短編(FFX)
ナマエ
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「ねえ、離して?」
「嫌です。」
「……はぁ…。」
***
グアドサラムを抜け、雷平原に進もうとしたがグアド族の人曰く過去にあまり見ないほどの雷雨らしく、1日待ったほうがいいと言われた為、グアドサラムに戻り宿を取ろうとした時だった。
シーモアの側使えをしているトワメルさんがやって来た。
“シーモア様が是非、我が屋敷でお寛ぎくださいと申し上げております”と。
宿も全員が泊まれる程は空いていなくて、みんなと話し合った結果、シーモアのお屋敷にお邪魔する事にした。
……アーロンはずっと嫌そうな顔をしている…。
かと言って、ひとりで宿に泊まる訳にも行かず渋々といった表情をしていた。
トワメルさんについていきお屋敷に着くと、ひとり一部屋あてがわれた。来客用のお部屋みたいで、当たり前だけど宿とは違って大きなベッドだった。
いつもは誰かと相部屋だから、ひとりの時間が凄く久しぶりに感じる。
「ベッド、ふわふわで気持ちいいー…。」
───コンコン…。
「??はーい、今開けますねー。」
ベッドでゴロゴロしていると部屋のドアがノックされた。
誰だろう、そう思ってドアを開けた──。
「ナマエ、突然すまない。」
「シーモア?どうしたの?」
部屋を訪ねて来たのは、このお屋敷の主人であるシーモアだった。“どうしたの?”と聞けば“あなたと話がしたくて訪ねてしまった”と少し眉を落として笑っている。
「うん、いいよ。お話ししましょ。」
“どうぞ”と部屋に招き入れると、嬉しそうに笑うシーモア。なんとなくだけど、ルカで見た貼り付けたような笑顔じゃない…そう、思った。
「…って、お話ししましょって言ったけど、お屋敷の主様にお茶も出さないのは失礼よね。えっと、待っててね。今、お茶もらえるか聞いて───。」
“聞いてくる”そう言ってドアノブに手を掛けた時に、後ろからその手を握り締められた。
「…シーモア…?」
「…茶は要りませんよ。私はあなたとふたりで話がしたいだけです。」
「……そ、う?じゃあ、いい…のかな?」
握り締められた手に、シーモアの大きな、長い指が絡まる。いわゆる恋人繋ぎ。そのままで手を引かれ、ソファに座った。…………そして何故か私はシーモアの膝の上に座らされた。
「…なんで、ここ?」
「ふふっ、恥ずかしいのですか?」
「恥ずかしいわよっ!子どもじゃないんだからっ!」
“座るならせめて隣でしょ!”そう言っても、シーモアの片腕が私を逃さないようにガッチリとお腹に回されている。……細身に見えるのに、案外力があって剥がせないぃ…っ!
「…はあ…。」
「時にナマエ。この包帯は…?」
「え?ああ、これ?シパーフの背中に乗ってた時に、柱にぶつけちゃっただけ。大した事ないよ。」
どう足掻いても離してはもらえない事を悟って抵抗するのをやめたら、頭に巻いていた包帯を優しく撫でられた。スルスルと取って、そこにそっと触れれば傷は殆ど治りかけていて、瘡蓋になってるだけだった。
その時、視界がくるんと変わる。さっきまで見えなかったシーモアの顔が目の前にある。シーモアに横抱きの形に変えられた。……なんか、顔…近い…。
そう、思ったらシーモアの唇が傷口に触れた瞬間、心臓が跳ねた。
「へ?なっ…っ!?」
「傷跡が残らないように、おまじないです。」
「そ、そんなのしなくても大丈夫だから…っ。」
「そう言わずに。」
シーモアの胸に手を押し当て離れようとしても、その手を最も簡単に片手で握られ、額やら頬やらに口付けされる。
「す、ストップストップ!シーモア、ユウナの事が好きなんじゃないの?!なんで私にこんな事……っ!」
慌ててそう言うとシーモアは首を少し傾げて“はて?”みたいな顔をした。……ちょっと殴りたいかも、って思った。
「私が?ユウナ殿を?ご冗談を。確かに大召喚士ブラスカ様のご息女のユウナ殿と結婚すれば、スピラにひとときの夢を与えられましょう。しかし、その様なもので結婚してもすぐに関係は悪化するもの。私が本当に好いているのはあなたですよ、ナマエ。」
まるで、宝物を見るような紫色の瞳で、真っ直ぐに見つめられた。
「ナマエ、少し良いか?」
ノックを軽くしてアーロンが入って来た。
「……………。」
「あ、アーロン…。」
アーロンと視線がぶつかって、アーロンが固まる。
「おや、これはアーロン殿。淑女の部屋へ、ましてや相手の返事も待たずに入るとは…些か配慮が足りないのでは?」
「……そう言う貴様は一体何をしている…。」
「見て分かりませんか?愛しいナマエを抱き締めているのですよ。」
シーモアはそう言って、また私の頬に口付けを落としてくる。チラリと見たアーロンのこめかみに青筋が立ち始めてる…。
「し、シーモア…離してっ…!」
「嫌です。」
「ほう…?貴様は嫌がる女を無理矢理に手籠にすると…。こんな奴がエボンの老師とはな……エボンもとことん腐っているな。」
「アーロン殿、手籠とは人聞きの悪い。それに私にとってエボンの教えなどどうでも良いのですよ。愛しいナマエさえ私のそばにいてくれる…。それだけで構いません。」
…ワッカが聞いたら卒倒しそうな台詞をシーモアは平然と言ってのける。
と言うか!愛しいってなに!??ちょっとスルーしかけちゃったけど!!というか手籠って…!
