朝日奈家へ居候
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晴れ間が見える穏やかな日、私はある場所に電話をかけていた。
「はい…はい……わかりました、では明後日のお昼14時ですね…はい、よろしくお願いします……やったーー!!」
挨拶をして、ツーツーと機械音が聞こえたところでスマホを置く。
電話の相手は棗さんの会社の人事担当。
この前棗さんから紹介してもらった事務員のバイトが無事に受かったので、手続きの為の電話だった。
給料の振込先や雇用契約書の記入が必要ということだったので、筆記用具、通帳を持参してくれとのことだった。
「通帳か…作らなきゃだよな…」
銀行の指定も特になかったので、マンションの近所に支店がある銀行にしようと考えて、自室を出た。
「あっれー奈菜じゃん?」
「こんにちは」
「椿さん、梓さんこんにちは…今日お休みですか?」
少しお茶でも飲もうと思ってリビングに行くと、そこには仲睦まじくお茶する双子が。
「奈菜も飲む?」
「あ、良いですか?」
「もちろん、砂糖いる?」
「そのままでいいですよ」
「梓の入れるカフェオレって最高なんだよなー☆」
カフェオレを仲良く飲む双子…可愛い。
ソファに腰掛けていた梓さんが立ち上がって、私の分のカフェオレを入れてもらっている間に、絵麻ちゃんから貰ったクッキーを出す。
「これ絵麻ちゃんから貰ったので、一緒に食べましょう」
「お!まじで?!食べる食べる♪」
「ありがとう…絵麻にもあとでお礼しなきゃね」
私と会話をしてくれる梓さんとは反対にマイペースな椿さん。
その姿を見て、温かいカフェオレを飲みながら私は微笑んだ。
「…奈菜の笑った顔、初めて見たかも」
「え?」
「…僕も」
「…えーっと…?」
椿さんは開いた口が塞がらないという顔で、梓さん表情の変化は少なくとも心底驚いたと言う。
「笑ってなかったでしたっけ…?」
自分では別に無理して笑っていたつもりも、取り繕っているつもりもなかったのだが…そんなに驚かれるということは、そうだったんだろうか。
「うーん…何ていうのかなー」
「笑っているんだけど…心の底からの笑顔、ではないように感じてたかな」
「そう!そんな感じ!やっぱどっかで無理してんのかな〜って思った」
「…」
今度は私が驚いた。
まさかそんな風に思われていたなんて。しかも椿さんにまで。
「…自分では無理しているつもり無かったんですけど、疲れでも溜まってたんですかねぇ」
「そうかもね、入院もしてたし」
「てかさぁ、もうキョーダイなんだし…敬語は無し!」
「ぐ…」
いつかは言われるだろうと覚悟していた言葉。
椿さんや弥ちゃんの無邪気組、雅臣さんや右京さんの優しい大人組辺りから気にすることないよとか言われそうだと思っていた。
個人的には敬語苦手だし、外したいの山々なんだけど…。
「いやでも…まだ知り合ったばかりですし」
「そんなのこれから知っていけばいいじゃん☆」
「でも…」
「俺と仲良くなるの嫌…?」
「うっ…!ひ、卑怯な…!」
子犬のような目で訴えてくる椿さんに犬耳でも生えたような幻覚を見て、思わず胸元を押さえる。
「奈菜さえ良ければ、僕もお願いしたいな」
「梓さんまで…」
「僕たちはもうキョーダイなんだし、少しずつ距離を縮めていこうよ…ね?」
「ぐはっ…!」
さすが双子…庇護欲を煽るやり方がそっくりだな…!
「で、でも…!」
「むー…何が嫌なんだよ」
「嫌とかではなくて…」
「…じゃあ何?」
「うーん…」
理由を話さなければ引いてくれなさそうだな…そう思って、観念して理由を告げようと口を開いた。
「私に家族がいないのは…知ってますよね」
「「…うん」」
「なので…キョーダイとかの憧れって、多分他の人より強くて…」
「…それで?」
「あんまり仲良くなりすぎると…」
「…すぎると?」
「……めっっっっちゃ甘えちゃいそうだなって」
恥ずかしい。何だこの羞恥プレイは。
あーーーー絶対顔赤いなぁ…!!早く何か言ってよ!!!
