短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
時刻は20:15。大学近くのコンビニからちょうど出たとき。
ピンポン、とLINEの通知音が鳴った。
先輩からのメッセージだ。アプリを開き、内容を確認する。
『今日の卒論作業終わった。どこいる?』
私は20時まで部活動があって、先輩は卒論の執筆作業。お互いの予定が終わったら一緒に帰ろうと、事前に約束していたのだ。
『お疲れ様です。部活終わって、大学近くのコンビニにいます!今行きますね』
『了解。学生ラウンジで待ってる』
返信を見て、私は少し足早に大学へと戻った。
コンビニのレジ袋を手に提げて、大学の学部棟に入る。
建物内は日中の活気が嘘のように消え去っていて、異世界に迷い込んでしまったかと錯覚してしまいそうになる。
目指すは学生ラウンジ。夜の学部棟の不気味さに怯む気持ちを抑え、早歩きで突き進む。
少し歩くと目的地が見えてきて、私はホッと息をつく。ラウンジは廊下にガラス張りで面しているから、薄暗い道の先で温かい光が漏れている。
ガラスのドア越しに覗くと、中庭に面する窓際の席に座っている▽▽さんの背中が見えた。心なしか、卒論に関する疲れでクタクタになっているように見える。
少し重いスライド式ドアを開け中に入り、彼に近づく。
「お疲れ様ですー……」
私がそっと声をかけると、▽▽さんは振り返って少しだけ目元を緩めた。
「ああ、おつかれさま。早いなあ、もう少しかかると思ってた」
「走ってきたので……あ。これ、差し入れです」
先輩の隣の席に腰を下ろし、コンビニで差し入れ用に買った温かい飲み物やお菓子をテーブルの上に広げていく。
すべてレジ袋から出し終わったと思った後、底にまだ何か入っていることに気が付いた。
「あ、底になんかある……?」
レジ袋の底には、クリスマスケーキの予約申込書を兼ねたチラシが入っていた。
「もうクリスマスケーキ予約?早くね?」
「ハロウィンだってまだ3週間ぐらい先なのにもう……?」
「こんな時期からやってるもんなんだねえ」
▽▽さんはそう言いながら、チラシをじっと眺めている。10秒かけて裏面もじっくり見た後、私の方に少し体を寄せてチラシを見せてきた。
「どれが美味しそうに見える?」
「え」
「ほら、選んで」
突然の問いに一瞬思考が停止したが、私はとりあえず好みのチョコレートケーキを指さす。
「じゃ、じゃあ……これ、ですかね」
「よし、じゃあ予約しとくわ」
「は?」
テーブルの上にあったペンをサッと手に取り、▽▽さんはチラシ裏面の“お客様情報”の欄に必要事項を記入していく。名前や電話番号まで書き終わり、その下の“お受け取り希望日時”の欄を書くところでピタリと手が止まる。
呆然とする私の顔を覗き込み、何気ない様子で彼は尋ねた。
「受け取り、イブの夜でいい?それとも当日?」
「じゃあイブの夜で……って、えっ?あ、あの、本当に予約するんですか?!」
「嘘でこんなの書かないでしょ。あ、俺以外の誰かと食べる予定あった?」
「ありません!まったく!と、とととととりあえず今のところ予定空いてますけど!」
私の返答を聞くと、彼はいたずらっぽくふふっと笑って、まだ空欄になっている必要事項を記入していく。
「じゃあ決定ね。当日まで楽しみに待ってよっか」
ペンを置き、満足そうに頷く▽▽さん。鮮やかな手際で申込書の記入を終わらせてしまい、私はパチパチと瞬きを繰り返す。
「あの……予約したのはいいとして、これ、どこで食べるんですか?クリスマス付近ってたいてい冬休み期間中のはずだから、おそらく大学内閉まってますよね?」
「ああ」
▽▽さんはテーブルの上の荷物をまとめながら、なんてことのないトーンで言った。
「俺の部屋で食えばよくない?」
「……え?へ、部屋ぁ?!▽▽さんの?!」
ああもう、今年のクリスマスはもう滅茶苦茶に大変なことになりそうだ。
3/3ページ