それ以外
夜空の星が瞬く中、くるくると回る。お互いに目配せをして、手を取り合う。ピアノの音が軽快にメロディを叩くのに合わせて、近づいたり離れたり。他の者が驚いたように見る中で、青江と堀川はその輪の中で笑いながら踊っていた。
先日行われた余興で立派な舞を披露した面々に続き、今度はこの前参加していなかった者達で舞おうという話になった。ちなみにそう話を先導したのは小烏丸だ。話を聞かない自由さとあっという間に皆を巻き込んでしまう手腕の良さに驚いていると練習だと近くにいた山姥切や宗三を掴むとその近くにいた十数振りを連れて部屋を出て行ってしまった。
残された燭台切や鶴丸の他、短刀と脇差はどうしようかと目配せをした。このままでは第三の舞いに連れ去れるのは時間の問題だ。既に第一陣として舞いの練習をさせられた和泉守や三日月は慣れぬ動きに筋肉痛となりしばらくの間出陣できない状態が続いた。
どうしようと悩む中、燭台切が一つ提案をした。
いずれしなくてはいけないなら、こっちも舞で対抗しようじゃないか。幸いな事に燭台切は主に誘われてピアノの練習をしていたようだ。鶴丸が主から借りた楽譜や踊りの本を読み解き、その場にいた者達で舞い、ならぬ西洋ダンスを練習することになった。
脇差もペアを組んで踊ろうということになり、鯰尾と骨喰、物吉と浦島、残ったのは青江と堀川である。残ったペアとはいえ、踊るのであればその方がいいと思っていたので不満などはない。
「よろしくね、青江くん」
「ふふ、身を委ねてもらってもいいよ?」
元より味方のペースに合わせるのが得意な脇差同士のペアである。どのペアもゆったりとした社交ダンスを選ぶ中、堀川と青江は主にアップテンポの速い曲を選んだ。どうせなら激しいのがいいよねぇ、とは青江の意見だった。堀川も格式ばったダンスはあまり好きではなかったので青江のその意見に乗ったのだ。
舞いの発表日となった。小烏丸が引き連れていった面々と優雅な舞いを見せるとみんなで拍手を送った。さすがの小烏丸である。恥ずかしがる山姥切の背を見て、それとなく腰を引き寄せて見事に最後まで舞って見せた。兄弟達の優美な姿に山伏も堀川もすごいすごいと拍手とともに感想を送った。舞いが終わって舞台から降りる小烏丸の代わりに短刀達と燭台切が舞台に立つ。
一体何が始まるのかと舞い終わった小烏丸が興味津々と見る中で、燭台切がピアノの椅子に座り鶴丸の指揮の元、曲を弾き始めると短刀達が踊り出す。みな、短刀の可愛いダンスに手を叩いて喜び、次いで脇差と打刀のペアがくるくると舞台上で回ると小烏丸も美しい子らの踊りに満足したのか笑みを浮かべた。
残るは堀川と青江のダンスだけだ。二人は手を取ると舞台の真ん中に躍り出た。すでに他の脇差たちには練習する場面をいくらか見せていたが通しで踊るのはこれが初めてだ。燭台切が先ほどまでの穏やかなメロディから、打って変わってテンポよく鍵盤を打っていく。そのメロディに合わせて堀川と青江も踊り出す。かくして二振りの独壇場のステージが出来上がった。
たんっと靴が地面を打ち鳴らす。鏡合わせになって踊ると二人とも同じ振付でタイミングは合っているのにどこか個性が出る。先ほどまでの優雅で綺麗な舞いと違い、軽快で目まぐるしく動く様に見ている皆は驚いたり、ピアノの音に合わせて手を打っている。リズムが早くて息が切れるのにも関わらず二振りは踊ってる最中にも関わらず笑い出した。鶴丸が楽しそうな二振りの様子に耐え切れず指揮を放り出して乱入してくる。腕を突然引っ張られて青江も堀川も驚いた表情になるが、このダンスはそもそも二人専用のものではない。
乱入、飛び入り参加、大歓迎。
青江が鶴丸の手を取り、本来のダンスから少しアレンジして踊るのを見ながら堀川も飛び込んできた今剣の手を引く。くるくると回っていると面白そうと思ったのか乱が厚の手を引いて壇上に上がる。先ほど踊ったばかりなのに、楽しそうに踊る短刀達の姿に燭台切も本来3分ほどで終わるはずだった曲を他の者にわからぬようにループさせている。おかげで最初から踊っている青江と堀川は正直息切れしそうである。それを見かねた浦島と物吉が手を挙げて二人の元へと駆け寄ってくる。
ぱちんと曲に合わせてハイタッチをすると青江と堀川の代わりに二人が壇上の上で今度はくるくると踊り出す。二人とも少しだけダンスの練習を見ていたから踊る分には問題ない。鶴丸も、壇上に登ってきた他の人たちも楽しそうに踊っているし、小烏丸も隣にいた長義を誘って真似して踊っている。所作が優雅なのは変わらずだが、楽しそうに笑っているので良いだろう。
「堀川君」
壁に背を預けて首に流れる汗を拭く事もなく青江が呼ぶ。
「乱れてしまったねぇ」
「本当に」
音楽が始まった時は二人だけの壇上だったのに、今では多くの人が壇上に登っている。ふふふと二人で笑いあって、それから力なくぺちりと手を合わせた。
