3.小さな気付き
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ここ最近、友人の様子がどうもおかしい。
「あたしに隠し事してない?」
直球で追及すると目の前の友人はフォークの手を止めこちらを見てきた。
時刻は早朝も早朝。朝日は出ているけれどこの時間帯に起きている人ってよほど学校や会社が遠いか、世のじいちゃんばあちゃんと同じ体内リズムで生きてる人のどちらかだと思う。老人は早起きという認識は偏見に値するかもわからないが、少なくともうちのばあちゃんはそうだった。
今あたしたちは宿泊しているホテルの朝食ブッフェ会場にて早めの朝ごはんを食べている。合宿中は校内の生徒の登校前には練習がはじまるため、あたしたちの行動開始時間もおのずと早くなるのは至極当然なのだ。練習ですでにきついのにそれに加えて異常な早起き。修行かこれは。
と、話は冒頭に戻るがここ最近、友人の様子がどうもおかしい。
「突然どうしたの?」
蜂蜜をたらしたヨーグルトをスプーンでくるくる混ぜていたケイナが首を傾げた。
「とぼけても無駄だよ。ネタは上がってんだから」
「何かの炙り出し? それとも謎かけ?」
「あんたの口から割らせたい」
「あらあら、あなたったら」
くすくすと声を転がして笑い、ケイナは蜜の黄金がとけた発酵物を口に運ぶ。彼女の前に置かれた皿の上には朝の色をしたオレンジに、シャインマスカットとブドウのミックス。朝一で焼かれたであろう艶のあるクロワッサン。そしてこれまた香ばしいブラウンの強いブレックファーストティーだ。絵に描いたような洋食のラインナップ。朝は俄然和食派な自分からしたら昼になる前に空腹で死ぬ未来しか見えない。米だろ、朝は。と話が脱線しそうになって軌道を修正。
「あたし見ちゃったんだよね。ケイナがホテルの下で誰かと一緒にいるの」
数日前のことだった。夜、仲間内の一人が推しのアイドルの生配信があるとのことで部屋で鑑賞会をしないかとの誘いを受けた。はじめは断ろうとした。なぜなら自分は芸能人に疎いからである。顔の違いがよくわからんというと、あんた本当にJK?と眉を潜められた。失礼な、あんたらと同じバレエにすべてをかける華の女子高生だこちとら。
そして半ば強制的に部屋に押し込まれた。数人がキーホルダー型の小さなサイリウムを両手にセットして持ってきたであろうタブレットの前で皆待機していた。配信がはじまると部屋の中に黄色い声を弾けた。
いや合宿にサイリウム持ってくるなよ、見つかったら没収されんぞ。とはいえず少し離れた窓際でタブレットというよりはしゃぐ仲間達をまるごと観察していた。ふと窓の下に目をやるとよく知る人物が小さくではあるが見えた。
一番仲のいい友人でレッスンが終わっても一人残って練習を毎日のように続けている。ただでさえレッスン漬けの毎日なのによくやるよ。あきらかなオーバーワークだがそれを指摘したところでやめないのは目に見えていたので止めることはしない。学校でもこの合宿でも。
そんな彼女は一人ではなかった。誰かと話している。無駄にいい視力を駆使して、じっと目を凝らした。暗闇でも際立っている赤い髪、その下に見たこともないような綺麗な顔がのっかっていた。なんだあの美少女。友達? ケイナの? いや鹿児島に知り合いいないっていってたしな。ケイナが美少女に軽く手をふると彼女は去っていき、友達はホテルの中へと入っていく。次の日になにか言ってくるかと思ったけれど、彼女は何もいう素振りを見せなかった。よし、追及してみよう。内で燻る好奇心に任せ、目の前の彼女を問いただして今に至る。
ああ、とケイナが軽く思い出したかのような仕草。
「あの学校で仲良くなった子。最近一緒に帰ってるのよ」
「あそこで? どんなきっかけ?」
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