短編 (FF以外)
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夏。照りつける太陽と、響き渡る歓声。
懐かしい…。数年前、あの場所に私は立っている筈だった。だけど、それは叶うことがなかった。
今は、ただ祈るしか出来ない。見守ることしか出来ない…。
彼らの勇姿を、奮闘を。
一際歓声があがる…。
立海大を、青学が負かした。
それは念願の……青学の優勝だった。
私たちの代では成し遂げられなかった、目標。
ああ…、良かった……。
優勝の喜びを分かち合う後輩たちの姿を、目に焼き付けた。良かった。……本当に、良かった…っ…。
嬉しくて、込み上げてくる気持ちが抑えられきれなくて、涙が頬を伝っていく。
「みんな、おめでとう…っ。」
誰かに拾われることのない言葉を風がさらっていく。
優勝旗が青学の部長に手渡される。
表彰式が終わり、観客の人たちがまばらになる。
選手たちも引き上げていく。
私も帰ろう……そう思って、テニスコートを後にしようとした時だった。
熱い。誰かに後ろ手を掴まれた。
「…て、手塚…くん…?」
「……っ、名字、先輩…っ…。」
振り向けば、そこにいたのは息を切らして私の手を離さまいとしている、可愛い後輩だった。
「どこに、行くつもりですか…。」
「ど、どこって……。」
「俺たち、優勝したんです。」
「うん…。見てたよ。みんな、すごかった。」
「それだけですか…?」
「……え?」
ぐっ、と手を引かれて会場の外でも、コートでもないどこかへと連れていかれる。
不安よりも、いつも冷静な彼らしくない行動に驚いて引き留めた。
「ストップ!ストップ!手塚くん!」
「……なんですか。」
「これから、祝勝会でしょ?」
「そうですね。」
「そうですね、って…。部長がいないと始まらないんだから、行かなきゃダメだよ…?」
真っ直ぐに見つめられて、どことなく居心地が悪くて視線を逸らした。……あれ、手塚くんって…こんな子、だったっけ……?
「場所は分かっているので大丈夫です。」
「そ、それでも…。」
「『それでも』…なんですか?」
「……っ。」
手を引かれて、距離が近くなる…。
見上げなきゃ顔が見えないくらいで…。
「名字先輩。二年前の約束……覚えていますか?」
「……!」
「忘れてしまいましたか…?」
「───お、ぼえてる…。」
***
『名字先輩…っ!』
『ん?なあに?手塚くん。』
『僕が…、僕らが全国優勝したら、僕とお付き合い、してくれませんか…っ!』
可愛い後輩からの突然の告白だった。
真剣な表情をして、真っ直ぐに私を見つめている。
『ありがとう、手塚くん。君の気持ちはすごく嬉しい。でもね、それは出来ない…かな。』
『……どうして、ですか…?』
『なんていうのかなぁ…。君には純粋にテニスを楽しんでもらいたい。だから、優勝したら付き合うとか雑念は持っていて欲しくないから…、ね。
あ、君のことが嫌いだから、とかじゃないからね?そこは勘違いしないで。』
くしゃり、と私よりも背の低い彼の頭を撫でると、納得したようで、してない顔で私を見上げている。
意外と彼は頑固な子だと、当時の男子テニス部の部長をしていた祐大とよく話をしていた。
『……じゃあ、こうしよう?君が変わらずにテニスが大好きで、全国大会を優勝して、それでも変わらずに私のことを好きでいてくれたら、お付き合いしてくれる?』
子供騙しのような約束。きっと、彼が三年生になった時には忘れているだろう。
その時は………そう、思っていた。
「……まさか、俺が忘れているとでも思ったんですか?」
「いや…、そうは思ってないけど…!でも…っ。」
「俺は変わらずにテニスが好きで、あなたが好きなままです。優勝もしました。……あなたは、名字先輩は……どう、ですか?」
ああ…。彼はこんなにも、私を想っていてくれたんだ…。その想いがとても嬉しくて、じわりと温かいものが胸の奥に広がっていく感覚が、した。
私も、彼が……手塚くんが好き…。
だけど、言えなかった…。
あの時、男子だけじゃなく女子テニス部も全国へはいけなかった。
大会の二日前、私は事故に遭い利き手だった左腕を骨折し、部長をしていた私は絶望していた。悲願の全国優勝……。せめて、どちらかが手にできたらいいと……。
「先輩たちがなし得なかった、全国優勝。俺たちで、勝ち取りました。……いえ。あなたたちが俺たちに想いを託してくれたから、優勝出来ました。」
「手塚くん…。」
「名字先輩、あなたが好きです。ずっと…。俺と付き合ってくれませんか…?」
あの時と同じで、真っ直ぐな瞳で私を見つめる…。
違うのは、私が彼を見上げていること…。
「…ん。私も、手塚くんが好き──」
全部言う前に、抱きしめられた……。
とくん、とくん…、と彼の胸に当たる耳から聞こえる音は少し、早かった。
「……緊張、してる?」
「試合、よりは…。」
その言葉に、笑ってしまった。
彼らしくて、彼らしくなくて…。
「手塚くん、優勝おめでとう。」
「ありがとうございます。」
身体を離して、手を差し出した。
それを強く握る、握手。
握った彼の手が、熱かった──
あの時の私が願ったものを手にした彼に最大の賛辞を。
ありがとう。
そして
これからもよろしくね。
fin.
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後書き(08.05.18)
テニプリで手塚夢でした。
去年の手塚くんの誕生日夢書いたぶりですね…。
実はFF10の原作沿い長編の夢主(うちの子)は、元々テニプリの夢小説を書いていた時の子をそのまま使っています。なので20年選手ですね…(設定とか細かい違いはありますが)
手塚くんの顔を見たら思いついた話なので、あまり深く考えないで読んでいただけると嬉しいですw
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