」
寝不足のところ呼び出された飲みの席で、不敬な松田ちゃんの発言に、おれは冗談半分でガタリと立ち上がった。
まーまー、と伊達ちゃんがおれの肩を抑えてきて、そんな様子を見てゲラゲラと萩ちゃんは笑いながらビールをあおっていた。
椅子を戻して座りながら、松田ちゃんにマイクの如く焼き鳥の先を向ける。
よい子はマネしたらダメな。
「松田ちゃん、どういうつもりかね?」
「だってよ、話を聞くとそうかなって。」
「…まぁ、確かに出会いはないけど。」
焼き鳥を貪りながら大人しく座り直す。
確かになぁ。やろうと思えば一日中引きこもったまま仕事も可能だしな。
出会いがないのは俺たちもじゃないか?という伊達ちゃんの発言に、結婚したお前が言うな!と声が揃った。
あんまりだわぁ、と泣き真似をし始めた萩ちゃんを松田ちゃんが慰めている。
その情景に笑いすぎて、出てきた涙をぬぐっていると、伊達ちゃんが横から携帯の画面を見せてきた。
「そうだ。このウェルカムボード描いてくれてありがとうな。」
「あ、うん。ごめんね、実際にお祝いしに行けなくて。」
「いや、こちらこそ、忙しいのに悪かったな。」
この伊達男の伊達ちゃんは、アメリカ一優しい(当社比)なナタリーさんと結婚している。
おれが伊達ちゃんと会ったのは事故の日、そしてプロポーズの日でもあった。
その後、なんやかんや両人共に友人として仲良くしていたのだが、結婚式はどうしても予定が合わず参加できなかった。無念。
せめてもの祝いということで、ウエルカムボードを贈呈したのであった。
「俺たちもだけど、アイツらはどうしてんだよ。」
「アイツら?」
「あー、俺たちは警察学校の同期なんだが、他に二人いるんだよ。」
へー、どんな人?
おれの軽い問いかけに三人が代わる代わる特徴を上げていく。
聞いていくにつれ、何やら、こう、既に知っているような気がする。
思わず頷いていたのを止め、考え込んでいると、胡乱げな目線で松田ちゃんが見てきた。
「作家先生、もしかして知ってんのか?」
「いや、うーーーん?」
「じゃあさ、この言葉を二人に似た人?に会ったら伝えてみてよ。」
「二人がミニスカポリスのコスプレをしている写真を貰ったんだけど。」
「言い値を払うからデータを寄こせ。」
「待て、ゼロ。落ち着け、罠だ。」
あ。やっぱり知り合いだったんだ。
しっかり口止めされたので、二人の話は伊達ちゃんたちにはひなかったのだが、
後日、飲み会で送り狼ならぬ送り家宅捜索だと乗り込まれた際に、うっかり高尾ちゃんが先に家にいたものだから、バッチリ見つかってしまい、
芋づる式に、というか、潜入捜査という名のカフェでバイトしているところも、バッチリ見つかってしまう二人なのであった。まる。
おれは何度目かの軽いチャイムの音で覚醒した。
むくりと起き上がると、読んでいた筈の資料がバサバサと腹の上から落ちる。
ベッド代わりのソファーから起きると、快晴の青空が広がっているのが窓から見えた。
カーテン、また閉め忘れたなぁ。
めくれ上がったTシャツと、ボサボサの頭を直しながら、携帯を探すが見当たらない。
「んあ…今、何時だ?」
「日曜の午前10時だよ、幸一さん。」
「どぅわ!?こ、コナン君!?」
肩を竦めて振り返ると、コナン君が小学生らしからぬジト目でこちらを見つめていた。いや、実際は高校生なんだけどさ。
荷物を見るに、蘭ちゃんからおかずを預かり、わざわざ届けに来てくれたようだ。
現役高校生…しかも部活で忙しいだろうに、こちらにまで気を配ってもらってまじで申し訳ない…。
受け取ったタッパーを冷蔵庫に入れつつ、コナン君にお礼を頼む。
「別に蘭も好きでやってるんだから、いいんじゃねーか?」
「そうだとしても、労力を割いて貰っていることには変わりないよ。」
そういうもんか?
