朝日奈家へ居候
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「……病院?」
絶対死んだなとか思ったけど、何とか生きてる。
誰かが見つけて、救急車を呼んでくれたのだろうか。
お礼をする金も時間もないけれど、こればっかりはしない訳にはいかない。
なんてたって命の恩人というやつですからね。
助けてくれた人が恩着せがましい人とか悪どい人だったらどうしよう。
そんなことを考えながら、カーテンの隙間から見える窓の景色をボーッと見つめていると、病室のドアが開いた音がした。
「あ、起きたのかい?」
「あ……………」
入ってきた人は白衣をきた茶髪の柔らかい笑みを浮かべた男性。
私は最初に白衣が目に入り、とりあえず状況を説明してもらおうと口を開くが、その口は開いたまま塞がらなかった。
「…?どうしたの?まだどこか痛む?今は鎮痛剤が効いてるはずだけど…」
「雅兄、看護師さんに話つけてきたよ…と、起きてたんだね」
後から入ってきた金髪の長身男性は、初めましてと私を見て微笑む。
私は、開いた口がさらに塞がらなくなった。
それもそのはずである。
何故なら、目の前にいる2人の男性は本来なら存在しないはずの人間だから。
私は自他ともに認める立派なオタクで、アニメはもちろん漫画や小説にゲーム何でもござれな雑食。
ハマるジャンルも様々で、俗に言うギャルゲーや乙ゲーもプレイする人種である。
そして目の前にいるのは、死ぬ前に攻略していたゲームのキャラクター。
そりゃ開いた口も塞がらない。
「どう、いう…」
やっと口から言葉が出てきたかと思えば、それは言葉にもならなかった。
言いたいことを察してくれた茶髪の柔らかい雰囲気の男性は、病床ベッドの横に立てかけてあった折り畳みの椅子を出しながら、説明を始めた。
「君は僕らの家の中庭で倒れていたんだ」
「…中庭…?」
おかしい。私は寝起きの頭をフル回転させて思い返す。
バイトからの帰路についた私にストーカーが来て、刺されて…のはずだからマンションの中庭にいること自体おかしい。
というかこの人たちが存在している時点でおかしい。
ちょっと待って、私そんなに徳を積んでないですよ神様。
どういうことですか。
うんうん唸って考え込む私に二人の男性は、困ったように目を合わせる。
「じゃあとりあえずそれは置いといて…ご家族か親族の方に連絡したいんだけど、連絡先教えてもらっていいかな?」
私の雰囲気を取り払うように茶髪の男性は声をかけるが、私はその問いかけにビクッと体を揺らした。
「……えと、家族はいない、です…すみません」
そう伝えると二人は目を見開いて、茶髪の男性はすぐに謝罪をした。
私はそれに気にしないでくださいと伝えて、むしろこの状況の説明をして欲しいと内心げんなりしていた。
「となると…荷物とか着替えとかどうするの?」
「症状が軽ければ、一時帰宅で持ってきてもらうことになるんだけど…」
「さすがにねぇ…」
顔を見合わせてどうしたものかと悩むお二人に、おずおずと問い掛ける。
「あの…」
「「ん?」」
「ひぇ…」
2次元イケメンが揃ってこっち向きおった。いや呼んだの私だけどさ。
心臓もたないのでやめてください。
「多分…何ですけど」
「うん」
「………家、ないかも」
「………うん?」
こちらが喋り終わるのを待っていた茶髪男性は、私の言葉を聞いて頭にハテナが飛び交う。
「家がない?」
「まぁ……………ちょっと色々ありまして…」
