侑介
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私を一人で育ててくれた母が死んだのが13歳の時。
母の親友である美和さんに連れられて、朝日奈家に居候することになったのが14歳の時。
侑介と付き合い始めたのが18歳の時。
美和さんのご好意で養子縁組はせず、でも家族のように接してくれる朝日奈家の皆の温かさに、私は戸惑っていた。
でも幼馴染みの侑介が私を励ましてくれて、吹っ切れた。
その時から侑介がずっと好きで、勇気を出して大学合格の報告と一緒に告白した。
同じ気持ちだった侑介は顔真っ赤にして、ガッツポーズをした後に私を強く抱きしめてくれたのを鮮明に覚えている。
「侑介〜、あとどのくらいで着くの〜?」
「あと20分くらいで着くぞ〜」
「へーい、にしても随分急な場所にあるんだねぇ」
大学生になった私たちは、長期休みを利用してよくツーリングキャンプに出かけていた。
元々アウトドアな二人だったから、デートはほぼツーリング。
今回は隣県にある山の上にあるキャンプ場で、展望台から見る夜景が綺麗な場所だという。
「楽しみだね、夕ご飯の食材とかもあっちで用意してくれるプランとか最高…」
「こんだけ山だと、バイクじゃ持ってくのきついもんな」
「ほんとだよ、前に温泉の有名なキャンプ場での悲劇は忘れない」
「おい奈菜、やめろ…その話は蒸し返すな」
「どんぐりコロコロよろしく、坂道に転がっていく食材たち…」
「やめろって!」
「あはは!ごめんごめん!」
ヘルメットの無線から聞こえてくる侑介の焦った声に笑う。
私がツーリングが好きなのは、普段は照れ屋で抱きつくとバタバタする侑介にずっと抱きついていられるから。
たくましい侑介の体から伝わる体温と鼓動が心地いいから。
「ツーリングっていいわぁ〜侑介に遠慮なしで抱きつけるもんね」
「…ならもっと抱きつけよ」
「…お?何だ何だ?甘えたモードですか侑介くん」
「いいから」
「しょうがないな〜…これで満足?」
「おう」
いつもより素直な侑介にご機嫌になった私は、からかおうと口を開いた。
「じゃあ愛してるって言ってよ」
「いいぞ」
「え!!本当に!?」
滅多に言ってくれない侑介からの甘い言葉。
それを期待して私は目を輝かせる。
「ヘルメットちゃんと被って、お前が先に愛してるって言ったらな」
「そんなのお安い御用!」
私は言われてすぐにヘルメットのベルトをきつく締め直した。
そしてまた強く侑介に抱きついて、口を開いた。
「侑介、愛し」
何かが割れる音、耳を劈く音、鈍い音、葉が擦れる音、吐息の音。
全部の音が、遠くで起こっていることみたいに聞こえる。
でも、一つだけはっきり聞こえた。
「俺も、愛してる」
「奈菜ちゃん!!」
気味が悪いくらいに白い病室に、一つのベッド。その傍らで椅子に座る彼女を見て、雅臣たちは息を呑んだ。
部屋には夕陽差し込んでいるのに、陽の光は彼女の頬だけを淡く輝かせる。
その背中は痛々しく、とても小さく見えた。
「…今日ね、いつもより素直だったの」
「……」
「もっと抱きつけとか、愛してるって言ってやるとか」
「…奈菜」
要が声で続きを遮ろうとし、祈織が彼女の肩へと手を伸ばす。
「…私ね、怪我してないの」
「…っ」
「いっつもカッコつけようとして、カッコつかないクセしてさ」
「…もう、いいよ」
「こんな時だけっ…!!」
「奈菜ちゃん!」
祈織は悲しみの渦に飲み込まれた彼女を救いたいという一心で、力一杯抱きしめた。
目の前で恋人を失った気持ちは痛いほどわかる祈織だからこそ、すぐ下の弟と妹のように可愛がっていた彼女だからこそ、辛かった。
雅臣と要は、うまい言葉がかけてあげられない自分に苛立ち、弟を喪った悲しみが押し寄せて、強く拳を握りしめていた。
「素直じゃなくたっていいから、私のそばにいてよ侑介!!」
「赤髪のナイトはお姫様を守って、死んでしまいましたとさ…おしまい」
「えー!ナイト死んじゃったの!?」
「みたいだねぇ」
「お姫様かわいそう…ひとりぼっちだよ?」
「…そうだねぇ」
「お姫様だって二人で幸せになりたかったよ、ねぇママ!」
「!…そうだね、うん…そう…」
紅が綺麗な三つ編みの幼子を撫でた彼女の頬を、陽の光が温かく照らしていた。
