短編(FFX)
ナマエ
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始めに
こちらのお話は昔話の桃太郎をベースにしたギャグ夢小説です。アーロンが普通にセクハラかましてくるので苦手な方はご注意下さい。
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むかしむかし………といっても、それほど昔ではないころ。
ある村にアーロンと呼ばれる男がいました。
アーロンは長い間、放浪の旅に出ていましたが、ある時立ち寄った村に古い友人が住んでいました。
「やあ、アーロン!久しいね!」
「…ブラスカ、か?」
アーロンの名前を呼ぶ男。ブラスカと呼ばれた男は懐かしそうにアーロンを抱きしめました。
「いやあ、10年ぶりかい?老けたねえ。」
「………お互い様だろう。」
「はっはっはっ!そうだね。そうだ、良かったらうちに来ないかい?ユウナもきっと君に会いたいと言うよ。」
昔と変わらない笑顔でブラスカはアーロンを家へと招き、アーロンはブラスカの申し出に頷きました。
「…そう、だな。少し邪魔しよう。」
「是非そうしてくれ。」
ふたりはブラスカの娘、ユウナが待つ家へと向かいます。
「ユウナ、帰ったよ。」
「お帰りなさい!父さん!……あれ?」
「ほら、ユウナ。アーロンだよ。前に会った時、お前は七つの頃だったな。覚えているかい?」
「もちろん!アーロンさん、お久しぶりです!」
「ああ。……母親のように綺麗になったな。」
アーロンがそう言うとユウナは照れたように笑いました。
「もうっ!アーロンさんったら!」
「そうだろう?ユウナは本当に妻に似て綺麗になったよ。」
「父さんまで…っ!」
アーロンとブラスカは笑い、ユウナは顔を赤くして夕餉の支度で台所へと引っ込みます。
「アーロン、今日はうちに泊まると良い。久しぶりの再会だ。この10年の話でもしながら酒でも呑まないか?」
「ああ、そうだな。」
ふたりはユウナの手伝いをし、早めの夕餉と晩酌を始めました。
久しぶりに友と語り合い、酒を酌み交わす。
静かに夜は更けていきます。そんな時でした。
「…そういえば、アーロン。都の方には行ったかい?」
「…いや。人が多い場所は好かん…。」
「そうか。いや、都の方では鬼が出ると風の噂で聞いたからね。」
「……鬼?」
ブラスカの言葉にアーロンは隻眼の目を細め険しい表情になります。
「ああ。六尺六寸の大柄の鬼で都の若い娘を襲うらしい。」
「…わたしも都から逃げて来た人から聞きました。酒癖がとても酷くて、“都中にあるお酒を差し出せ、さもなくば都の女、その全てを喰ってやる”と…。」
ユウナは聞いた話を思い出し、震えます。
都から随分と離れたこの場所に影響はないでしょう。
しかし、いつ何時、鬼たちが来るかも分かりません。
「それに、この村から少し行った場所、海を渡った所にある島にも鬼がいると聞く。」
アーロンは手にした盃に注がれた酒をひとくちで飲み干し笑います。
「ふっ……。面白い。ひとつ腕試しといこうか。ブラスカ、俺は明日その島へと向かう。簡単でいい。地図を書いてくれ。」
「アーロン…。いくら君が腕の立つ剣士だとしてもひとりで向かうなど無謀すぎる。」
アーロンの言葉にブラスカはやめるように止めます。
しかし、目の前の男が言って聞くような人物ではないとブラスカも理解しています。
アーロンの琥珀色の瞳が、蝋燭の灯りを受けてゆらりと揺れます。
「挑み、敗れれば俺はそこまでの腕しかないという事だ。」
「だからと言って、命を粗末にするのは私が許さないよ。」
「では、帰ってくるとしようか。まだ、お前との酒は呑み足りんからな。」