恥ずか死ぬ。
「「…それが理由?」」
「そうですけど…」
「……いい」
「は?」
椿さんが俯いてプルプル震えながら、何かを呟いた。
それを聞き返そうと椿さんに体を近づけると、がばっと抱きつかれた。
「ぅわっ!?」
「何それ超かあいいじゃーん!!」
「ちょっと椿!」
「奈菜ってばそんなこと思ってたのかよー!かあいい奴め!」
「ちょっ…!」
椿さんに抱きつかれてそのまま頬擦りされる。
抱きしめられていることと顔の近さ、それからさっきの発言での熱が収まらずにさらに温度が上がっていく。
「椿!」
「あっ!何だよ梓!今俺は奈菜を愛でたいんだよー!」
「気持ちは解らなくもないけど、奈菜が困ってるからやめて」
「ちぇっ…」
「あ、ありがとうございます梓さん…」
梓さんが椿さんを例の如くベリッと剥がしてくれる。それにお礼を言って、深呼吸して心を落ち着ける。
「ねぇ奈菜」
「は、はい…?」
呼びかけに肩がびくっと反応するのを感じる。イケボに名前呼ばれるの心臓に悪いな本当…。
「僕たちはもうキョーダイになったけど、確かにまだ知らないことが多い」
「…はい」
「だけどこれから家族になっていきたいと思うよ僕も椿も…もちろん他のみんなもね」
「梓さん…」
「だから甘えてくれていいんだよ、僕たちは君の兄なんだからさ」
「そうそう!困った時はいつでも椿お兄ちゃんに言うんだぞ☆」
「椿さん…」
優しい目でそう言ってくれる梓さん、頼もしい言葉で背中を押してくれる椿さん。
二人が開けてくれたその入り口に私は足を踏み入れたい気分になった。
「…わかった、よ…お兄ちゃん」
「「!!」」
情けないけど少し目が潤んで、情けない笑顔だったかもしれないけど。
それでもこっちに来てから一番の笑顔だったと、自分でも思った。
「はい…はい……わかりました、では明後日のお昼14時ですね…はい、よろしくお願いします……やったーー!!」
挨拶をして、ツーツーと機械音が聞こえたところでスマホを置く。
電話の相手は棗さんの会社の人事担当。
この前棗さんから紹介してもらった事務員のバイトが無事に受かったので、手続きの為の電話だった。
給料の振込先や雇用契約書の記入が必要ということだったので、筆記用具、通帳を持参してくれとのことだった。
「通帳か…作らなきゃだよな…」
銀行の指定も特になかったので、マンションの近所に支店がある銀行にしようと考えて、自室を出た。
「あっれー奈菜じゃん?」
「こんにちは」
「椿さん、梓さんこんにちは…今日お休みですか?」
少しお茶でも飲もうと思ってリビングに行くと、そこには仲睦まじくお茶する双子が。
「奈菜も飲む?」
「あ、良いですか?」
「もちろん、砂糖いる?」
「そのままでいいですよ」
「梓の入れるカフェオレって最高なんだよなー☆」
カフェオレを仲良く飲む双子…可愛い。
ソファに腰掛けていた梓さんが立ち上がって、私の分のカフェオレを入れてもらっている間に、絵麻ちゃんから貰ったクッキーを出す。
「これ絵麻ちゃんから貰ったので、一緒に食べましょう」
「お!まじで?!食べる食べる♪」
「ありがとう…絵麻にもあとでお礼しなきゃね」
私と会話をしてくれる梓さんとは反対にマイペースな椿さん。
その姿を見て、温かいカフェオレを飲みながら私は微笑んだ。
「…奈菜の笑った顔、初めて見たかも」
「え?」
「…僕も」
「…えーっと…?」
椿さんは開いた口が塞がらないという顔で、梓さん表情の変化は少なくとも心底驚いたと言う。
「笑ってなかったでしたっけ…?」
自分では別に無理して笑っていたつもりも、取り繕っているつもりもなかったのだが…そんなに驚かれるということは、そうだったんだろうか。
