翌日、また昨日と同じ状況である執務室。2人して書類を睨みつけている。今日も昼の12時は回っている。

「おっと、名無しさんちゃん、もうお昼にしていいよ」

顔を上げた名無しさんはまた、もう12時か…と言う。そこまでは毎日のことなのだが、昨日と同様、今日もお腹が空いていないと言う。

「あらら…。ちゃんと食べないとそのうちぶっ倒れるよ」

「はーい」

そして1時間が経った頃、

「名無しさんちゃん。これ、ガープさんとこ持ってってくれねぇか」

と、クザンは書類とにらめっこしながら数枚重ねられた紙の束を名無しさんの方に差し出す。

「あ、わかりました。」

と言うと名無しさんは立ち上がり、クザンの元まで歩く。その足元は少々ふらついているが、無論、書類に目を落としているクザンはそれには気づいていない。

「じゃあ、いってきます。」

名無しさんが書類を受け取り、ドアの方まで歩いていたそのとき。

何かが倒れる音がした。

また名無しさんが何かを転かしたか落としたのだろう。そういうのは日常茶飯事だ。そう思いながらクザンが顔を上げると、

名無しさんがいない。

「名無しさんちゃん？」

扉の開閉音は聞こえていないことから推測すると、まだ部屋の中にいるはずなのだが。

椅子から立ち上がるとその音の正体がすぐにわかった。

「名無しさんちゃん‼︎」

クザンが目にしたのは、床に倒れる名無しさんの姿だった。