短編(FFX)
ナマエ
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ふと、寒さで目が覚めた。
部屋の小窓に雨粒があたって音を鳴らしているのが聞こえた。
毛布に包まるけど、眠気は寒さによってどこかへといってしまった。こうなっては寝たくても寝れないのは分かり切っていること。毛布を身体に纏わせ部屋を出た。
静まり返る飛空艇内を歩き回る。いつもは飛空艇の駆動音と人の話し声、騒がしいと思えるほどなのに、今は雨音だけが響いている。
それが、恐ろしくも感じて幻想的にも思えた。
しばらく歩いていると人影が見えた。人のことは言えないけど、こんな時間に誰だろう…。そう思って近づくとそこに居たのはアーロンで…。何かするわけでもなく、ただ立ち尽くし、真っ暗な外をガラス越しに見つめていた。
こつんと鳴った私の足音に気が付いたアーロンがこちらを見やった。だけど、何か言葉を発する訳でもなくて…。そのままアーロンの隣に立って同じように外を見つめてみた。
「どうした。眠れんのか?」
「…ううん。寒くて目が覚めちゃった。」
「そうか。」
「アーロンも?眠れない?」
「……元々、睡眠を必要とする身体ではないからな。」
「…ごめん。」
謝ると、くしゃりと頭を雑に撫でられた。
その雑ささえ愛おしく感じてしまう…。
「だが、お前は睡眠が必要な身体だ。休まんと明日に響くぞ。」
「…分かってるけど…。寒いんだもん…。」
毛布を掴む手がかじかむ。
スピラは温暖な気候だけど、時折天気によってひどく冷える時がある。今は飛空艇が停まっている場所も関係しているのだろうけど、いつも以上に冷え込んでいた。
冷えた手で、毛布の上から肩を擦っても効果はイマイチなかった。
「……来い。」
「え?あ、アーロン?」
短くついて来いと言ってどこかへ歩き始めるアーロンを慌てて追いかけた。重い足音と、忙しなく鳴る足音。その音が静かな飛空艇内に重なる。
「入れ。」
「…ここ、アーロンの部屋だけど…。」
「…早くしろ。」
早く入るように急かされて、部屋に入った。
しかし、何かあるわけでもなく立ち尽くしているとアーロンに手を引かれそのままベッドへと連れて行かれる。
「え、な…なに…?」
「…寝ろ。」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと、手を離してベッドに座らされる。ぱちぱちと瞬きをしてアーロンを見上げるとため息をつかれた。
「な、なによぅ…。」
「起きていても得にはならん。……寝るまでそばにいてやる。だから、寝ろ。」
不器用すぎる優しさに笑ってしまった。
アーロンには睨まれたけど、気にならない。
その視線が照れ隠しだというのが分かっているから。
「ね。アーロン、眠くなるまでお話ししよ?」
「…ナマエ…。お前、寝る気がないだろ。」
「そんなことないよ?眠くなったらちゃんと寝るよ、約束。」
そう言えば、ため息を吐かれた。
そのまま隣に座ってれる。触れる肩がほんのり温かくて、頬が緩んだ。
「…なにを笑っている。」
「ううん。なんでもない。」
隠せない笑みを毛布で隠した時だった。
ほんの少しだけ、アーロンの眉がぴくりと動いた。…動かした、というよりは何かに反応したように…。
「…アーロン。右目、痛い?」
「…なぜだ?」
「なんか、引き攣ったように見えたから…。」
アーロンの顔を覗き込むように見ると、目を細められた。
「…冷え込むと、な。少しばかり傷が引き攣る。」
「……触っても、いい?」
「あまり良いものではないぞ。」
「嫌だったら言って。」
立ち上がり、アーロンの目の前に立つ。
サングラスに指を掛けて外す。
なんだかサングラスの無いアーロンを見るのは、少し新鮮だった。
そっと、右目の傷に触れようとした時、自分の指先が冷え切っていることを思い出した。
「ね、アーロン。少しだけ上、向いて?」
「…こうか?」
「うん。」
毛布越しにアーロンの頬を両手で包み、その右目に軽く触れるだけのキスをした。
唇を離し、アーロンの顔を見ると少し驚いた表情をしていた。
「…ナマエ、お前…。」
「嫌だった…?」
「そうではない…。」
「…じゃあ、なに…?」
逸らされた視線に、問い掛けた。
頬にあてた手を毛布ごと握りしめられる。
「…覚悟が揺らぐ。」
「……うん。そうだね。私も、一緒。」
そう、呟いて再びその瞼にキスをした。
でも止められることはなかった。
瞼に、額に、頬に…。何度も唇を落とした。
「…止めないの?」
「止めた方が良かったか?」
「……ううん。お願い、止めないで…。」
震え掛けた声を抑えて、抱き付いた。
頬擦りをした。ちくちくとアーロンの無精髭が刺さるけど、その小さな痛みすら愛おしくて…。
「……ごめんなさい…。もう少しだけ、こうしていたい…。」
「…ああ、構わんさ。」
アーロンの腕が腰に回り、緩く、でも決して離れることのないように抱きしめられた。
愛しい気持ちが溢れ出て止められなくなってしまう。
……アーロン、大好きだよ。
そう、心の中で呟いた。
「…傷、少しはマシになったかな…。」
「ああ。……ありがとう、ナマエ。」
それ以上は、互いに何も言わなかった。
あなたの足枷にはなりたくないのに…。
この胸の中にある、あなたへの想いが追い縋る…。
愛して欲しいと──────
fin.
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後書き(08.04.02)
いつもはメモ帳に下書きをしてから、こっちに貼るのですが、久しぶりに一発書きです。
アーロンとナマエの互いに好きなのに、それ以上を言葉にしてはいけない…。そんな感じを出したくて書いてみましたが…いかがでしょうか…?(´・ω・`)
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