「うーん…何ていうのかなー」
「笑っているんだけど…心の底からの笑顔、ではないように感じてたかな」
「そう!そんな感じ!やっぱどっかで無理してんのかな〜って思った」
「…」
今度は私が驚いた。
まさかそんな風に思われていたなんて。しかも椿さんにまで。
「…自分では無理しているつもり無かったんですけど、疲れでも溜まってたんですかねぇ」
「そうかもね、入院もしてたし」
「てかさぁ、もうキョーダイなんだし…敬語は無し!」
「ぐ…」
いつかは言われるだろうと覚悟していた言葉。
椿さんや弥ちゃんの無邪気組、雅臣さんや右京さんの優しい大人組辺りから気にすることないよとか言われそうだと思っていた。
個人的には敬語苦手だし、外したいの山々なんだけど…。
「いやでも…まだ知り合ったばかりですし」
「そんなのこれから知っていけばいいじゃん☆」
「でも…」
「俺と仲良くなるの嫌…?」
「うっ…!ひ、卑怯な…!」
子犬のような目で訴えてくる椿さんに犬耳でも生えたような幻覚を見て、思わず胸元を押さえる。
「奈菜さえ良ければ、僕もお願いしたいな」
「梓さんまで…」
「僕たちはもうキョーダイなんだし、少しずつ距離を縮めていこうよ…ね?」
「ぐはっ…!」
さすが双子…庇護欲を煽るやり方がそっくりだな…!
「で、でも…!」
「むー…何が嫌なんだよ」
「嫌とかではなくて…」
「…じゃあ何?」
「うーん…」
理由を話さなければ引いてくれなさそうだな…そう思って、観念して理由を告げようと口を開いた。
「私に家族がいないのは…知ってますよね」
「「…うん」」
「なので…キョーダイとかの憧れって、多分他の人より強くて…」
「…それで?」
「あんまり仲良くなりすぎると…」
「…すぎると?」
「……めっっっっちゃ甘えちゃいそうだなって」
恥ずかしい。何だこの羞恥プレイは。
あーーーー絶対顔赤いなぁ…!!早く何か言ってよ!!!
恥ずか死ぬ。
「「…それが理由?」」
「そうですけど…」
「……いい」
「は?」
椿さんが俯いてプルプル震えながら、何かを呟いた。
それを聞き返そうと椿さんに体を近づけると、がばっと抱きつかれた。
「ぅわっ!?」
「何それ超かあいいじゃーん!!」
「ちょっと椿!」
「奈菜ってばそんなこと思ってたのかよー!かあいい奴め!」
「ちょっ…!」
椿さんに抱きつかれてそのまま頬擦りされる。
抱きしめられていることと顔の近さ、それからさっきの発言での熱が収まらずにさらに温度が上がっていく。
「椿!」
「あっ!何だよ梓!今俺は奈菜を愛でたいんだよー!」
「気持ちは解らなくもないけど、奈菜が困ってるからやめて」
「ちぇっ…」
「あ、ありがとうございます梓さん…」
梓さんが椿さんを例の如くベリッと剥がしてくれる。それにお礼を言って、深呼吸して心を落ち着ける。
「ねぇ奈菜」
「は、はい…?」
呼びかけに肩がびくっと反応するのを感じる。イケボに名前呼ばれるの心臓に悪いな本当…。
「僕たちはもうキョーダイになったけど、確かにまだ知らないことが多い」
「…はい」
「だけどこれから家族になっていきたいと思うよ僕も椿も…もちろん他のみんなもね」
「梓さん…」
「だから甘えてくれていいんだよ、僕たちは君の兄なんだからさ」
「そうそう!困った時はいつでも椿お兄ちゃんに言うんだぞ☆」
「椿さん…」
優しい目でそう言ってくれる梓さん、頼もしい言葉で背中を押してくれる椿さん。
二人が開けてくれたその入り口に私は足を踏み入れたい気分になった。
「…わかった、よ…お兄ちゃん」
「「!!」」
情けないけど少し目が潤んで、情けない笑顔だったかもしれないけど。
それでもこっちに来てから一番の笑顔だったと、自分でも思った。