アーロンはそう言うと、空になった盃をブラスカに差し出しました。ブラスカも一瞬、目を見開きますがすぐに笑いアーロンの盃に酒を注ぎます。
***
翌朝。日の出よりも早くに起きたアーロンは、鬼の住む鬼ヶ島を目指すために準備をしていました。
その時、ユウナがアーロンのそばにやって来ます。
「アーロンさん、これ持っていってください。」
「……これは?」
「お団子です。腹持ちが良いように作りましたから。」
「すまんな。」
ユウナから団子を受け取ったアーロン。
そこにブラスカもやって来ました。
「アーロン、もう出立するのかい?」
「ああ。昨日お前から聞いた限りでは、そんなに遠くない場所だ。この時間に出れば、遅くても昼過ぎには着けるだろう。」
「…無理をするなよ。」
「ふっ、善処しよう。ではな。」
こうしてアーロンはブラスカとユウナに見送られ、鬼ヶ島を目指し始めました。
薄暗い空が段々と明るくなり、朝日がアーロンを照らします。
色々割愛しますが、鬼ヶ島を目指している途中に出会った、ティーダが無理矢理ついてきて、ふたりで鬼ヶ島を目指すことに。
「……何故、ついてくる。」
「え?なんか面白そうだから?」
旅行に行く気分の若者。ハッキリ言って協調性の欠片を持ち合わせていない二人組。
アーロンは小さくため息を吐き、海を目指します。
そんな時でした。
「アーロン。その腰に下げてる袋ってなんスカ?」
ティーダがアーロンの持ってる袋に興味を示しました。
アーロンはそれを手に取り、袋を開けるとひと口サイズのお団子がみっちりと入っていました。
「(……やけに重いとは思っていたが…。どれだけ詰め込んだんだ…。)…古い友人の娘が今朝持たせた団子だ。」
「団子っ!?食う食う!オレ、腹減ってんだよー!」
ティーダはアーロンが“良い”と言う前にその袋を取り、団子を頬張り美味しそうに食べました。
「……食った分、働いてもらうぞ。」
袋を取り返したアーロンは、中から団子を数個取ってティーダに渡しました。
そうこうしているうちに、ふたりは海に辿り着きます。
ブラスカから渡された地図によればこの場所から、鬼ヶ島へと渡れるそうです。
アーロンは辺りを見渡すと、船の手入れをしている漁師を見つけ、近づきます。
「…おい。」
「へい?…ひぃっ…!?お、鬼っ……?!」
「…誰が鬼だ。」
見た目が怖かったのか、漁師はアーロンを見て小さく悲鳴をあげました。
「……ぷっ……鬼だって。」
後ろで笑ったティーダは問答無用でアーロンに拳骨をもらい、頭を抱えて蹲ります。
『口は災いの元』とはまさにこの事。
アーロンはティーダを放置し、漁師と話し始めます。
「……鬼の住む、鬼ヶ島へと渡りたい。船を一隻借りることは出来るか?」
「そ、それなら…。あそこに行けば鬼ヶ島へと渡れますが……。」
漁師が指差した方向を見ると、桟橋あるのが見て分かりました。アーロンは短く漁師に礼を言うと、その桟橋に向かいます。
桟橋に着き、立て看板があることに気付き、内容を読みました。
【鬼ヶ島行き連絡船乗り場。】
「………連絡船があるのか……?」
「あ。アーロン。ちょうど島の方から船が来るッスよ。」
ティーダが海の方を見て言いました。
確かに鬼ヶ島がある方角から船が一隻、こちらへと向かって来ます。
「おや、アンタら、鬼ヶ島に行くのかい?」
「……ああ。」
「そうかいそうかい。他には…誰も居ないみたいだな。なら、すぐに船を出そう。」
そう言うと、船を操舵する男はふたりに乗るように促します。ふたりが船に乗り込み、座ったのを確認すると船を動かし始めました。
「十分ほどで着くから。その間、のんびりしていなよ。」
船を操舵する男は“今日は天気も良いし、運が良けりゃクジラでも見れるかもなあ”と笑いました。
