短編(FFX)
ナマエ
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「……………。」
「…………。」
旅行公司の外。木陰で抜き身の太刀を手入れしている男のその作業の様子を、じ……っと見つめている少女。
「……見ていて楽しいのか?」
「え?うん。楽しいよ。私、こういうの見てるの好きなの。」
手入れをしている手元から目線を上げ、にこりと笑うナマエ。
それは、暇つぶしに……というよりは、職人の作業を見ているよう。
しかし見られている方は少し居心地が悪そうだった。
「……部屋に戻れ。」
「えー?部屋に戻ってもすることないもの。見てちゃダメ?」
「……はぁ……。刃には触るなよ。」
「もちろん!アーロンの邪魔、しないようにしてる。」
首を傾げ聞いてくる。それを無下にすることは難しかった。
互いに何かを話すわけでもなく、静かな時間が流れていく。
時折、心地の良い風が吹き鳥のさえずりが聞こえる。
風に流される青葉の音が重なり、辺りは穏やかだった。
その時、左の肩に僅かな重みを感じた。
アーロンは手を止め、顔をそちらに向ければ己に寄りかかる形でナマエが目を閉じていた。
「……おい、ナマエ。」
「……ん、ぁ…?」
「寝るなら部屋に戻れ。」
「ん……?ねてないよ……?」
ふにゃりと笑うナマエだが、その笑い方は眠さを我慢しているものだった。あと数年も経てば成人するというのに、眠たげに目を細めるその顔は、幼い頃と何一つ変わっていなかった。
そう考えている間にもナマエは、うつらうつらと船を漕ぎ続けている。一瞬、後ろに倒れそうになるが持ち堪え、眠気を無くすように手で目を擦るが効果はなく、ナマエは小さく唸った。
アーロンはひとつ息を吐き、手入れをする手を止めた。あぐらをかいていた足を解き、片方だけ前に伸ばす形にし、ナマエの肩を軽く掴みその足の、太腿の上へと頭を置く形にさせた。突然のことにナマエは驚いたのか、ぱちぱちと瞬きを繰り返しアーロンの顔をそのまま見上げた。
「……アーロン……?」
「どうせお前のことだ。天気が良いから、このままついでに昼寝でもしようと考えているんだろう。船を漕いで怪我でもされたら目も当てられん……。そのまま寝ろ。」
アーロンの呆れたように言われた言葉に対しナマエは笑った。
「えへへー……。」
「……変な笑い方をするな。」
「だってアーロン、優しいんだもん。」
その言葉を言われ、照れ隠しなのか、アーロンは左手をナマエの目を覆うように置いた。
「アーロンの手、あったかいし大きいね……。」
「……男だからな。」
「あったかいから、眠たくなっちゃう……。」
「寝ろ。……しばらくこうしていてやる。」
「ん……ありがと……。」
アーロンは言葉通りにしばらくそのままでいた。
ナマエの静かな寝息が聞こえてきたのは、それからすぐのことだった。
現実世界とは違う。便利な機械や車など無いこのスピラの旅はナマエにとっては過酷なものだろう。
何をするにも、全てが己の肉体のみ。ナマエは体力がある方だとは思うが、やはり緊張や恐怖など、馴れない環境で本人が気付かない振りをしている。仲間の前では気丈に振る舞ってはいるが、ふとした瞬間に表情が曇り、誰も見ていない時だけ小さく息を吐く。そして、また無理矢理笑顔を顔に貼り付けているその横顔を何度見たことか。
「……ナマエ。ひとりで抱え込むな───頼れ。」
膝の上に頭を乗せ、眠るナマエの頭を優しく撫でるその手付きは、まるで壊れ物を扱うかのように酷く、優しかった。
まだこの想いは口には出せない。
いつかの、その日までは───
fin.
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