そういうものだよ。
アイスコーヒーを飲みながら、ふーんとコナン君が呟いているのを見て、苦笑する。
蘭ちゃんにはしっかり手綱を握って貰わないといけなさそうだな…。
「ところで、幸一さん。誰かと同居でもし始めた?」
「えっ?なんで?」
「幸一さんの好みと違う物が増えてる。」
そうかなぁ。見回すと、確かにポツリポツリと自分が買ってない物が置いてある。
凄いな、流石名探偵。
感心して、よしよしと頭を撫でようとしたら避けられた。かなしい。
「で?同居してるの?」
「残念ながら、そういう人はいないよ。物は友達が置いてったやつだね。」
「ふーーん?」
納得していないご様子。
うーん、本当なんだけどな。
ピリリと電子音が鳴る。
おれのじゃない。
「コナン君、鳴ってるよ。」
「わーってるよ、…蘭からだ。」
もしもし。どうした?蘭?
コナン君から見た目とは異なる青年の声が出る。
いや、正確には博士が発明した変声機から。
彼の名前は江戸川コナン。本当は高校生探偵、工藤新一。
そしておれは、そんな名探偵のおじ(正確には従叔父)です。
職業は絵本作家。平和でいいよね?
コナン君の電話の様子を遠くから眺めていると、おれの携帯にも着信が。
見るとメールが1件。カラフルな絵文字や顔文字も付いているメールに目を細める。
送信を押し、携帯を仕舞うとコナン君がじっとこちらを見ていた。
何か良いことあった?何か楽しそうだけど?
謎を解明したくてしかたがない顔をしているコナン君の頭を一撫で。
「なーいしょ。」
真実はすべて明らかにしなくても、意外となんとかなるもんさ。
コナン君、いや新一君には納得できないだろうなぁ。
ま、おれはコナン君の味方だからね。
▼▼▼
「俺の協力者になってくれないか。」
あの日、おれをビルから救ってくれた男が家に訪ねてきて、そう言った。
違うのは髭を剃ってさっぱりしているところと、若干隈があるところだろうか。
男はお茶に目もくれず、真っ直ぐにおれを見つめている。
おれは自分で煎れたお茶をすすり、頷いた。
「いいよ。」
ガタリと音を立て、おれを見上げた男は信じられないといった表情。
しかも、普通聞くことが何かあるだろ!?、と詰め寄ってきた。
「んー、でもさ、悪い人の敵なんだろう?」
「そうっ…だけど!」
じゃあ、決定な。両手をパンと叩いた音は綺麗に響いた。
名前を聞くと、どうやら本名はやんごとなき事情で名乗れないとのことで、偽名を決めることになった。
現地で呼ばれていたスコッチも偽名らしい。
てっきりハーフとかでスコッチという名前だと思っていたけど、コードネームというやつらしい。
ここで気が付いたのだが、もしかして新ちゃんがいずれコナン君になってしまう原因の組織にスパイしてたのだろうか?
おれが協力するのはおれに出来る範囲なので、詳しい話はお互い話さないし聞かないことにする。
でも一応、それとなく新ちゃんの事を話して、コナン君にならないようにしたいな。
でも、コナン君になったのっていつ、どこだったっけ…。
もう、ほとんど、思い出せないんだよなぁ。
「幸一?」
「ん?あ、ごめん。名前どうしよっか?」
「俺は何でもいいぞ。」
何でも良いって、それが一番困っちゃうよね。
スコッチからなんか、こう、良い感じの名前決めたいなぁ~。
スコッチ、すこっち、すこ、…好こ!…好きはライクで、そうだ!
