短編(FFX)
ナマエ
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旅の途中。
旅行公司に荷物を置いて周りを散策していた。
この辺りは魔物があまり近寄らない、そう聞いていたから宿からかなり離れたところまで歩いてきてしまった。
あまり離れると小言を貰ってしまう、そう思った時、先程まで鳴いていた鳥たちが一斉に飛び立って行く。
「わっ…!…びっくりした…。」
「ギャッキャッ!!」
「っ!しまっ──!」
空へと飛び立つ鳥たちに驚いている隙を魔法を主に使う魔物から不意打ちを喰らった。
…声が出ない…!サイレスを掛けられた…っ!?
刀を鞘から抜き出して構える。
…あまり物理が効かない魔物だ…。
刀を握る手に力を込めて踏み込もうとした、その瞬間───
足場が崩れた。
「──っ!??」
ガラガラと音を立てながら足場と共に下へ下へと落ちていく。幸い石や土の下にならずに済んだ。
生き埋めだなんて御免だ。
どれくらい下に落ちたんだろう…。
上では先程の魔物が面白そうに手を叩いて笑い何処かへ去っていった。
「…っ。」
生き埋めにはならなかったけど、右脚に違和感がある。
かろうじて動くけど、動かす度に強い痛みが走る。
「(どうしよう…。声、出ない…っ。リュックに貰った万能薬は…最悪…部屋に置いてきちゃった…。)」
ため息を吐いたが、息は音も鳴らずにただ空気が吐き出されただけだった。
「(…とりあえず今は出来る事をしてみよう。…壁の亀裂に指は…かろうじて入る。…登れる、かな?)」
ぐ…っと、指先に力を込めて壁を登ろうとしたが、足に力が少し入った瞬間に痛みが強すぎて落ちた。
痛みに声が出そうになるもそれは無意味に終わる。
「(あー!もー!ホント、自分が嫌になる!……みんなに迷惑かけるの確定じゃない…!)」
そんなナマエに追い討ちを掛けるように、ポツポツと身体に冷たい雫が降り注ぐ。
「(嘘…雨…?!)」
遠くの方でゴロゴロと空が鳴る音が穴の底まで聞こえてきた。それと同時に空からの雫も大粒になってきていた。
***
ザアザアと降り注ぐ雨はナマエの体温を確実に奪っていく。それでも少しでも濡れないようにと、ナマエは身体を小さく丸め蹲っていた。
「(……ずっと、このままかな…。でも、そんなの…嫌だ…っ!)───っ!──!!」
まるでナマエの気持ちを反映させているかのように、雨足は強くなっていく。冷える指先を温めるように息をはあはあと吐きかけるが、効果はあまり無くナマエの身体は震え始めカチカチと歯が鳴る。それでも、微かな希望を捨てきれないナマエは大声を出そうとするが、それは意味をなさなかった。
「……!」
幻聴なのか、現実なのか。声が聞こえた気がした。
「(…私…何やってんだろ…。都合の良い幻聴まで聞こえ始めてる…。)」
「ナマエ!!何処だ!」
「…っ!!」
それは幻聴などではなかった。しっかりとナマエの名を呼ぶ声が耳に届いた。
しかし、声が出せない。どんなに叫ぼうとしても喉から出るのは空気が吐き出される音のみ。
ナマエは震える手で刀を掴み、鞘で石を叩いた。
────ガキン、ガチン…!
上手く力が入らないのを無理矢理抑え込み、両手で何度も何度も打ち付けた。その音が雨音に掻き消されないように。
「ナマエ!!」
「───っ!!」
その声はナマエが何よりも望んだ声だった。
ザザ…、と音を立ててその人はナマエの目の前に現れる。どのくらい捜していてくれたんだろう…、荒い息をしていた。名前を呼びたいのに…声が出なくてもどかしい…っ…。
「───っ!」
「ナマエ!」
アーロンがナマエの名前を呼んだ瞬間、ナマエはアーロンに抱き付いた。
「───っ!───っ!!」
「っ、ナマエ?どうした…声が、出ないのか?」
アーロンの言葉にナマエはこくこくと頷いた。
ナマエのその反応にアーロンは懐に手を入れて道具を取り出した。
「…万能薬が効くか分からんが…。ほら、口を開けろ。」
一粒、万能薬を取り出しナマエの口に転がして入れる。
それをナマエは飲み込み、喉が動く。
喉に蓋をされていた感覚が少しずつ消えていく。
まだ声が出ないんじゃ無いか…。ナマエの不安は消えなかった。
「…あー、ろん…っ…。」
「効いたか、良かっ──」
掠れた声が出た瞬間、ナマエは再びアーロンに抱き付いた。
何度も何度もアーロンの名を呼び、まるで幼い子どものようにアーロンの肩口に顔を埋める。
「っ、分かったから…!離れんか…!」
「やだ…っ!もう、このままここで死んじゃうんだと思った…。もう、アーロンに会えないんだって…!」
ぐずぐずと鼻を啜りながら抱き付くナマエを宥めるようにアーロンはとんとん、と背中を優しく叩いた。
「俺が…お前を死なせるわけないだろう。」
「アーロン…っ…。」
その言葉にナマエは涙を止めることが出来ずにいた。雨と涙が混ざった雫をアーロンは指で優しく拭う。