金髪男性の顔を直視できず、下を向きながら答える。
むしろこの状況を一番理解していないのは私な気がするが、どうにかまだ起ききれていない頭を使って、誤魔化す嘘を考える。
「えと、簡単にいうとですね……家族はいなくて、ネカフェとか転々としてて…」
「でも、着替えとかくらいあるんじゃ」
「いや……お恥ずかしい話、お金なくて…荷物はこの鞄だけです」
ネカフェ生活してたことは本当にあったので、嘘は言ってない。
お金がないのは本当、荷物がこれだけなのは半分嘘。
誤魔化すときは嘘の中に事実を混ぜるといいって聞いたことあるよ私。
「そっか……ごめんね、辛いことを聞いたね」
「いえ…」
金髪男性は辛そうに悲しそうに、眉毛を八の字にして謝る。
私の良心が押しつぶされそう…ぐぇ。
私がなけなしの良心と闘っていると、茶髪の男性がそういえばと口火を切った。
「自己紹介がまだだったね…僕は朝日奈雅臣、この病院で医者として働いてるよ」
と言っても小児科医だけど、と八の字眉毛にして笑う彼が眩しくて私は眉間を押さえた。
これが三十路超えた男性の破壊力かよ。
「俺は朝日奈要、雅兄の弟だよ」
えぇ、えぇよく知っていますとも。
だって攻略キャラの中で私的ランキングのトップ3に入るお二方ですもの。
とりあえずその笑顔プライスレス…最高ですね、要さん。
「えと、松井奈菜です」
今更ながらの軽い自己紹介をした後に、私はふと気づく。
「朝日奈さんの家の中庭に倒れていたということは、救急車を呼んでくださったのは…」
「あぁ、それは要だよ、僕は仕事中だったからね」
その言葉に心臓が小さくなるのを感じる。ついでに冷や汗もダラダラである。
「それは…大変ご迷惑をおかけしました…!!」
「ちょっ、やめてやめて!そんなこと気にしないの」
ベッドの上で鎮痛剤が効いてるのをいいことに土下座する。
あ、痛い。泣きそう。
「うぐ…」
「ほら、まだ傷が癒えたわけじゃないんだから」
「何から何まですみません…」
心配そうに覗き込んでくるお二人の顔を見れなくて、不謹慎な顔をしていることに気づかれないように俯いておこう。安心。
「そうなると…どうしようか」
「そうだねぇ…まさか退院してそのままってわけにも…」
「え…いや、助けていただいたのにそこまで甘えませんよ…!?」
しれっと話を進めていく兄弟に私は驚きを隠せない。
いやいや普通放っておくでしょ、こんな面倒くさい物件。
いくら自宅に転がってた女だとしてもさ、そこまでする?良心の塊か何かですか?
「女の子一人放り出すわけにはいかないでしょ」
お茶目な顔して私にウィンクする要さんに私は動悸が激しくなるが、バレないように平静を装う。
あ、いや多分装えてない。多分顔赤いわ。無理。
「可愛い反応だねぇ」
「ひぇ…」
今日2回目の悲鳴。もうやだこのイケメン。
「じゃあウチに住んだらいいじゃない」
「「母さん!?」」
「……ははは……」
もう驚かんぞ、決して。
朝日奈家の母である美和さんの登場。実物超絶綺麗だなーと呑気に考えていると、美和さんは私の目の前にきた。
「どうかしら?部屋は余ってるし、これも何かの縁でしょ?」
「え?本気ですか?」
「本気よ!何なら私の娘にならない?」
「…ヘぁ!?」「は!?」
「家族は多い方がいいもの〜♪娘が2人もいたらもっと楽しいわぁ〜!」
娘にならないというまさかの提案に、美和さん以外の3人が驚く。
てか2人?てことは主人公である絵麻ちゃんはもう家族としているんだな。
て、そういうことじゃない!!