「……出ろ。」
「望むところです。」
人が脳内で忙しくさせられてると思ったら、アーロンとシーモアは部屋を出て行った…。
「い、一体なんなのよぉ…っ。」
どうして良いか分からない感情を抑えるように顔を両手で覆った。
ふたりがどこに行ったか分からない。
…でも、私もちょっと怒りましたよ。ええ。
好き勝手するし、言ってくれちゃって…!
***
「…貴様、案外やるな…。」
「ふふっ…。アーロン殿こそ。流石、伝説のガードとうたわれるお方だ。」
シーモアとアーロンが屋敷に戻ってきた。
ふたりは泥だらけの傷だらけ。
しかし、勝敗はつかなかったようで。
そのままふたりでナマエの部屋へと向かいドアを開けようとした。
が、ドアは全く開かなかった。
「…ナマエ?」
「ナマエ?どうかされましたか?」
「……おお…、シーモア様に、アーロン殿。お戻りになられましたか…。」
そこにトワメルがやってきた。しかし、その表情はどこかよそよそしいというか、なんというか。なんとも言えない表情をしていた。
「トワメル?ナマエに何かあったのですか…!?」
「い、いえ。特段何かあった訳ではないのですが…。」
歯切れの悪いトワメルにアーロンが詰め寄る。
「話せ。何があった。」
「…ナマエ様から、伝言を預かっております…。
“シーモアもアーロンも、私の部屋に入るの禁止。必要以上に近寄らないで。触らないで。破ったら嫌いになるから。”……との事です。」
トワメルがナマエから預かった伝言を一字一句、全てを間違える事なく言い終わると、ふたりは固まった。
「「なんだと…?」」
ふたりの声が重なり、トワメルは伝え終わるとそそくさとその場を後にした。
「おい!ナマエ!ここを開けろっ!」
「そうです!ナマエ!これはあんまりだ!」
アーロンがドアを叩き、ドアノブを捻るがドアは開かない。それに対しふたりで抗議の声を上げる。
「…何してんスか?」
「…っ、ティーダ…。」
「君からもナマエを説得してくれないか…?」
「説得ぅ?…ったく、なにやらかしたんだよ…。おーい、ナマエ?」
傍迷惑そうな顔をしたティーダがふたりの前にやって来た。
よく分からないが、ふたりがナマエを怒らせてしまったのは、理解したようでドアノブを捻りドアを開けて中へと入っていった。
何故ドアが開いた?
あれだけ押しても引いてもびくともしなかったドアが最も簡単に開いた。
ふたりの考えが綺麗に一致した瞬間だった。
「ナマエー。外でおっさんふたりが喚いてるけど…。」
「いいの!あのふたりは放っておいて!…もうヤダ!知らないっ!」
「ははっ…だってさ。」
ティーダは半笑いで、ふたりを見た。
“オレが出来るのはここまでだ…じゃっ!”と、爽やかな笑顔で自分の部屋へと戻って行った。
その後、ナマエから接近・接触禁止令を食らったふたりが肩を落とし各々の部屋へと戻るのが目撃されたのはまた別のお話。
終われ
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後書き(08.02.16)
前々からシーモアのお話を書きたかったんですけど、中々思い浮かばなくて…。
当初は甘々の予定だったのですが、書き手がむず痒くなってラブコメというかギャグになってしまいました…(すみません…)
彼も可哀想な人生を歩んでるので、ちょっとでも幸せそうなお話を書けたらなと思っています。
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