勢い良くドアを開けると、クザンが驚いた様な顔でこちらを見ていた。
部屋に入るや否や、

「クザンさん、ご迷惑おかけしました!」

と言いながらしたお辞儀もまた勢いが良かった。胸元のポケットに刺してあったペンが全て落ちるほどの勢いだった。

「え、あぁ、いやぁ、もう大丈夫なの」

「はい、私の自己管理ができていなかったせいで、クザンさんにご迷惑を…。」

頭を下げたまま言う名無しさんの元まで近づいて、頭に手を乗せる。

「だから言ったじゃない、ちゃんと食べないとそのうちぶっ倒れるよって。」

と言っても尚、頭を下げ続ける名無しさんにやさしく声を掛ける。

「顔、上げなさいや。別に迷惑だなんて思ってないよ。」

そう言うと名無しさんはゆっくりと顔を上げ、クザンを見上げた。

「ほんとですか…？」

首を傾げる名無しさんの頭にもう一度手を乗せる。

「あぁ、本当だよ。でもな名無しさんちゃん…」

次の瞬間、名無しさんの小さな身体は大きな身体に包まれた。

「名無しさんちゃんさ、仕事熱心なのはいいけど、あんまり無理しなさんな。名無しさんちゃんは俺の補佐官である前に、


俺の恋人なんだから。」

抱きついているせいで名無しさんの顔は見えないが、今頃名無しさんは赤面しているんだろう、と予想を立てる。その予想通り、名無しさんは顔を真っ赤にしていた。

「ほんと、心配したんだから。」

名無しさんの肩に手を置き、名無しさんに向き直る。それからすぐ、2人の唇は重なった。