母の親友である美和さんに連れられて、朝日奈家に居候することになったのが14歳の時。
侑介と付き合い始めたのが18歳の時。
美和さんのご好意で養子縁組はせず、でも家族のように接してくれる朝日奈家の皆の温かさに、私は戸惑っていた。
でも幼馴染みの侑介が私を励ましてくれて、吹っ切れた。
その時から侑介がずっと好きで、勇気を出して大学合格の報告と一緒に告白した。
同じ気持ちだった侑介は顔真っ赤にして、ガッツポーズをした後に私を強く抱きしめてくれたのを鮮明に覚えている。
「侑介〜、あとどのくらいで着くの〜?」
「あと20分くらいで着くぞ〜」
「へーい、にしても随分急な場所にあるんだねぇ」
大学生になった私たちは、長期休みを利用してよくツーリングキャンプに出かけていた。
元々アウトドアな二人だったから、デートはほぼツーリング。
今回は隣県にある山の上にあるキャンプ場で、展望台から見る夜景が綺麗な場所だという。
「楽しみだね、夕ご飯の食材とかもあっちで用意してくれるプランとか最高…」
「こんだけ山だと、バイクじゃ持ってくのきついもんな」
「ほんとだよ、前に温泉の有名なキャンプ場での悲劇は忘れない」
「おい奈菜、やめろ…その話は蒸し返すな」
「どんぐりコロコロよろしく、坂道に転がっていく食材たち…」
「やめろって!」
「あはは!ごめんごめん!」
ヘルメットの無線から聞こえてくる侑介の焦った声に笑う。
私がツーリングが好きなのは、普段は照れ屋で抱きつくとバタバタする侑介にずっと抱きついていられるから。
たくましい侑介の体から伝わる体温と鼓動が心地いいから。
「ツーリングっていいわぁ〜侑介に遠慮なしで抱きつけるもんね」
「…ならもっと抱きつけよ」
「…お?何だ何だ?甘えたモードですか侑介くん」
「いいから」
「しょうがないな〜…これで満足?」
「おう」
いつもより素直な侑介にご機嫌になった私は、からかおうと口を開いた。
「じゃあ愛してるって言ってよ」
「いいぞ」
「え!!本当に!?」
滅多に言ってくれない侑介からの甘い言葉。
それを期待して私は目を輝かせる。
「ヘルメットちゃんと被って、お前が先に愛してるって言ったらな」
「そんなのお安い御用!」
私は言われてすぐにヘルメットのベルトをきつく締め直した。
そしてまた強く侑介に抱きついて、口を開いた。
「侑介、愛し」
何かが割れる音、耳を劈く音、鈍い音、葉が擦れる音、吐息の音。
全部の音が、遠くで起こっていることみたいに聞こえる。
でも、一つだけはっきり聞こえた。
「俺も、愛してる」
「奈菜ちゃん!!」
気味が悪いくらいに白い病室に、一つのベッド。その傍らで椅子に座る彼女を見て、雅臣たちは息を呑んだ。
部屋には夕陽差し込んでいるのに、陽の光は彼女の頬だけを淡く輝かせる。
その背中は痛々しく、とても小さく見えた。
「…今日ね、いつもより素直だったの」
「……」
「もっと抱きつけとか、愛してるって言ってやるとか」
「…奈菜」
要が声で続きを遮ろうとし、祈織が彼女の肩へと手を伸ばす。
「…私ね、怪我してないの」
「…っ」
「いっつもカッコつけようとして、カッコつかないクセしてさ」
「…もう、いいよ」
「こんな時だけっ…!!」
「奈菜ちゃん!」
祈織は悲しみの渦に飲み込まれた彼女を救いたいという一心で、力一杯抱きしめた。
目の前で恋人を失った気持ちは痛いほどわかる祈織だからこそ、すぐ下の弟と妹のように可愛がっていた彼女だからこそ、辛かった。
雅臣と要は、うまい言葉がかけてあげられない自分に苛立ち、弟を喪った悲しみが押し寄せて、強く拳を握りしめていた。
「素直じゃなくたっていいから、私のそばにいてよ侑介!!」
「赤髪のナイトはお姫様を守って、死んでしまいましたとさ…おしまい」
「えー!ナイト死んじゃったの!?」
「みたいだねぇ」
「お姫様かわいそう…ひとりぼっちだよ?」
「…そうだねぇ」
「お姫様だって二人で幸せになりたかったよ、ねぇママ!」
「!…そうだね、うん…そう…」
紅が綺麗な三つ編みの幼子を撫でた彼女の頬を、陽の光が温かく照らしていた。
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