3.小さな気付き
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ケイナは謎の美少女との出会いについて語りだす。序盤の出会いから一緒に帰るようになるまでの流れを軽く聞いて、呆気にとられた。
「漫画かよ」
「ふふっ、出会ったのは本当に偶然だったんだけどね」
学校の屋上で出会ってなんやかんやあって打ち解けてからの今。いや情報量。
「すごいね、そんなんで友達になれたんだ」
あたしの言葉に、ケイナは口に運ぼうとしていたカップの手を止めた。ゆっくり下ろし、これまたゆっくり首を傾ける。
「そう、思っていいのかしら……」
「いやあたしが聞いてんだけど……」
「私男の子の友達なんてほとんどいないから、もしそうだったら嬉しいわ」
今度こそカップに口をつけ、彼女は紅茶を一口飲んだ。彼女から出た何気ない言葉の違和感に、次はあたしの箸が止まる。
「今なんて?」
「もしそうだったら嬉しい」
「その前」
「男の子の友達なんてほとんどいないから」
「男ぉ!?」
自分でもびっくりするような声量が飛び出してしまった。慌てて身を縮こめる。他の席で食べている合宿仲間からの視線が痛い。
まて、まてまてまて。仲良くなったのって男だったの? あの美少女が? まぁでも中性的な男子なんて今時珍しくないよね。違う問題はそこじゃない。机に手をついて身を乗り出し、ケイナに迫った。
「そいつ大丈夫なん?」
「何が?」
「変なやつとかじゃないの」
うちは女子高。男子との縁は薄いも薄い。なによりこの年で舞踏に人生の軸を置きつつある自分達にとっては特に。他校の女子が珍しくて手を出そうとしているなんてことがないといいが。
ケイナは皿の上のカットオレンジをフォークで刺し、皮の部分を手で取った。
「千切くんはとってもいい人よ」
以前朝食にオレンジジュースをがぶ飲みしていたら母親から、朝にビタミンCとるとシミができるわよ、とネットかなにかで得たであろう嘘か本当かもわからない謎の美容情報でたしなめられたのを思い出す。
衝動的に口にだそうとしたけれど、この子の肌見たらそれをいう気も失せて喉奥に引っ込めた。
そのちぎりくんとやらがどんな人物かはわからないけれど、ナイフとフォークを使ってオレンジを食べやすい大きさに切っていく彼女は自分に害のある人間を自身のテリトリーに入れる子ではないからそこは心配しないでおく。もしなにかあれば話してくるだろうし、その時には手を差し伸べてやればいいだけだ。
会場に設置されている大型テレビの画面には朝のローカルニュースが流れている。まったく知らないご当地ニュースキャスターらしき女性が、これまたご当地の情報を明るくあたしたちに語っていた。嫌な事件事故じゃなくてこういうニュースばっかだったら世の中平和だよなーなんて聞きながら考えた。
部屋にテレビがついていても基本自分達はスマホで動画とか配信みるから基本つけない。
話題が切り替わった時、ケイナがテレビ画面へ釘付けになった。それに引き付けられるようにあたしもそちらを向く。
「流星群?」
春の星空情報なんて珍しいものが流れていた。
「へ~流れ星なんて見れんだこっち」
東京でも星は見えるけれど、それもがんばれば数えられるくらいのものだ。ビル群から覗く空じゃそんな幻想的なものを見ることは叶わない。
ケイナへ視線を戻すと、彼女はとらえたようにテレビ画面を見つめたままだった。