しばらくするとクジラではなくイルカの群れが船の周りと楽しそうに飛び跳ね始めました。
「あっ!アーロン!イルカっ!」
「………煩い…。」
無邪気にはしゃぐティーダにアーロンは頭を抱えました。
途中、本気で海に落としてやろうかとも考えましたが、ティーダが泳ぐのが得意だというのを思い出し諦めました。
その時でした。船が鬼ヶ島に着きました。
船は島の桟橋に着けられ、アーロンとティーダは船を降りていきます。
「そのまま道沿いに進めば鬼の住む場所に着くよ。」
男はふたりにそう言うと、船を旋回し元来た方向へと進んでいきます。去り際に“次に来るのは一時間後だからな”と教えてくれました。
ふたりは男を見送り、教えられた道を進んでいきます。
その道は手入れがされていて、所々に色とりどりの花が植えられていました。
「……なんか、めちゃくちゃ“女子!!”って感じがすんなあ…。あ。」
ティーダが何かに気付いた声を出します。
ふたりの目の前には立派なお屋敷。
そこには立て看板がありました。
【御用の方はお声がけください。】
「ごめんくださーーーーいっ!!!???」
ティーダが馬鹿でかい声を出した。
それと同時に再びアーロンの拳骨がティーダの頭に綺麗に入った。
あまりの痛さに呻き声すら出せずに頭を押さえるティーダ。
その時、門が開き、顔を覗かせたのは細身の幸の薄そうな男だった。
「はい?どちら様で…。」
「……鬼を退治しに来た。」
「…かしこまりました。それでは、どうぞ中へお入りください。」
幸の薄そうな男は、少し考えふたりを門の中へと案内した。
「…ただいま主人をお呼び致します。今しばらくお待ちください。」
そう言うと男はアーロンとティーダをその場で待たせ、主人を呼びに行った。
「…なんかさ、オレのイメージしてた鬼の棲家じゃないんスけど…。」
「…そう、だな。」
それはアーロンも感じていた事でした。
ブラスカから聞いていた鬼の話とは全く似ても似つかない。どこからどう見ても、手入れの行き届いた金持ちの屋敷にしか見えなかった。
その時だった。屋敷の奥から誰かがこちらへと向かって来ていた。
「大変、お待たせしました。私がこの屋敷の主人です。」
ふたりの前に現れたのは、どこに鬼の要素があると言うのだろうか。とてもお淑やかな少女だった。
少女は、ふたりに綺麗なお辞儀をした。
「えっと…。“鬼退治に来た”…と、お伺いしておりますが…。」
「…っ、ああ。そうだ。」
「……かしこまりました。では、僭越ながら私がお相手させていただきますね。」
「待て。お前は……鬼、なのか?」
「……はい。」
アーロンの言葉に少女は少し困ったように微笑んだ。
その表情を見たアーロンは自分の胸が騒ついたのを感じた。
「姫様、お召し物を…。」
「ど、どうしても…?」
「ええ。しきたりですので。」
「うう…。」
少女は、側仕えの男に促され着物の帯に手を掛け、恥ずかしそうに頬を染めて解いていく。
「お、おい!!いきなりなにを…っ!!」
アーロンはティーダが見ないように力任せに顔面を掴み、違う方向を向かせる。ティーダが痛いと叫んでいてもお構いなしで、自分は凝視している。
「…やっぱり、恥ずかしいよぉ…っ。」
着物を脱いだ少女は、虎の毛皮で出来た衣装を纏っていた。
しかし、下はパンツではなく超ミニスカ。
下手をすれば下着が見えてしまう短さだった。
そして、ぽよん…と揺れる大きな胸。
「…………でかい。」
「え?」
「……いや…なんでもない。」
「そう、ですか?……それでは…。鬼ヶ島当主として、あなた様を返り討ちにさせていただきます。」
少女は、側仕えの男たちが運んできた金棒を、軽々と片手で持ち上げた。
アーロンもずっと掴んでいたティーダの顔面から手を離して愛刀の太刀を手にする。