「いやいや!助けていただいたのにさらにご迷惑をおかけするには行きませんって!!」
「そんなの気にしなくていいのよ!ねぇまーくん、かなちゃん♪」
「そうだねぇ…君さえ良ければどうかな」
「は!?」
「娘になるならないは置いといて、行く所がないならウチにおいでよ」
「…えぇぇ…?」
本当この家の人間はどうなっているんだ、と頭を抱えたい気分になる。
気持ちは嬉しいが、本当に甘えてしまっていいのかと悩む。
でも何回考えても、それ以外にいい案は浮かばない。
というかそれ以外は、もはやお先真っ暗な道しかない。
「…この御恩は必ずお返しします…」
「気にしないでいいのよ」
満面の笑みで私の頭を撫でる美和さんに少し気恥ずかしさを覚える。
後ろで微笑む長男と三男にも見守られながら、私は大人しく撫でられていた。
だけど、その時の私はよく考えていなかった。
朝日奈家に居候するとは、どういうことなのかを。
絶対死んだなとか思ったけど、何とか生きてる。
誰かが見つけて、救急車を呼んでくれたのだろうか。
お礼をする金も時間もないけれど、こればっかりはしない訳にはいかない。
なんてたって命の恩人というやつですからね。
助けてくれた人が恩着せがましい人とか悪どい人だったらどうしよう。
そんなことを考えながら、カーテンの隙間から見える窓の景色をボーッと見つめていると、病室のドアが開いた音がした。
「あ、起きたのかい?」
「あ……………」
入ってきた人は白衣をきた茶髪の柔らかい笑みを浮かべた男性。
私は最初に白衣が目に入り、とりあえず状況を説明してもらおうと口を開くが、その口は開いたまま塞がらなかった。
「…?どうしたの?まだどこか痛む?今は鎮痛剤が効いてるはずだけど…」
「雅兄、看護師さんに話つけてきたよ…と、起きてたんだね」
後から入ってきた金髪の長身男性は、初めましてと私を見て微笑む。
私は、開いた口がさらに塞がらなくなった。
それもそのはずである。
何故なら、目の前にいる2人の男性は本来なら存在しないはずの人間だから。
私は自他ともに認める立派なオタクで、アニメはもちろん漫画や小説にゲーム何でもござれな雑食。
ハマるジャンルも様々で、俗に言うギャルゲーや乙ゲーもプレイする人種である。
そして目の前にいるのは、死ぬ前に攻略していたゲームのキャラクター。
そりゃ開いた口も塞がらない。
「どう、いう…」
やっと口から言葉が出てきたかと思えば、それは言葉にもならなかった。
言いたいことを察してくれた茶髪の柔らかい雰囲気の男性は、病床ベッドの横に立てかけてあった折り畳みの椅子を出しながら、説明を始めた。
「君は僕らの家の中庭で倒れていたんだ」
「…中庭…?」
おかしい。私は寝起きの頭をフル回転させて思い返す。
バイトからの帰路についた私にストーカーが来て、刺されて…のはずだからマンションの中庭にいること自体おかしい。
というかこの人たちが存在している時点でおかしい。
ちょっと待って、私そんなに徳を積んでないですよ神様。
どういうことですか。
うんうん唸って考え込む私に二人の男性は、困ったように目を合わせる。
「じゃあとりあえずそれは置いといて…ご家族か親族の方に連絡したいんだけど、連絡先教えてもらっていいかな?」
私の雰囲気を取り払うように茶髪の男性は声をかけるが、私はその問いかけにビクッと体を揺らした。
「……えと、家族はいない、です…すみません」
そう伝えると二人は目を見開いて、茶髪の男性はすぐに謝罪をした。
私はそれに気にしないでくださいと伝えて、むしろこの状況の説明をして欲しいと内心げんなりしていた。
「となると…荷物とか着替えとかどうするの?」
「症状が軽ければ、一時帰宅で持ってきてもらうことになるんだけど…」
「さすがにねぇ…」
顔を見合わせてどうしたものかと悩むお二人に、おずおずと問い掛ける。
「あの…」
「「ん?」」
「ひぇ…」
2次元イケメンが揃ってこっち向きおった。いや呼んだの私だけどさ。
心臓もたないのでやめてください。
「多分…何ですけど」
「うん」
「………家、ないかも」
「………うん?」
こちらが喋り終わるのを待っていた茶髪男性は、私の言葉を聞いて頭にハテナが飛び交う。
「家がない?」
「まぁ……………ちょっと色々ありまして…」
金髪男性の顔を直視できず、下を向きながら答える。
