短編(FFX)
ナマエ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ご注意
【君と、もう一度】が完結していませんが、夢主の記憶が戻った後の『もしも』のお話です。ifルートとしてお楽しみください。
───記憶が戻った。小さかった頃のことも、雪の日のことも、スピラを旅したことも全部……思い出した。
「ナマエ。」
「アーロン……。」
「帰るぞ。」
「うん…。じゃあ、また明日。」
「あ、……また、明日…。」
アーロンが迎えにきて、同じ学部の子に別れを告げる。車に乗り込み、私がシートベルトをしたのを確認したアーロンはゆっくりと車を発進させる。
「……何を話していた。」
「え?」
流れるいつもの街並みを見ていると、運転席から不意に話しかけられた。そちらに顔を向ければ、真っ直ぐ前を向いてはいるけど、眉間に皺が寄っていた。
「別に…。週末に買い物、行かない?って誘われただけだよ。」
「駄目だ。断れ。」
「え…?でも…。」
「週末は俺と一緒に居るんだ。」
そう言われて少しだけ反論した。
『週末は、出張で父さんと一緒に行くって言ってたじゃない』と。だけど、返ってきた言葉に耳を疑った。
『俺は行かない。碧人にも了承は得ている。俺の代わりは他の者に行かせるように手配済みだ。』
「だから、週末は俺と一緒だ。」
「……分かったよ。断りのメッセージ送る。」
「打ち終わったら、送る前に見せろ。」
短く返事をして文章を打ち込んでいく。
《ごめんね。彼氏にダメって言われちゃった。私抜きで楽しんできてね!》
……当たり障りのない文章にしたつもりだけど。
大丈夫かな……。
「書いたよ。」
「……少し待て。信号が変わったら確認する。」
そう言ってから、三つ目の信号で捕まり、スマホを見せた。文章を読む目が動き、『それでいい。送れ。』とだけ。
……大丈夫だったみたい。以前も似たようなことがあり、《用事が出来て》と書いたら、機嫌を損ねられた。『俺は用事なのか』と……。じゃあ…と言って《彼氏に》と書き直せば、満足そうにアーロンは頷いた。
記憶が戻ってから、ずっとこの調子。ずっと過保護。
過保護過ぎて行動が制限されている。
……確かに、ついこの間まで、記憶がなくて危なっかしいって心配する気持ちも分かる。
「アーロン。心配し過ぎだよ。」
「お前に何かあってからでは遅い。」
「……ほんと、過保護なんだから。」
呆れた顔でアーロンを見ても“それが当然だ”と言わんばかりの表情。でも、アーロンの気持ちは嬉しかった。
***
「ただいまー…っと。」
「ナマエ。」
アーロンと一緒に住んでるマンションに帰ってきた。
靴を脱いで、上がった瞬間に低い声で呼ばれる。
振り向く前に背後から抱きしめられ、髪をかけ分けて首にアーロンの唇が触れる……。ああ…、これは……。
「ん…。どうしたの?」
「…………。」
「さっきの子に、嫉妬した?」
「……悪いか。」
「ううん。全然。」
アーロンの大きな手が、胸へと伸びてくる。
───“いつもの”合図。
アーロンが私の首にキスする時は、“したい”のサイン。
「……お夕飯、まだだよ…?」
「夕飯は好きなものを頼めばいい。それよりも先に風呂だ。」
「ん……。わかった。」
雑に靴を脱いで、手を引かれて脱衣所へ。
雑に服を脱がされて、浴室に入ると乱暴なキスをされた。
……今日は相当、ご立腹のようだった。
アーロンは同期の男の子たちだけじゃなく、女の子にも嫉妬する。
電話も、メールもメッセージアプリも、なにもかもアーロンのチェックが入る。