先日行われた余興で立派な舞を披露した面々に続き、今度はこの前参加していなかった者達で舞おうという話になった。ちなみにそう話を先導したのは小烏丸だ。話を聞かない自由さとあっという間に皆を巻き込んでしまう手腕の良さに驚いていると練習だと近くにいた山姥切や宗三を掴むとその近くにいた十数振りを連れて部屋を出て行ってしまった。
残された燭台切や鶴丸の他、短刀と脇差はどうしようかと目配せをした。このままでは第三の舞いに連れ去れるのは時間の問題だ。既に第一陣として舞いの練習をさせられた和泉守や三日月は慣れぬ動きに筋肉痛となりしばらくの間出陣できない状態が続いた。
どうしようと悩む中、燭台切が一つ提案をした。
いずれしなくてはいけないなら、こっちも舞で対抗しようじゃないか。幸いな事に燭台切は主に誘われてピアノの練習をしていたようだ。鶴丸が主から借りた楽譜や踊りの本を読み解き、その場にいた者達で舞い、ならぬ西洋ダンスを練習することになった。
脇差もペアを組んで踊ろうということになり、鯰尾と骨喰、物吉と浦島、残ったのは青江と堀川である。残ったペアとはいえ、踊るのであればその方がいいと思っていたので不満などはない。
「よろしくね、青江くん」
「ふふ、身を委ねてもらってもいいよ?」
元より味方のペースに合わせるのが得意な脇差同士のペアである。どのペアもゆったりとした社交ダンスを選ぶ中、堀川と青江は主にアップテンポの速い曲を選んだ。どうせなら激しいのがいいよねぇ、とは青江の意見だった。堀川も格式ばったダンスはあまり好きではなかったので青江のその意見に乗ったのだ。
舞いの発表日となった。小烏丸が引き連れていった面々と優雅な舞いを見せるとみんなで拍手を送った。さすがの小烏丸である。恥ずかしがる山姥切の背を見て、それとなく腰を引き寄せて見事に最後まで舞って見せた。兄弟達の優美な姿に山伏も堀川もすごいすごいと拍手とともに感想を送った。舞いが終わって舞台から降りる小烏丸の代わりに短刀達と燭台切が舞台に立つ。
一体何が始まるのかと舞い終わった小烏丸が興味津々と見る中で、燭台切がピアノの椅子に座り鶴丸の指揮の元、曲を弾き始めると短刀達が踊り出す。みな、短刀の可愛いダンスに手を叩いて喜び、次いで脇差と打刀のペアがくるくると舞台上で回ると小烏丸も美しい子らの踊りに満足したのか笑みを浮かべた。
残るは堀川と青江のダンスだけだ。二人は手を取ると舞台の真ん中に躍り出た。すでに他の脇差たちには練習する場面をいくらか見せていたが通しで踊るのはこれが初めてだ。燭台切が先ほどまでの穏やかなメロディから、打って変わってテンポよく鍵盤を打っていく。そのメロディに合わせて堀川と青江も踊り出す。かくして二振りの独壇場のステージが出来上がった。
たんっと靴が地面を打ち鳴らす。鏡合わせになって踊ると二人とも同じ振付でタイミングは合っているのにどこか個性が出る。先ほどまでの優雅で綺麗な舞いと違い、軽快で目まぐるしく動く様に見ている皆は驚いたり、ピアノの音に合わせて手を打っている。リズムが早くて息が切れるのにも関わらず二振りは踊ってる最中にも関わらず笑い出した。鶴丸が楽しそうな二振りの様子に耐え切れず指揮を放り出して乱入してくる。腕を突然引っ張られて青江も堀川も驚いた表情になるが、このダンスはそもそも二人専用のものではない。
乱入、飛び入り参加、大歓迎。
青江が鶴丸の手を取り、本来のダンスから少しアレンジして踊るのを見ながら堀川も飛び込んできた今剣の手を引く。くるくると回っていると面白そうと思ったのか乱が厚の手を引いて壇上に上がる。先ほど踊ったばかりなのに、楽しそうに踊る短刀達の姿に燭台切も本来3分ほどで終わるはずだった曲を他の者にわからぬようにループさせている。おかげで最初から踊っている青江と堀川は正直息切れしそうである。それを見かねた浦島と物吉が手を挙げて二人の元へと駆け寄ってくる。
ぱちんと曲に合わせてハイタッチをすると青江と堀川の代わりに二人が壇上の上で今度はくるくると踊り出す。二人とも少しだけダンスの練習を見ていたから踊る分には問題ない。鶴丸も、壇上に登ってきた他の人たちも楽しそうに踊っているし、小烏丸も隣にいた長義を誘って真似して踊っている。所作が優雅なのは変わらずだが、楽しそうに笑っているので良いだろう。
「堀川君」
壁に背を預けて首に流れる汗を拭く事もなく青江が呼ぶ。
「乱れてしまったねぇ」
「本当に」
音楽が始まった時は二人だけの壇上だったのに、今では多くの人が壇上に登っている。ふふふと二人で笑いあって、それから力なくぺちりと手を合わせた。
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