スパンダム:行楽
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「ねぇスパンダムさん」
少し苦味を含んだ良い香りが漂う指令室で、秘書の名無しさんが透き通った声で名を呼ぶ。
「あ?」
「もう秋ですね。」
きっと今頃は、紅葉が見られる島もあるのだろう。赤ん坊のような手が集まった真っ赤で綺麗な景色。
「そうだな」
「行楽とか、行きたいなぁ…」
名無しさんも同じことを考えていたのだろうか、付け足して、紅葉とか!と目を輝かせながら視線を送る。
「何言ってんだ。お前まだ仕事の一つや二つ覚えられてねぇのに行楽とか行ってる場合か。」
「…そうですよね、じゃあ長官。ここにコーヒーのおかわり置いておきますね。」
熱いので気をつけてと釘をさして指令室を後にする彼女の背中はどこかもの寂しげだった。
「なんじゃ、行楽くらいわしがいつでも連れていってやるのにのぉ」
名無しさんと入れ替わりで部屋に入ってきたカクに、
「…なんだよ」
と不機嫌そんな顔で答える。
「任務の報告書じゃ。」
「あぁ…そこに置いとけ。」
「コーヒー、はよ飲まんと冷めてしまうぞ」
「あ、あぁ、それもそうだな」
ぶあっちぃぃいぃい!!!という声に反応も示さず部屋を出ていく冷たい部下。
一旦落ち着いて考え直し、全員のスケジュールを確認する。
「しょうがねぇな…」
「ただ今戻りました~」
いつもの調子、よりかはテンションが低めの彼女に様々な景色が描かれたパンフレットを数冊渡す。
「長官、これは?」
「お、お前が行楽に行きたいって言ったんだろ!?」
「いいんですか…?」
「なんだよ、行きたくねぇなら別にいいんだぞ」
「い、行きます!」
「ま、まぁ新人のわりにはよく働いてるからな。あ、ありがたく思え!」
「はい!」
まるで子犬のように無邪気な笑顔を見せる。
「あー、お前がいいなら、ほかの奴らも連れてくか?」
「わぁ!みんなで行楽ですか、楽しそうです!」
どこへ行こうかなぁとウキウキしながらパンフレットのページをめくる名無しさんの姿に、嬉しさを感じたスパンダムであった。