出会いの季節
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昨日の時点で仕事が終わっていた奈菜は、数日ぶりの心地よい睡眠を貪っていた。
起きたのは、昼過ぎのことだった。
「はふ……眠たいなぁ…」
寝ぼけ眼を擦りながら部屋着のままリビングへと入ると、そこには双子の片割れがいた。
「あれ、梓は今日休みなの?」
「おはよう奈菜、そうだよ」
「そうなんだ…ふわぁ……ご飯どうしよっかなぁ」
「奈菜、今日何か予定ある?」
「今日?今日は何もないけど」
「じゃあ美味しいカフェを見つけたから、これから食べに行かない?」
「お、良いねぇ、行こっかな」
話しながら淹れたカフェオレを飲みながら、二つ返事で奈菜は梓の提案を受け入れる。
しかし、梓は奈菜の姿を見てため息をついた。
「奈菜…女の子なんだからもう少し服を整えてくるか、着替えてからおいでよ」
「は?」
「家族といえど、男ばっかりなんだから…」
「あ〜…そんなの気にしてたの?こんなのに欲情する奴なんかいないからいーの」
「…そういうことじゃないんだけど」
奈菜は部屋着の大きいサイズの男物のTシャツをワンピースのように着ているだけである。
Tシャツのゆるい襟元から華奢な肩が、袖口と裾から白くて細い手足が出ている。
有り体に言えば、思春期の男が見たらたまらない格好をしている。
「まあ出かけるならどっちにせよ着替えないとね」
「30分後に玄関に集合で良い?」
「うん、よろしくね〜」
奈菜は梓にそう告げて、リビングを後にする。
自室のある階にエレベーターが止まり、降りようとすると出かける準備をした要と鉢合う。
「お、なぁちゃん…今起きたの?」
「そうだけど…かなにいは今からお出かけ?」
「そ、檀家さんとお食事」
「へぇ…昼間っからお盛んですことですね〜」
「そういうんじゃないよ」
奈菜の意思とは反対に口からこぼれ落ちる悪態に内心哀しさを覚えていると、要が苦笑する。
「なぁちゃんは出かけるの?」
「うん、今日は梓とデートしてくるよ」
「…あーちゃんと?」
「そう、カフェデートしてその後ショッピングして、素敵なディナーに行くの」
妬いてほしくて、ただ兄弟とご飯に行くだけなのにデートと言う。
それが何とも子供っぽくて、奈菜は心の中で自嘲した。
「そう、気をつけてね…あーちゃんもあぁ見えてなかなかやるから」
「何それ、かなにいじゃあるまいし」
「酷いなぁもう…それじゃ行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
扉が閉まってエレベーターが降りていくのを見届けてから、奈菜はその場に蹲った。
「本当…………可愛くない」
その言葉は、誰もいない物寂しい廊下に反響した。
「余裕ないなぁ………全然、だめだ」
一人しか乗っていないエレベーターの中で呟いた一言は、ただ無機質な壁に吸い込まれた。
素直になれない
起きたのは、昼過ぎのことだった。
「はふ……眠たいなぁ…」
寝ぼけ眼を擦りながら部屋着のままリビングへと入ると、そこには双子の片割れがいた。
「あれ、梓は今日休みなの?」
「おはよう奈菜、そうだよ」
「そうなんだ…ふわぁ……ご飯どうしよっかなぁ」
「奈菜、今日何か予定ある?」
「今日?今日は何もないけど」
「じゃあ美味しいカフェを見つけたから、これから食べに行かない?」
「お、良いねぇ、行こっかな」
話しながら淹れたカフェオレを飲みながら、二つ返事で奈菜は梓の提案を受け入れる。
しかし、梓は奈菜の姿を見てため息をついた。
「奈菜…女の子なんだからもう少し服を整えてくるか、着替えてからおいでよ」
「は?」
「家族といえど、男ばっかりなんだから…」
「あ〜…そんなの気にしてたの?こんなのに欲情する奴なんかいないからいーの」
「…そういうことじゃないんだけど」
奈菜は部屋着の大きいサイズの男物のTシャツをワンピースのように着ているだけである。
Tシャツのゆるい襟元から華奢な肩が、袖口と裾から白くて細い手足が出ている。
有り体に言えば、思春期の男が見たらたまらない格好をしている。
「まあ出かけるならどっちにせよ着替えないとね」
「30分後に玄関に集合で良い?」
「うん、よろしくね〜」
奈菜は梓にそう告げて、リビングを後にする。
自室のある階にエレベーターが止まり、降りようとすると出かける準備をした要と鉢合う。
「お、なぁちゃん…今起きたの?」
「そうだけど…かなにいは今からお出かけ?」
「そ、檀家さんとお食事」
「へぇ…昼間っからお盛んですことですね〜」
「そういうんじゃないよ」
奈菜の意思とは反対に口からこぼれ落ちる悪態に内心哀しさを覚えていると、要が苦笑する。
「なぁちゃんは出かけるの?」
「うん、今日は梓とデートしてくるよ」
「…あーちゃんと?」
「そう、カフェデートしてその後ショッピングして、素敵なディナーに行くの」
妬いてほしくて、ただ兄弟とご飯に行くだけなのにデートと言う。
それが何とも子供っぽくて、奈菜は心の中で自嘲した。
「そう、気をつけてね…あーちゃんもあぁ見えてなかなかやるから」
「何それ、かなにいじゃあるまいし」
「酷いなぁもう…それじゃ行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
扉が閉まってエレベーターが降りていくのを見届けてから、奈菜はその場に蹲った。
「本当…………可愛くない」
その言葉は、誰もいない物寂しい廊下に反響した。
「余裕ないなぁ………全然、だめだ」
一人しか乗っていないエレベーターの中で呟いた一言は、ただ無機質な壁に吸い込まれた。
素直になれない