むしろこの状況を一番理解していないのは私な気がするが、どうにかまだ起ききれていない頭を使って、誤魔化す嘘を考える。
「えと、簡単にいうとですね……家族はいなくて、ネカフェとか転々としてて…」
「でも、着替えとかくらいあるんじゃ」
「いや……お恥ずかしい話、お金なくて…荷物はこの鞄だけです」
ネカフェ生活してたことは本当にあったので、嘘は言ってない。
お金がないのは本当、荷物がこれだけなのは半分嘘。
誤魔化すときは嘘の中に事実を混ぜるといいって聞いたことあるよ私。
「そっか……ごめんね、辛いことを聞いたね」
「いえ…」
金髪男性は辛そうに悲しそうに、眉毛を八の字にして謝る。
私の良心が押しつぶされそう…ぐぇ。
私がなけなしの良心と闘っていると、茶髪の男性がそういえばと口火を切った。
「自己紹介がまだだったね…僕は朝日奈雅臣、この病院で医者として働いてるよ」
と言っても小児科医だけど、と八の字眉毛にして笑う彼が眩しくて私は眉間を押さえた。
これが三十路超えた男性の破壊力かよ。
「俺は朝日奈要、雅兄の弟だよ」
えぇ、えぇよく知っていますとも。
だって攻略キャラの中で私的ランキングのトップ3に入るお二方ですもの。
とりあえずその笑顔プライスレス…最高ですね、要さん。
「えと、松井奈菜です」
今更ながらの軽い自己紹介をした後に、私はふと気づく。
「朝日奈さんの家の中庭に倒れていたということは、救急車を呼んでくださったのは…」
「あぁ、それは要だよ、僕は仕事中だったからね」
その言葉に心臓が小さくなるのを感じる。ついでに冷や汗もダラダラである。
「それは…大変ご迷惑をおかけしました…!!」
「ちょっ、やめてやめて!そんなこと気にしないの」
ベッドの上で鎮痛剤が効いてるのをいいことに土下座する。
あ、痛い。泣きそう。
「うぐ…」
「ほら、まだ傷が癒えたわけじゃないんだから」
「何から何まですみません…」
心配そうに覗き込んでくるお二人の顔を見れなくて、不謹慎な顔をしていることに気づかれないように俯いておこう。安心。
「そうなると…どうしようか」
「そうだねぇ…まさか退院してそのままってわけにも…」
「え…いや、助けていただいたのにそこまで甘えませんよ…!?」
しれっと話を進めていく兄弟に私は驚きを隠せない。
いやいや普通放っておくでしょ、こんな面倒くさい物件。
いくら自宅に転がってた女だとしてもさ、そこまでする?良心の塊か何かですか?
「女の子一人放り出すわけにはいかないでしょ」
お茶目な顔して私にウィンクする要さんに私は動悸が激しくなるが、バレないように平静を装う。
あ、いや多分装えてない。多分顔赤いわ。無理。
「可愛い反応だねぇ」
「ひぇ…」
今日2回目の悲鳴。もうやだこのイケメン。
「じゃあウチに住んだらいいじゃない」
「「母さん!?」」
「……ははは……」
もう驚かんぞ、決して。
朝日奈家の母である美和さんの登場。実物超絶綺麗だなーと呑気に考えていると、美和さんは私の目の前にきた。
「どうかしら?部屋は余ってるし、これも何かの縁でしょ?」
「え?本気ですか?」
「本気よ!何なら私の娘にならない?」
「…ヘぁ!?」「は!?」
「家族は多い方がいいもの〜♪娘が2人もいたらもっと楽しいわぁ〜!」
娘にならないというまさかの提案に、美和さん以外の3人が驚く。
てか2人?てことは主人公である絵麻ちゃんはもう家族としているんだな。
て、そういうことじゃない!!
「いやいや!助けていただいたのにさらにご迷惑をおかけするには行きませんって!!」
「そんなの気にしなくていいのよ!ねぇまーくん、かなちゃん♪」
「そうだねぇ…君さえ良ければどうかな」
「は!?」
「娘になるならないは置いといて、行く所がないならウチにおいでよ」
「…えぇぇ…?」
本当この家の人間はどうなっているんだ、と頭を抱えたい気分になる。
気持ちは嬉しいが、本当に甘えてしまっていいのかと悩む。
でも何回考えても、それ以外にいい案は浮かばない。
というかそれ以外は、もはやお先真っ暗な道しかない。
「…この御恩は必ずお返しします…」
「気にしないでいいのよ」
満面の笑みで私の頭を撫でる美和さんに少し気恥ずかしさを覚える。
後ろで微笑む長男と三男にも見守られながら、私は大人しく撫でられていた。
だけど、その時の私はよく考えていなかった。
朝日奈家に居候するとは、どういうことなのかを。