一度、講義の内容を教えてほしいと、その日お休みだった同期の男の子からのメッセージに対して『これはなんだ?』『この男とどういう関係だ』と、強く問い詰められたことがあった。
『ただの同期で同じ学部の男の子だよ。今日、体調が悪くてお休みだったから講義の内容教えてほしいってだけだよ?』そう言ったけど、ダメだった。
酷いことはされなかったけど、朝になるまで離れることがなかった。身体のあちこちが痛くて、色濃く付けられた所有痕。噛み跡。
───“誰にも渡さない”
言葉にしないけど、それらが物語っていた。
アーロンの強い独占欲と嫉妬……。
***
目が覚めた。隣で眠っているはずのナマエがいない。ベッドを抜け出し、寝室を出る。
「……っ…、蜘蛛の巣…?」
リビングへと向かう途中、顔に不快感を感じ、手で拭う。目には見えないが、一本の蜘蛛の糸が張り付いた。それを払いながらリビングに入る。
そこには朝日を浴びながら、何も纏わず裸体をさらけ出しているナマエがいた。
目を細め、己の指先を静かに見つめている。
その指先には一匹の蜘蛛。
その細い指先から糸を垂らし、下へ下へと向かう蜘蛛をナマエは窓を開けて外へと逃した。
「おはよう、アーロン。」
「ああ…。」
俺の存在に気付き、微笑んで近付いてくる。
ぺたぺたと足音を鳴らし、緩く抱きつく。
ナマエの柔らかい肌が吸い付くように。
「……どうした?」
「ううん、なんとなく。」
先程とは違う。少女のようなあどけない笑顔を向けてくる。……こんなにも、違うものなのか……。
「んっ…。もう、アーロン……。」
「なんだ…?」
「“なんだ?”じゃないよ…お腹に当たってる……。」
「お前の所為だな。」
「あ。ひどいっ!」
ナマエを抱きしめた。風にあたり、少し冷えた体温を取り戻すように……。
「───ねえ、アーロン。」
「なんだ…?」
「私のこと、好き?」
「……当たり前だ。手離すなど出来ん。」
「……嬉しいな。」
───そのままナマエを求めた。何度も、何度も……。ナマエも俺を求めて、しがみつく。その爪が背に食い込んでも、その痛みすら愛おしい……。
誰にも渡さない。渡してなるものか。
俺がナマエの番というのならば、死が俺たちを引き裂くまで未来永劫……いや、死してもなおナマエを離すことは断じてない……。
***
「ナマエ。最近、アーロンとはどうなの?仲良くしているかい?」
「うん。普通だよ。」
「普通って…。その割にはとても満足そうにしているようだけど?」
父親の碧人と久しぶりの親子の会話。
最近はずっとアーロンと共にしていた為、本当に久しぶりに会った。
ナマエは碧人の言葉に、手にしていたティーカップを静かに置いた。
「そう?でも、本当に普通だよ?アーロンって、可愛いの。私がいないと何も出来ないんだ。」
子どものような笑顔で言うナマエの纏う空気が変わったのを碧人は感じ取り、紅い瞳を目を細めた。
「……ヤキモチ妬きで、寂しがり屋で、欲しがり……。だから、私がそばにいてあげなきゃ。……ずっと、ね。」
「……ナマエ?程々にね?」
「ふふっ。はぁい。」
ナマエはテーブルのケーキをひとくち運ぶと、口の端に生クリームが付き、舌を出して絡めとるように舐める。
その時、窓の外で蜘蛛の糸が太陽を浴びてきらりと光る。そこに迷い込むように一羽の小鳥が、蜘蛛の糸に絡め取られ藻搔いていた。
それを見たナマエは楽しそうに微笑んだ。
fin.
──────────────────────
後書き(08.06.22)
どうしてもヤンデレアーロンが書きたくて書きました。(本編では書けないので…)アーロンがナマエを捕らえているように見せかけて、本当はナマエがアーロンを捕らえている……。鳥籠の鍵の持ち主はどっちですかね…(結局は共依存)
3/34ページ
