短編(FFX)
ナマエ
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記憶が無くなった。
なにか、大切なものまでも消え失せて…。
思い出そうとしても、ほつれた糸すら掴めない…。
19の誕生日の日に海を見にきた。
少しずつ太陽が海から登り、海面を煌めかせる。
この一瞬が儚くて一番好き。
「ナマエ、少し肌寒いだろう。羽織っていろ。」
「ありがとうございます、アーロンさん。」
父の友人のアーロンさんがついて来てくれた。
確かに少し肌寒かったから、素直にアーロンさんのジャケットをお借りした。
サンダルを脱いで、波打ち際を歩いた。
冷たい海水が寄せては引いてを繰り返す。
でも、心地よかった。
「──────……。」
自然と歌を口遊んだ。海鳥が空を割いて飛んで行く…。
「……?」
ふわりと綺麗な虹色のホタルが飛んできた。
くるくると、私の周りを飛び回る…。
「…綺麗…。」
「ナマエ!!」
ホタルを眺めていると、何故か焦った声色のアーロンさんがこちらに向かって走っていた。
首を傾げた時、アーロンさんの足が止まった。
ふと、近くに誰かがいる気配がした。
その方を向くと、朝日を受けた金色の髪がキラキラしている私と同い年くらいの男の子が私を見つめていた。
日焼けをしていて、きっと笑ったら太陽みたいな笑顔なんだろうなって直感的に思った。
その子が小走りに私に近付いて、私を抱きしめた。
強く、でも、優しく…。
突然の事にびっくりしたけど、不思議と嫌な気分はしなくて彼の背中に腕を回して私も抱きしめた。
何故だか彼が泣いている様な気がして、頭と背中をそっと撫でた。
「……どうしたの?」
「…なんでも、ないッス…。」
「そう…?」
ついさっきまで話していた友人のように話をした。
彼の事、知らない筈なのに知ってる…。
「……これ、祈り子たちから、ナマエにって。」
「いのり、ご?」
聴き慣れない言葉に首を傾げるとさっきの綺麗なホタルが集まった様な手のひら大のガラス玉を手渡された。
「あと、これはオレから…。」
「え───」
前髪を掻き上げられ、額にキスをされた。
その時、渡されたガラス玉が弾けて七色の光が私たちを包んで、私の中へと吸い込まれていった……。
「ナマエ、ごめんな。……でも、ありがとう。」
やっぱり笑った顔は太陽の様で、涙が零れた。
「──────ティーダ…っ。」
「ナマエ、アーロンと仲良くしろよ〜?じゃあな!」
「いや!ねえ待って!」
海に向かって走る彼を追ったけど、後ろから抱き止められた。
「ナマエ…っ!」
「アーロン…!ティーダが、ティーダが…っ!」
「っ、お前、記憶が…?」
あっという間に沖に浮かび私たちの方を向く彼の表情は逆光で見えない。
「アーロン!!ナマエの事、泣かせたら掻っ攫いに行くからな!ってオヤジが言ってたッスよ!」
「ふん…っ。寝言は寝てから言えと伝えておけ!」
大きく手を振る彼はきっと笑顔だったはず……。
とぷん…と波に攫われて、その姿は消えた…。
「あ、…ティーダ…!ティーダ…っ!」
「ナマエ…。」
「アーロン…ティーダが、帰って来たの…っ。」
「ああ…。」
「私の記憶、持って来てくれた…っ。私の事、覚えていてくれた…っ…!」
「ああ…っ…。」
涙が止まる事なく零れて海へ還っていく…。
「私、またスピラに行きたい…っ、みんなに会いたい…。私の大切で、大好きな人たちがいる世界へ…!」
「ああ、共に行こう。あいつらもお前の事を待っていてくれるさ。」
「……うんっ!!」
泣いて、笑って、きつく抱き合った。
いつかまた、あの強くて優しい人たちに逢いに行こうと…。
fin
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後書き(07.09.28)
ティーダ夢(+アーロン)でした。
こんな感じの記憶返還も良いなと思って書いてみました。
時系列にするならX-2でティーダ復活のほんの少しくらい前かなって感じです。
