今日はおしゃれなカフェで優雅にカフェオレを飲んで、可愛らしく美味しいケーキを頬張っている。


「……母さん、いまなんて？」
「だからぁ！再婚するのよ♡」
「まじで…？」


朝比奈家の母美和が放ったその一言は、奈菜の思考を停止させるには十分な威力だった。



















「………と、いうことで母さん再婚するってよ」
「いやいやわかるか！！！！」
「私だってわかるか！！！！」
「お、落ち着いて侑介、奈菜」


忙しい母の代わりに奈菜が母の再婚を他の兄弟に話さねばならず、面倒くさくなってもろもろ端折って伝えると、赤毛のやんちゃ坊主の侑介が突っかかってきた。


「本当に急ですね…あの人らしいと言えば、らしいですが…」
「いいんじゃない？母さんが幸せになるのに反対する奴なんか、この家にいないでしょ」
「まぁねぇ」


要の意見に同意する長男の雅臣は、優しい顔で母の再婚を喜ぶ。


「それ以外には何か言ってた？」
「うぅ〜んとね………あ」
「何か言ってたんですか？」
「妹が出来るって言ってたな」
「妹！？妹できんの！！？？」


リビングの端のソファで梓と台本を読んでいた椿が妹という言葉に反応する。
その反応の良さに若干引きながら、奈菜は答える。


「そう、確か年は侑介と一緒だったかな…」
「俺と？……な、なぁ姉貴そいつどこの高校なんだ？」
「え？そこまでは聞いてないけど」
「そっか…」


勝手に妄想の妹と仲良くしている椿を放っておいて、何だか少し顔を赤くしながら焦っている侑介の顔を見て、奈菜は閃いた。


「お？侑介くんまさか君…同級生で好きな子でもいるんか〜？？」
「ばっ！！いっいねぇよ別に！！！」
「ほぉ〜ん？？」


肩を組んで、ニヤニヤした顔で侑介の真っ赤に染まった顔を覗き込む。


「だぁーーー！！やめろよ！！！」
「ブハッwwww」


耐え切れないと言った表情で急いで奈菜の腕を振り払って、侑介は自室に戻る。
それすらも奈菜は面白く感じてしまう。


「なぁちゃん、あんまりゆうちゃんをからかわないであげてよ」
「なぁに言ってんのさ、かなにいだって散々からかうくせに」
「そんなことないよ？」
「よく言うよ」


見つめあって、二人ともしたり顔で微笑む。


「それよりまた部屋に篭るからさぁ、京にい今日から一週間くらいは部屋までご飯お願いしていいかな」
「仕方ないですねぇ…いつでも食べれるようにまたおにぎりでいいんですか？」
「うん、頼むよ」


今日の夕方にクライアントから電話があり、新しい仕事が来た奈菜は仕事をするために部屋へ行こうと立ち上がるが、その手を要が掴んだ。


「じゃあさ、これから遊ぼうよなぁちゃん」
「…かなにい、人の話聞いてた？これから仕事するんだけど…」
「別に今からやらなくたって明日からやればいいじゃない、ね？」
「…はぁ」


かなにいが何を企んでるのかわからないが、よくないことを企んでいるのは明白である。
しかし奈菜はそれを断るのも面倒くさくなり、溜息をついて抵抗するのを諦めた。


「…どこ行くのさ」
「楽しいトコロ♡」
「…」


至極楽しそうな顔をしてウィンクをしてくる要に対して、冷めた視線を送るが、まったく効いてない。


「じゃあ俺ら出かけてくるから、夕飯いらないよ〜」
「京にい、ご飯は明日からお願いするわ」
「わかりました、要！あんまり連れ回すんじゃありませんよ」
「はいは〜い」
「いってらっしゃ〜い」













家族ができるってさ