雨が降ると、憂鬱になる。

気分が下がるから、というのもあるけれど、それとは違う理由がある。



｢よぉぅし！お前をバギー海賊団に入れてやる！派手に感謝しろ！ギャハハハハハ！｣

そう明るく出迎えてくれたあの時は嬉しかった。

私には家族も仲間もいなかった。

でもあなたにそう言ってもらって、突然一生の宝物ができた気がしたのに。

｢俺はもうお前をただのクルーだとは思えねぇ。｣

結ばれて、抱き合って。

愛し合って。

でもあなたはいろんな女の人に誘われ、ついて行くから。

楽しそうに女の人と肩を組んでお酒を飲んでたこと、知ってるのよ？

わたしの心を表すかのように、そんな日はいつも雨だったこと、気づいてる？

｢バギーは私のこと、どう思ってるの…？｣

泣いたら負けだと、涙を必死にこらえた。

｢わかった、もうしねぇ、おめぇだけを見てる｣

｢なら、もう離さないで｣

と抱きつけばあなたは、

｢もう離さねえ｣

って、約束してくれたじゃない。

あの夜は、私の思い出の夜になったのに。


あなたはまた、行ってしまったのね。

一人目覚めた朝。土砂降りの雨。

あなたは私のこと、なんにもわかってない。

私にはそれほど魅力がないの？


船を飛び出した時、あなたは探しにも来なかったわね。

行き場をなくして、夜の蝶としてネオンの街を舞っている私を捕まえに来るなんて期待してないけれど。

港に佇んで、船が来る度にあなたの船じゃないかと思ってしまう。

今日はあの日と同じぐらいの土砂降りの雨。

雨だからといって、嫌な思い出は流れていかない。

こんな雨、意味がない。

いつやむの、雨なんてもう

見たくない。