ティーダは顔面を掴まれていたダメージがデカすぎて蹲ったまま。
「ちなみに。」
「…?」
「お前は独り身か?」
「は…?え、ええ…まだ嫁入り前ですが…。それが何か関係あります、か?」
「お前の男の好みはなんだ?あと、名前は?」
「ええっ…?!……そ、そうですね…。私よりも強い方、でしょうか。…名前はナマエと申しますが…。」
「そうか。分かった。」
アーロンの怒涛の質問攻めに困惑しながらも律儀に答える鬼の少女、ナマエ。一体、何が分かったのかが分からないが、アーロンは満足そうに口角を上げた。
「では…、参ります…!」
ナマエの掛け声を合図に、戦いの火蓋は切って落とされた。と、思ったが既に勝負がついていた。
ナマエの振り下ろした金棒が粉々に砕け散り、アーロンはナマエの腰に腕を回し、もう片方は顎を持ち上げ目線を合わせてきた。
「───へぇ??」
「勝負はついた。ナマエ、俺の女房になれ。」
「………んえええええっ!???」
勝負の決着とアーロンの発言と行動に、頭のキャパを超えたナマエが顔を赤くし素っ頓狂な叫び声をあげた。
「いやいやいや!!意味わかんないっ!!」
「お前に惚れた。」
「は?いやっ!?ちょっと待って!?一旦落ち着こう?ね?ね?」
「俺は至って冷静だが?」
「誰かぁぁっ!!この人、止めてぇ!!」
ナマエは涙目で叫んだ。腰に回された腕を解こうとしても馬鹿力で解けない。
そんなやり取りを見ていたティーダは若干引き笑いしていた。
「……ご愁傷様ッス。」
「ちょっとぉぉっ!キミ!この人の仲間なんだよねっ?!止めてよぉっ!」
「無理ッス。アーロン、言い出したら聞かないし。」
ティーダは腹が立つくらい良い笑顔でナマエにサムズアップを送った。
「さあ、お前の望み通りのお前より強い男が現れたわけだが。祝言はいつあげる?俺は今からでも良いんだがな?」
「…鬼っ!!この人、鬼ぃっ!!」
「ははっ!面白い冗談を言うな。ますます気に入った。」
アーロンはナマエを肩に担ぎ上げ屋敷を出て行った。
取り残されるティーダとナマエの側仕えの男たち。
「「ちょっと待てええええ?!!」」
***
「ちょっとっ!離し……って!どこ触ってるのっ?!」
「…ふむ。良い尻をしているな。安産型だな。」
「セクハラ!!それセクハラだから!!だから撫でるなぁっ!!」
「俺の子をたくさん産んでもらわんと困るからな。身体を冷やす格好は今後控えろ。」
「人の話を聞きなさいよぉぉぉぉっ!!!」
アーロンは人攫いの如く、泣き叫ぶナマエを鬼ヶ島から連れ出し、村に帰りつくとブラスカに“この娘と結婚する”と勝手に決め付け、祝言をあげてそのまま村に定住した。
「………なんなの、この人。鬼の私より鬼じゃない。鬼畜よ鬼畜っ…!」
「聞こえてるぞ、ナマエ。そんなに口が悪いと………今夜、分かっているんだろうな………?」
「やっぱり鬼ぃぃっ!!」
一方、都で暴れていたと言われていた鬼が村へやって来た。
それはブラスカとアーロンの友人、ジェクトで、酒を呑んで酔っ払った時の話に尾鰭が付いて鬼になってしまっていたという、酒癖の悪さが招いた誤解だった。
了
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後書き(08.03.03)赤ずきんに続きまして、童話・昔話シリーズです。
(今シリーズにした)
本当はキジにワッカ、サルにティーダ、イヌにキマリを配置しようかと思ったんですけど、置き去りになりそうだったので、ティーダだけ残しました。
そしてアーロンのセリフの一部に中の人ネタを使いました(笑)
クスッときたら嬉しいです_(:3 」∠)_
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