「戻るぞ。」
「ん…。………でも、どうやって?」
ナマエの言葉に、アーロンが固まった。
「…ロープとかってあるの?」
「………………ない。」
「え。」
“じゃあ、どうして下に降りてきてしまったのか”
自分の不注意で穴に落ちたナマエはその言葉を必死に飲み込んだ。が、顔に出ていたようでアーロンはその顔を見てナマエの両頬を摘み無言で左右に引っ張った。
「いひゃい!いひゃい!」
「………。」
アーロンは手を離し、ナマエは痛む頬をさする。
「うう〜…痛いよお…。」
「…お前が悪い。」
「だからって、本気で引っ張らなくても…良いじゃない…っ…。」
「……心配したんだ…。」
アーロンの小さくなった言葉にナマエは目をぱちぱちとさせた。
「うん…、心配かけてごめんなさい。」
ナマエはアーロンに抱き付いて謝った。
それを拒むことなくアーロンはナマエを包み込むように抱きしめた。
「…あいつらもお前を捜している。大声を出せば誰かしら気付くだろう。」
「ん。あ、アーロン。私、声出るから、もう魔法使えるよ。」
ルカでルールーが使ったサンダーの魔法を応用したものをナマエは万が一の時にと、教えてもらっていた。
“よいしょ…”と立ち上がるが、痛みでよろける。
それをアーロンは支えた。
「…足を怪我したのか?」
「ちょっとだけ…。」
「戻ったらユウナに診てもらえ。」
「うん。」
ナマエはアーロンに支えられながら、空へと手をかざし魔法を放つ。すると数人の足音が聞こえてきた。逆光で顔は見えないが、誰かが穴を覗いた。
「ナマエっ!?いるッスかー!?」
「ティーダ!ロープを持ってこい!」
「は?え?!なんでアーロンまで落ちてんだよ!!もー!!ホント、ナマエのコトになると後先考えねえんだから!!」
声の主はティーダで、その言葉にナマエはアーロンの顔を見るが逸らされた。
「どういうこと?」
「……別になんでもいいだろう。」
ティーダが他の仲間に声を掛けて、ロープを準備している間、ナマエはアーロンに聞くが“なんでもない”で躱される。
「そっか…。じゃあ、先にお礼、するね。」
「は?何を──」
ナマエはそういうとアーロンの言葉を遮り、ぐっと、襟元を掴み自分に近づけさせてアーロンの頬にキスをした。
「なっ…!」
「アーロン、助けに来てくれてありがとう。心配掛けてごめんなさい。」
「アーロン!今からロープ落とすッスよー!」
アーロンが何かを言おうとするが、ティーダの言葉と同時にロープが上からするすると降りてくる。
アーロンは言葉を飲み込み、ロープを自分とナマエの身体に結び付ける。
「……いいぞ、上げろ!」
「りょーかい…ッス!」
「ナマエ、しっかり掴まっていろ。」
「うん。」
ナマエはアーロンにしがみ付き、アーロンもナマエを強く抱き留める。
「あとぉ……もおちょいぃ…!!」
上ではティーダ、ワッカ、キマリがロープを引っ張り上げてくれていた。
「ナマエ、大丈夫か?!」
「うん、ワッカありがとう。ティーダもキマリもありがとう、助かったよ。」
無事に地上に戻ったアーロンとナマエ。
アーロンは身体に結んでいたロープを解き始めていた。
「ナマエ。」
「ん、なあに?キマリ。」
「アーロンがとても心配していた。あまりアーロンの傍から離れてはいけない。」
キマリの言葉に全員が固まった。
ティーダとワッカは“何か”を察して、先に戻っていると言い始め、キマリも言いたい事を言えて満足なのか頷いて宿に戻って行く。
ぽつんと取り残されたふたり。
「えっと…。」
「何も言うな。」
「……はい。」
チラリとナマエはアーロンを見たが顔を背けられていてその表情は分からないが、耳が赤くなっていたのは知らないフリをした。
「行くぞ。」
「きゃ…!」
足を痛めたナマエを抱き上げ宿へと向かう。
雨はいつの間にか止んで、雲の切れ目から夕陽が見えていた。
「宿に戻ったら先に身体を温めろ。それから、ユウナに診てもらうぞ。」
「はーい。」
「…次からは単体で動くな。」
「…アーロンに声かけて良いの?」
そう言えばアーロンは短く“ああ”と返事を返した。
その声はいつも通り低かったが、温かく優しさに溢れていた。
fin.
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後書き(08.02.12)
こちらのお話はコメントをくださった方の「アーロンさんに助け出されたい…!」との言葉を参考にさせていただいて書いてみました。アーロンが来てくれて安堵してからの展開がギャグ寄りになってしまいましたが…いかがでしょうか?(´・ω・`)
ご都合により、ナマエは血の力を使えない状態にしました←
長編とは違うifルートで読んで頂ければ幸いです。
(感想などお待ちしております…。)
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