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記憶の糸


軍に所属して1年ほど経った。
随分と仕事には慣れたが、人付き合いは
相変わらずてんで苦手だった。
食堂でぼんやりと仕事内容を確認していると
部隊員が気がついたのか、すごい勢いで寄ってきた。

「ようヘクター!!今暇?暇だろ?」

ずば抜けて明るい顔が急接近してくる。
誰にでも明るい隊員のバートという男。
夏でもニット帽を被るほど気に入っている。

「騒ぐなうるさい、暇じゃない」

顔を背ければ、
背けた分だけ前に回り込み勝手に話を進める。

「今度クレイグ達とバーベキューするんだ、お前も来るだろ!こいよ、俺たちだけじゃ肉しかねえからな!」
「行かない、忙しい」
「何でだ!報告書か?俺もやるよ」
「いい」
「まーまーまーそういうなって、な?新人」
「ほっといてくれ」

そう言うとヘクターはかなわぬ様子で
早足ほどの速さでバートを避け、
逃げていった。
肩を竦めるバートの背中を誰ぞかが叩く。
様子を伺っていたクレイグだ。

「いい加減諦めろよ、ずっとこれだろ?」

バートはうーんと唸ると
「いーや、やめないぞ、同じ部隊になって分かったがあいつは良い奴だ!へそは曲がってるけどな」

いつか絶対に仲良くなるんだ!と
楽しそうに笑っていた。
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