短編(FFX)
ナマエ
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「…出来た…っ!」
お菓子を作るのは好き。だけど、今日この日のお菓子は特別で…。
「…受け取ってくれるかな…。いや、優しいから受け取ってはくれるだろうけど、甘いもの、食べてるのあんまり見た事ないし…。」
どうしてもネガティブな方へと思考が向いてしまう。
「っ、時間っ…!」
視界に入った時計を見て、慌てて支度をした。
作ったお菓子が崩れないようにそっと箱に入れる。
「…っと、先にメッセージ送っておかなきゃ…。」
スマホを指先で操作する。
《アーロン、お仕事終わった後に少しだけ時間ちょうだい。すぐ終わるから。》と。
「……送っちゃった…。あー…っ。もう!なるようになれ!」
作ったお菓子を持ち、コートに袖を通して家を出た。今日は季節外れに暖かい日だった。
***
アーロンの職場まで、あと少しのところでスマホが震えた。スマホの画面にはアーロンからのメッセージ。
《構わん。家まで迎えに行けばいいか?》
「〜〜…っ。」
そのメッセージを見るだけで、嬉しくて思わず顔がにやけてしまう。
「…顔が…。えへへ…。」
頑張って真顔にしようとしても頬が緩んでしまう。
にやけ顔のまま、職場に着いてしまった。
「(怪しい人になっちゃう…。平常心、平常心…。)」
ドキドキしてうるさい心臓を落ち着かせるように深呼吸をした。そういえば…と、アーロンからのメッセージに返事をしていないのを思い出した。
《会社の前で待ってるね。》
そう送るので精一杯だった。
「…アーロンのこと、好き…って言ったらアーロン…困るかな…。」
スマホをぐ…っと胸の前で握りしめて、深く息を吐いた。10年の片想いは厄介で…胸を締め付ける。
スマホの画面を見ればもう退勤の時間で、少しずつ会社から出てくる人がちらほらと見えてきた。
会いたくて、でも会いたくなくて…。
ちぐはぐな気持ちがずっと胸の中を占領して騒がしい。
「ナマエ?」
「…っ、あ、アーロン…っ。」
仕事終わりのアーロンはちょっとだけくたびれてるように見えて、でも、なんだかそれがカッコよく見えて…。自分でも顔が赤くなるのか分かるほどに、熱い…。
「どうした?何かあったのか?」
「え…っと…。その…。」
優しい声にアーロンの顔を直視出来ない…っ。
頑張れ、私…っ!
「顔が赤いが…。寒いのか?」
「──っ。」
そう言って自分のマフラーを私の首に巻いてくれた…。アーロンの、付けてる香水とアーロンの匂いが、する…。
「…!!こ、これ!渡したくて……っ…。」
「…?これは?」
アーロンに差し出した、赤色の小さな紙袋。
やっぱり顔を見れなくて、ずっとアーロンの手だけを見てる…。その大きな手が差し出した紙袋を受け取ってくれた。
「……だから…、その…今日…バレンタイン…だから……。」
最後の方なんか殆ど聞き取れないんじゃないかってくらいに小さな声になってしまった…。
「ナマエ。」
「は、はいっ!」
名前を呼ばれて、声が裏返った…っ。
恥ずかしい…。
「ありがとう。…お前から貰えるなんて思ってもいなかった。」
「…アーロン…甘いのあまり得意じゃないと思ってたから…。」
「ナマエから貰えるなら、甘くても不味くてもなんでも嬉しいぞ?」
「い、一応味見して大丈夫だったから…っ。美味しい…かは分からないけど、不味くはない…はず…です。」
アーロンの言葉に正直どう返して良いか分からなかった。“なんでも嬉しい”って…。
そんなに優しそうに笑って言われたら、もしかしたらって…思っちゃうじゃない…。
「…そういえば…。」
「……?」
思い出したようにアーロンが話し始めたのに首を傾げた。
「この国では女性から贈り物をするが、他の国では男からが主流らしいな。」
「え?あ、そうだね?」
「…ならば、俺からはこれをお前に贈ろう。」
そう言って、小さな箱をコートのポケットから取り出して、私の手のひらに乗せた。その手が少しだけ震えている。
「え、あ…アーロン…?」
「開けて良いぞ。」
そう言われて、少し震える手で箱を開けた。
そこには、小さなダイヤがついたピンキーリングが入っていた。
それが目に入った瞬間、目が霞んで、何も見えなくなって…、声が震えた。
「…っ、あーろん…っ、これ…。」
「今日はバレンタイン、なんだろう?ナマエ、お前が好きだ。」
ぽろぽろと涙が溢れて、止まらなくなった。
その涙を拭うようにアーロンの温かくて大きな手が私の頬を包み込む。
「泣くな、馬鹿者。」
「だって…っ、嬉しいんだもん…っ。」
「…ナマエ、お前の返事が聞きたい。」
ちゃんと、アーロンの顔を、目を見て言いたかった。
ゴシゴシと涙を拭って、見たアーロンの琥珀色の瞳は少しだけ揺れていた。
「…っ、もちろん…っ!私も大好きだよ!アーロンっ!」
私の、飛び切りの笑顔で抱きついた。
アーロンは驚いた顔をしてたけどしっかり抱き留めてくれた。
世界でいちばん、誰よりも大好きなアーロン。
「ずーっと、一緒にいようね!」
「ああ、ずっと一緒だ。」
きっとこの先、ケンカもするかもしれないけど、なんだかアーロンとならそれも楽しいって思えるの。
私を好きになってくれて、ありがとう。
happy Valentine!!
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後書き(08.02.14)
アーロンでバレンタインのお話でした。
すみません、今日がバレンタインだというのをすっかり忘れてました…(23:30に気付いた)
突貫工事なお話でしたが…どうでしょうか…?
(きっと後日訂正しそうな気がする)
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