「ライ君というのはどうだろうか?!」
「却下で。」
食い気味に却下されたので、思わず不満げな顔をしてしまった。
聞くと、そういう名前のお酒もあるらしい。そりゃダメだわ。
二人でうーん、うーんと頭を悩ませて、らちがあかないのでやけくそ気味に決まったのが、
「高尾大志(たかおたいし)」
おれが落ちたビルの名前が高尾銀座第四ビルで、高尾(たかお)と第四(だいよん→たいし)で高尾大志。
人に呼ぶこともないけど、一応名前まで決めとけばええやろ!!
やけくそなんかじゃないやい!仕事で徹夜続きの二人の頭はもう限界とかじゃないやい!
その後、細かい打ち合わせを時計がてっぺんを回るまでやった後、解散した。
▼▼▼
「作家先生は恋人できなさそう。」
「喧嘩なら言い値で買おう。」
寝不足のところ呼び出された飲みの席で、不敬な松田ちゃんの発言に、おれは冗談半分でガタリと立ち上がった。
まーまー、と伊達ちゃんがおれの肩を抑えてきて、そんな様子を見てゲラゲラと萩ちゃんは笑いながらビールをあおっていた。
椅子を戻して座りながら、松田ちゃんにマイクの如く焼き鳥の先を向ける。
よい子はマネしたらダメな。
「松田ちゃん、どういうつもりかね?」
「だってよ、話を聞くとそうかなって。」
「…まぁ、確かに出会いはないけど。」
焼き鳥を貪りながら大人しく座り直す。
確かになぁ。やろうと思えば一日中引きこもったまま仕事も可能だしな。
出会いがないのは俺たちもじゃないか?という伊達ちゃんの発言に、結婚したお前が言うな!と声が揃った。
あんまりだわぁ、と泣き真似をし始めた萩ちゃんを松田ちゃんが慰めている。
その情景に笑いすぎて、出てきた涙をぬぐっていると、伊達ちゃんが横から携帯の画面を見せてきた。
「そうだ。このウェルカムボード描いてくれてありがとうな。」
「あ、うん。ごめんね、実際にお祝いしに行けなくて。」
「いや、こちらこそ、忙しいのに悪かったな。」
この伊達男の伊達ちゃんは、アメリカ一優しい(当社比)なナタリーさんと結婚している。
おれが伊達ちゃんと会ったのは事故の日、そしてプロポーズの日でもあった。
その後、なんやかんや両人共に友人として仲良くしていたのだが、結婚式はどうしても予定が合わず参加できなかった。無念。
せめてもの祝いということで、ウエルカムボードを贈呈したのであった。
「俺たちもだけど、アイツらはどうしてんだよ。」
「アイツら?」
「あー、俺たちは警察学校の同期なんだが、他に二人いるんだよ。」
へー、どんな人?
おれの軽い問いかけに三人が代わる代わる特徴を上げていく。
聞いていくにつれ、何やら、こう、既に知っているような気がする。
思わず頷いていたのを止め、考え込んでいると、胡乱げな目線で松田ちゃんが見てきた。
「作家先生、もしかして知ってんのか?」
「いや、うーーーん?」
「じゃあさ、この言葉を二人に似た人?に会ったら伝えてみてよ。」
「二人がミニスカポリスのコスプレをしている写真を貰ったんだけど。」
「言い値を払うからデータを寄こせ。」
「待て、ゼロ。落ち着け、罠だ。」
あ。やっぱり知り合いだったんだ。
しっかり口止めされたので、二人の話は伊達ちゃんたちにはひなかったのだが、
後日、飲み会で送り狼ならぬ送り家宅捜索だと乗り込まれた際に、うっかり高尾ちゃんが先に家にいたものだから、バッチリ見つかってしまい、
芋づる式に、というか、潜入捜査という名のカフェでバイトしているところも、バッチリ見つかってしまう二人なのであった。まる。
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